shiori doi

ポール・スミスと描く、私らしい人生の仕立て方 vol.2 土居志央梨

“Classic with a twist (ひねりのあるクラシック)”。英国の伝統的なテーラリングを継承しながら、溢れるユーモアと冒険心とともに唯一無二の個性を確立してきた Paul Smith (ポール・スミス)。2026年春夏の最新コレクションでは Paul Smith の「旅の記憶」をテーマに、端正なシルエットへ鮮やかな遊び心を落とし込んだルックが並ぶ。

日々移り変わる流行や、「こうあるべき」という固定概念を、ユーモアのある“ひねり”で軽やかに手放す。 TFP が送る連載企画では、そんな Paul Smith の精神に共鳴し、自らの意思でそれぞれのライフステージを歩む4人の女性たちが、「私らしい人生の仕立て方」を紐解いていく。

2人目は、俳優の土居志央梨。幼少時からクラシック・バレエ一筋の人生を歩み、現在は役者として、NHK 連続テレビ小説『虎に翼』や、 Netflix 映画 『10 DANCE』をはじめとする話題作で唯一無二の存在感を放っている。「完璧」という型をストイックに追求してきた彼女が今、役を纏うことと自分自身を生きることにどう向き合っているのか。完璧を求めすぎないノンシャランな素顔と、軽やかに新しい環境へ踏み出すための勇気について。

Paul Smith
with shiori doi

model: Shiori Doi
photography: Yusuke Abe
videographer: Michi Nakano
music: Modern Jazz War
styling: Daichi Hatsuzawa
hair & make up: Kei Kokufuda
interview & text: Yuki Namba
edit: Yuki Namba, Miu Nakamura

sponsored

背筋がすっと伸びる、Paul Smith の美しいテーラードに袖を通した土居。インナーに忍ばせたのは、大人の遊び心を映し出す金魚柄のシャツ。コレクションテーマである、旅の記憶を呼び起こす、高揚感のあるスタイリングに。
ジャケット ¥96,800、シャツ ¥42,900、パンツ ¥50,600、シューズ *参考商品、ベルト ¥19,800/すべて Paul Smith (ポール・スミス)

− ジャケットスタイルがとてもお似合いです。今日このルックを選んだ理由を教えてください。

すごく直感なんですけど、普段大きい柄のものってなんとなく自分が負けちゃう気がしてあんまり身につけなくて。でも今日着たシャツはすごくナチュラルに馴染んでくれて、でも自分を華やかにしてくれる感じが素敵だなと思って。お花にも見える金魚の柄にとっても惹かれて選びました。

− 洋服を選ぶ時に、人とは違った“ひねり”を加えた選択をされることはありますか?

もともとは古着が好きで、自分の個性を出せるものを基準に服を選ぶことが多いです。“ひねり”、あんまり意識したことはなかったですけど、自然と人と被らないようにはしている気がします。さっきちょうどメイクさんと話していたんですけど、成人式の時、私の世代は着物にファーが流行ってて、みんな首にファーを巻いていたんです。でも私はすっごい渋く着物を着たくて。当時の私は黒に赤い柄の着物に金の帯を選んだんですね。でもそれは今もすごく良い選択だったなと思います。

− 普段の生活や人生の選択においても、人と被らない選択をしていることはありますか?

やっぱり困難な道、難しそうな方が私はワクワクするので、そういうものを選択してるかもしれないですね。それを乗り越えていく過程で自分がどんどん進化できる方が楽しいので。“ひねり”っていうのとまたちょっと違うかもしれないけど、あんまり結果が想像つくものとか、やっているときの感じが想像つくものは逆にやらないかもしれない。「どうなっちゃうんだろう?」って想像もできないようなものを自然と選択しているかもしれないです。

− 土居さんの活動を拝見していると、真の強さを感じさせつつも、どこが執着しすぎないノンシャランさや、独自のテンポを感じます。「こうあるべき」と決められた女優像を、いい意味で覆そうとする部分もあるのでしょうか?

