kiko mizuhara

空虚を満たす、水原希子のインスピレーション〈後編〉

俳優、モデル業に止まらず、ファッションブランドや自然派ブランドなども数多く手掛け、さまざまな世界で自身の色を表現している水原希子。SAINT LAURENT(サンローラン)の艶やかなサテンやシースルのルックは、内面から湧き出る凛とした美しさを強調させている。

甲斐さやか監督が20年以上もの年月をかけて脚本を書き下ろした映画『徒花-ADABANA-』で、水原は臨床心理士のまほろ役を演じた。ウイルスの蔓延で人口が激減し、延命措置として上層階級の人間だけに自分と同じ見た目の“それ”の保有が許された世界で、死が近づいている主人公、新次とまほろが“それ”と向き合い、命について考える物語。何が人間で何がそうでないのか、作品と向き合う中で感じたことについて話を聞いた。

kiko mizuhara

model: kiko mizuhara
photography: shota kono
styling: masako ogura
hair & makeup: naho ikeda
interview & text: mami chino

−タイトル『徒花』は、劇中で本を読む新次すら知らなかった日本の言葉です。この言葉の意味を知った時、どういう印象を受けましたか?

命について考えさせられました。AIが発達している今の世の中と通ずる部分があるというか。最近、AIが生成した画像をみて「これを美しい、素晴らしいって思ってもいいのか」と、どう受け止めるべきかわからなくなりました。この違和感と素直に受け止められない気持ちが、『徒花』の作品全体で描かれていた感情と近いものがあるのではないかと考えていましたね。

−本作を通して伝えられる「満たされた空虚」というメッセージにちなんで、改めて“人間らしい”とはなんでしょう?

それは逆に、クローンが人間らしいのかという問いでもありますよね。いま生きている人たちは多くのものを背負わされていて、葛藤を抱えていて、心が病んでしまっている。一方でそういう情報を何も聞かされずポジティブな情報だけ与えられて生きている純粋無垢なクローンたちは生き生きとしていて美しい。人間の手によって生み出されているものだとしても、クローンにも感情があるんですよね。私は人間だから、何が人間らしいかって考えることは難しいけど、いままでにいろんな国を旅してきた中で、言葉が通じない人たちともたくさん出会ったことを思い出すと…。そういう時に唯一コミュニケーションをとれたのが、お互いが笑うことだったんです。笑顔を交わして通じ合える瞬間が尊かった。言葉を介さず、表情や自分のエネルギーで想いを伝える経験が私の中で大きな意味合いを持つようになったんです。得体の知れない感情や想い、何かに突き動かされるままに、人間は生きている。私も常に直感に生かされているようなものです。直感で東京に出てきたし、仕事も生き方もすべて直感で決めてきました。今になって、それが本質的だったんだって気づきました。

ドレス ¥770,000、ヘッドドレス ¥157,300 (参考価格)、イヤリング¥174,900、ベルト ¥74,800 (参考価格)、タイツ (参考商品)、ソックス (参考商品)、シューズ ¥165,000/すべて Saint Laurent by Anthony Vaccarello (サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ)