yuki katayama

素直な気持ちに還る、片山友希の静かな視線 <後編>

yuki katayama

model: yuki katayama
photography: shota kono 
styling: rio hashimoto
hair & make up: yoko fuseya
edit: nonoka nagase & kaede sakuma

 

 

俳優として着実にキャリアを重ね、いま静かな存在感を放つ片山友希。アニマルパターンやフラワーモチーフなどを取り入れた FERRAGAMO (フェラガモ) のドレスを着こなす姿は、しなやかでありながら、どこか芯のある力強さを感じさせる。

そうして磨き続けてきた感性は、単独主演を務めた映画『FUJIKO (フジコ)』で新たなかたちを見せる。ヨーロッパ最大級のアジア映画の祭典、「第28回ウディネ・ファーイースト映画祭 」にて、最高賞にあたる「Golden Mulberry Award (ゴールデン・マルベリー賞)」 と、「Black Dragon Audience Award (ブラック・ドラゴン・特別観客賞)」を受賞。MEGUMI (メグミ) が企画・プロデュースに携わり、監督の原体験をもとに描かれた本作で彼女が演じるのは、周囲の反対を押し切りシングルマザーとして生きる道を選んだ主人公・菅波富士子だ。

1977年の静岡を舞台に、時代に残る価値観と向き合いながら、娘・麻理とともに歩んでいく姿を通して浮かび上がるのは、強さという言葉だけでは捉えきれない、ひとりの女性の選択。そのまなざしに宿る決意は、観る者にたしかな余韻を残していく。本作への向き合い方について、いまの思いを訊いた (後編)。

yuki katayama

素直な気持ちに還る、片山友希の静かな視線 <後編>

―作中では、当時の時代背景ゆえの理不尽な価値観や、男女の格差なども一部描かれていました。撮影を通して、「これは今の時代にも残っているな」と感じる部分はありましたか?

基本的な根っこの部分は、今も全然変わっていない気がします。義理の母親から子育てについてあれこれ言われたり、女性に対して求められる役割だったり。昔ほど露骨ではないにしても、今の社会にも確実に残っていますよね。

―たしかに、親戚みんなで食事をするシーンでは、昔の出来事というより「なんだか見覚えがあるな、馴染みがあるな」と感じる描写もありました。

そうなんですよ。私は今、ありがたいことに俳優として生活できているので、周りの人からは「すごいね」って言ってもらえることが多いです。親も「ちゃんと就職しなさい」と、一切言わない人だったので、そこは本当に恵まれていたなと思います。でも、もし今と違う生活していたとしたら、「もう29歳なんだから結婚したら?」と言われていたかもしれない。この仕事をしているから言われないだけで、社会の価値観の本質は変わっていないなとしみじみ思います。

―富士子はいろいろな波瀾万丈な人生のなかでも、決して自分として生きることを諦めない、とてもロックなキャラクターでした。片山さんにとって、「自分として生きる」とはどういうことだと思いますか?

お芝居でも、モデルのお仕事でも、そして今このような取材の場でも、常に意識しているのは「演じない」ということです。余計なことはせず、自分が自分でいればいい。だから今日もこうして関西弁のまま、自分のまんまでここにいます(笑)。悲しいときでも自分の気持ちをちゃんと知って、それをそのまんま受け入れるようにしています。「落ち込むなんて自分はダメだ」とも思わないし、逆に無理に「頑張るぞ!」と奮い立たせることもしない。傷ついたら「あ、私いま傷ついてるんだな。じゃあ今日はもう何もしない!」って、そのままの自分を許してあげる。それが一番大事なんじゃないかなと思っています。

シャツ (参考商品)、スカート ¥308,000、シューズ ¥165,000/すべて Ferragamo (フェラガモ)

―本作のキャッチコピーにある「わたしは、わたしをあきらめない」というたくましい言葉のように、日々迷いや葛藤のなかで生きている観客に向けて、この映画からどんなものを受け取ってほしいですか?

観てくださる方には「私たち大変だよね……」というネガティブな共感をさせたいわけではなくて。ありきたりかもしれないけれど、観終わった後に「あ、ちょっと明日から私も頑張ってみようかな」とか、「面倒くさくてやめちゃっていたことを、もう一回始めてみようかな」とか、そんな風に少しでもプラスの気持ちを受け取っていただけたら、すごく嬉しいです。

―一見は悲しいシーンも多く感じますが、富士子を見ているうちにポジティブな気持ちになったように思えます。

この映画を作るとき、スタッフ・キャスト全員の共通認識として「絶対に暗い映画にはしたくない」という想いがありました。撮影が始まる前に監督のお母様とお会いしたのですが、そのときも「映画、暗くしないでね」と言われて。「もちろんです、わかりました!」とお答えしましたし、私自身も暗くするつもりは一切ありませんでした。本作は、音楽に合わせて作ったシーンが本当にたくさんあるんです。ご飯を作るシーンや、賭博のシーンなんかも全部音合わせで作られていて。監督は20年以上イギリスにいらっしゃる、まさに UK ロックで育ってきたバックボーンを持つ方。あの素晴らしいテンポ感やビート感は、間違いなく監督のルーツから生まれたものです。

―撮影の段階から、監督の頭のなかにはすでにあの軽快な音楽のイメージがあったんですね。

そうなんです。撮影のときはまだ音楽は完成していなかったので、現場ではみんなで手拍子をしながら「このリズムで動いてください」って撮影していました(笑)。喫茶店でサンドイッチをパクッと食べるシーンも、監督のイメージ通りにテンポを合わせて動いたりして、面白かったです。日本生まれ・日本育ちの人からはなかなか出てこないような、監督ならではの海外仕込みの素晴らしいアイデアが詰まった作品です。ぜひ劇場で、そのテンポ感と音楽を楽しんでください!