覆すというよりも、多分、すごく飽き性なんですよね。自分に飽きちゃうというか。お芝居する時も、前と同じような役柄だったり、雰囲気が近そうな役柄とかでも、根本からガラッと変えたい感覚があって。どんどん新しい自分を自分で見つけたい気持ちがあるかもしれないですね。演じていて、これあの時の役にちょっと近いなと思うと、自分でそれを塗り替えたくなる。

− 決められた役を演じるけれど、隙間に土居さんだけの新鮮な体温を忍ばせるような感覚?

そうですね。でも役柄によっていろいろ演じ分けていたとしても、結局は自分の心を使ってお芝居するので、絶対に自分ではあるんですよね。だから自分のその時の体温とかは勝手に出るものな気がします。全く別次元から何かを憑依させて…とかも、できる人もいるのかもしれないけど、私は全然そういうタイプではないので。結局は相手から何かを言われてそれを受けてどう感じるかっていうのは、私の心を使ってやるもの。仕草だったり声だったり変えれるところはもちろんあるけれど、最終的にはどんな役も自分の一部というか、自分自身そのものだなと思っています。

−土居さんは3歳からクラシック・バレエ一筋で生きてきて、今は俳優の道に進まれています。新しい世界に飛び込む時に、自分の背中を押すものはなんだったのでしょうか?

すごい好きな映画のセリフがあって、「人生は祭りだ、共に生きよう」っていう。Federico Fellini (フェデリコ・フェリーニ) というイタリアの映画監督の『8 1/2 (ハッカ ニブンノイチ)』っていう映画に出てくるセリフなんですけど。その人の映画って愛嬌があるというか、なんか愛せるんですよね。人のどうしようもないところとか、ダメなおじさんとかがいっぱい出てくるんですけど (笑)。それがすごく愛せるんですよ。最後の、「人生は祭りだ、共に生きよう」ってセリフで、登場人物がみんな輪になって踊るシーンが大好きすぎて。「人生は祭り」っていうのが私のなかで一個のテーマになりました。お祭りなんだって思ったらすごい楽になるんですよね。お祭りだし、もしやってみて失敗しても、それはそれで笑えるか、って。お祭りっていろんな出店があって、いろんな催しがあったほうが楽しいじゃないですか。そういう感じで自分の人生も考えられたら意外とやってみて無駄になることって無いなと。無駄だと思うことも彩りの一部だなと考えられるようになって、それは常に自分の中にある言葉ですね。

− Paul Smithの掲げる精神に “Classic With a Twist (ひねりのあるクラシック)”という言葉があります。困難を乗り越えるときに、好奇心やユーモアって大きな武器になると思うのですが、土居さんにとって自分を奮い立たせる自分だけのユーモアはなんでしょうか?

バレエをやっていた時の私は、ずっと完璧主義で、一個一個完璧にこなしてやることが良いことだと思っていたんですよ。すごく自分に厳しかったんですよね。けどそれをやっていって突き詰めて、結局私は疲れてしまって辞めちゃったので。それから考え方や生き方が結構変わった気がしていて。やっぱり楽しまないことには意味がないっていうのをすごく思うようになりました。あんまり眉間にしわを寄せて、絶対にこれを成功させる!みたいに意気込んだり、時にはそういう気持ちも必要なのかもしれないけど、それよりも笑って「まぁやってみるか」、「一丁やってみるか」みたいな気持ちですかね。悪い言い方すると、ちょっと人生を舐めてみるというか。そういう感じで生きる方が私には合っているかもなって最近は思っています。

− 最後に、土居さんにとって装うことは自分を守る鎧ですか、それとも解放するものですか?

なんだろう。鎧というか、装うことでより自分らしく強くいられたり、ちゃんと地面に立っていられたり、そういう単純に元気が出るものではありますよね。雨でどんよりした日に明るい色の服を着てちょっと元気を出そうとか。そういう意味で鎧みたいな感覚が近いのかな。でもがっちりとした鎧ってよりは、着ぐるみみたいな感じ。ポワンポワンとしたもっと軽やかな感覚が近いですかね。