内田紅甘が纏うファッション、綴る言葉。「ネグリジェ姫」〈後編〉
guama
model: guama uchida
photography: chikashi suzuki
styling: sumire hayakawa
hair: tsubasa
makeup: kie kiyohara
edit: daisuke yokota & yuki namba
text: guama uchida
俳優やエッセイストとして自身を表現する内田紅甘。その佇まいや眼差し、そして選ぶ言葉には、ひと言では言い表すことのできない魅力が滲む。普段のやわらかな物腰、纏っているやさしい空気は、カメラの前で一変。凛とした表情に、思わず釘づけになる。
少女のように透き通った瞳に、世界はどのように映っているのか。彼女を取り巻く「内」と「外」の世界を舞台にした2部構成で、写真家の鈴木親が撮り下ろしたファッションストーリー。内田紅甘自身が綴った、ショートエッセイとともにお届けする。
内田紅甘が纏うファッション、綴る言葉。「ネグリジェ姫」〈後編〉
思えば私があこがれたのは、ネグリジェではなく、眠るときに着飾るという発想そのものだった気がする。だれに見せるわけでもないのに、しかも眠ってしまうから、私自身すらその姿を楽しむことはできないのに、それでもきれいにして眠る。無意味ともいえるが、しかし意味がないからこそ、その行為自体にある神秘的な、理屈ではないうつくしさがふくまれているように思った。
見知らぬ家の古めかしいソファで、着心地がよくうつくしい服を纏って寝転びながら、そんなことを思い出していた。
撮影も終盤になり、カメラの向こうではスタッフのみんながお菓子を食べて談笑していて、私はそちらとこちらを隔てる重くはてしない静寂の隙間から、はるか遠いその光景を眺めていた。うつくしい服を纏って眠る。それは私のためだけの、ひそかな遊びだった。だれも見ていない、なにも言われない、眠りにつくあのときだけは、私は清くうるわしいお姫さまだった。