yuki katayama

素直な気持ちに還る、片山友希の静かな視線 <前編>

yuki katayama

model: yuki katayama
photography: shota kono 
styling: rio hashimoto
hair & make up: yoko fuseya
text & edit: nonoka nagase & kaede sakuma

俳優として着実にキャリアを重ね、いま静かな存在感を放つ片山友希。煌びやかなスパンコールを全面にあしらった Stella McCartney (ステラ マッカートニー) のドレスに身を包んだ凛とした佇まいは、柔らかさのなかに確かな意志を感じさせる。

そうして磨き続けてきた感性は、単独主演を務めた映画『FUJIKO (フジコ)』で新たなかたちを見せる。ヨーロッパ最大級のアジア映画の祭典、「第28回ウディネ・ファーイースト映画祭 」にて、最高賞にあたる「Golden Mulberry Award (ゴールデン・マルベリー賞)」 と、「Black Dragon Audience Award (ブラック・ドラゴン・特別観客賞)」を受賞。MEGUMI (メグミ) が企画・プロデュースに携わり、監督の原体験をもとに描かれた本作で彼女が演じるのは、周囲の反対を押し切りシングルマザーとして生きる道を選んだ主人公・菅波富士子だ。

1977年の静岡を舞台に、時代に残る価値観と向き合いながら、娘・麻理とともに歩んでいく姿を通して浮かび上がるのは、強さという言葉だけでは捉えきれない、ひとりの女性の選択。そのまなざしに宿る決意は、観る者にたしかな余韻を残していく。本作への向き合い方について、いまの思いを訊いた (前編)。

yuki katayama

素直な気持ちに還る、片山友希の静かな視線 <前編>

―本作はイタリアで開催された「第28回ウディネ・ファーイースト映画祭」でお披露目されたそうですね。片山さんも登壇されたようですが、現地の反応はいかがでしたか?

イタリアの方って、映画の上映中でも面白くなければ帰ってしまうと聞いていたので、少し緊張していたんですが、実際の反響は想像以上でした! 普段はオペラを開催しているような会場で、4階席まで1200人くらいのお客さんが集まってくださって。上映が終わっても誰も帰らずに、ものすごい拍手をいただきました。目の前のお客さんなんて、もう手が真っ赤になるくらい……。予想を遥かに超える熱い反応だったので、本当に嬉しかったです。

―出演のオファーは、プロデューサーの MEGUMI さんから直接あったのでしょうか?

はい、MEGUMI さんとは2019年にドラマでご一緒させていただいたことがありました。「こういう映画を撮ろうと思っているんだけど、面接に来てみませんか?」と連絡をいただいたのがきっかけです。台本を読んで純粋に面白かったし、何より大好きな先輩がプロデューサーを務める作品だったので、強い気持ちを持って面接へ向かいました。

―現代では考えられないような、子どもを奪われてしまうといったショッキングな内容も含まれていましたが、台本を読んだとき、率直にどう思われましたか?

出来事自体はすごく重いのですが、不思議と「まったく悲観していないな」というのが第一印象でした。私自身、20歳で上京してきて、当時はお金がない時期がしばらく続きました。でも、その過去に対して全く悲観していなくて。「大変やったな」くらいの気持ちで、そこまでネガティブに捉えていないんです。その感覚が、富士子というキャラクターにすごくマッチしているなと感じて、面接時にそのことを監督へ伝えたら、「まさにそういう人が欲しかったんです」と言っていただけて。その瞬間に、自分の感覚と富士子の感覚はどこか似ているんだなと確信しました。

―最近は国内外で女性をエンパワーメントする映画がたくさんありますが、「FUJIKO」は単に強い女性というだけでなく、不器用さや危うさ、人間らしさがとても印象的でした。片山さんご自身は、彼女のどこに最も人間らしさを感じましたか?

富士子を演じていて強く思ったのは、「大人だって、こんなに泣くんだな」ということです。子どもの頃、大人というものは強くて、自分を守ってくれる存在だと思っていましたが、母親であっても泣くし、怒るし、苦しむんだということを痛感しました。自分がこれから30代、40代と歳を重ねていっても、きっとこの喜怒哀楽の感情はずっと続いていくんだろうなと、彼女を通して改めて気づかされました。

―富士子は、「怒り」や「諦め」、「希望」など、さまざまな感情が同時に存在している人物に見えました。彼女を演じるうえで、扱うのが難しかった部分はありましたか?

特に難しいといったことはなかったんです。というのも、面接で出演が決まってからクランクインするまで、ずっと改訂版の台本をいただいていたので。台本が変わっていくなかで、たとえば前まであった「B」というシーンがなくなって、「A」から「C」にスキップすることがあっても、前にそのプロセスを読んでいたから、富士子の感情のつながりがすべて自分のなかにあったんです。だから台本が完成して撮影に入る頃には、彼女がなぜこの発言をしたのか、なぜこの行動をとったのかが一挙手一投足まですべて理解できていました。削られたシーンが半分以上あるんじゃないかっていうくらい、最初はすごく長い物語だったんですよ(笑)。保育園を紹介してくれる友達との出会いのシーンなんかもあったりして。

―それはぜひスピンオフで観てみたいですね(笑)。ストーリーは監督の原体験がベースになっているとのことですが、非常にリアルな家族関係が描かれています。富士子を演じていくなかで、「共感」と「客観」のどちらに近い立場でいましたか?

彼女はシングルマザーで、結婚の経験もあるという点で見ると、やっぱり「自分とは違う人物だな」と客観的に見ていた部分が大きいです。特に子どもがいると、自分のことよりもまず「この子を一番に」ってなるじゃないですか。その感覚が自分にはまだ分からないので、どう表現すべきか模索した部分もあります。でも、根本的に音楽が好きだったり、「外の世界に行きたい」と願うハングリーな気持ちの面では、すごく共感していました。母親という目線では遠かったけれど、一人の人間としての衝動はとても近かったです。

ドレス ¥769,450、パンツ ¥359,700、シューズ ¥129,800/すべて Stella McCartney (ステラ マッカートニー)