今週のTFP的おすすめ映画
TFP的
おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
8/2025
『アイム・スティル・ヒア』

©2024 VIDEOFILMES / RT FEATURES / GLOBOPLAY / CONSPIRAÇÃO / MACT PRODUCTIONS / ARTE FRANCE CINÉMA
『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリーズ』で知られる名匠 Walter Salles (ウォルター・サレス) が、16年ぶりに祖国ブラジルにカメラを向けた最新作。本作の時代背景は、軍事独裁政権が支配していた1970年代。元国会議員が政権の工作員によって誘拐・拷問され、死に至った実話をもとにした政治ドラマを描く。ブラジル・リオデジャネイロに住むルーベンスは、妻エウニセと5人の子どもたちと幸せに暮らしていた。だが、スイス大使誘拐事件を機に社会情勢は一転。軍の抑圧は市民に向かい、ルーベンスは軍に連行され、2度と帰らぬ人となった。そして未亡人となったエウニセには、夫の消息を知らされなかった。本作では、自身も軍に拘束され、自由を奪われても声を上げ続けたエウニセの力強い人生にフォーカス。夫の死に対する国家の責任を認めさせるため何年も闘い、彼女の存在はやがて時代を揺るがす静かな力へと変わっていく。本作は、理不尽な時代に争い続けた1人の女性の姿を、永遠の記憶として刻み続ける。
公開日: 8月8日(金)
監督: Walter Salles
出演: Fernanda Torres (フェルナンダ・トーレス)、Selton Mello (セルトン・メロ)、Fernanda Montenegro (フェルナンダ・モンテネグロ)
HP: klockworx.com/imstillhere/
『キムズビデオ』

©Carnivalesque Films 2023
ニューヨークの映画ファンが通い詰めたという伝説的レンタルビデオショップ「キムズビデオ」。55,000本にものぼる膨大なコレクションの行方を追った、遊び心あふれるドキュメンタリーが誕生した。1987年、キム・ヨンマンが立ち上げた「キムズビデオ」には、貴重かつマニアックな映画の宝庫であり、かつてはカウンターカルチャーの中心地として存在していた。2008年、時代の変遷によって惜しまれつつ閉店した本店。経営者のキムは、条件付きで価値ある作品群をシチリア島のサレーミ市に移した。その数年後、本作の監督 David Redmon (デイヴィッド・レッドモン) が現地を訪れると、劣悪な環境で保管されるコレクションを発見。過去の名作たちを救うべく、David は荒唐無稽な奪還作戦を決行する。アメリカのサンダンス映画祭で本作が上映されると、「常軌を逸したドキュメンタリー」と映画ファンからの熱狂的な支持を獲得。共同監督を務めた Ashley Sabin (アシュレイ・セイビン) と David Redmon は、映画の聖地を舞台にした、まさに映画ファンによる映画を作り上げた。あふれんばかりの映画愛に包まれたドキュメンタリーを、ぜひスクリーンで見届けてほしい。
公開日: 8月8日(金)
監督: David Redmon、Ashley Sabin
出演: Kim Yong-man (キム・ヨンマン)
HP: kims-video.com
『美しい夏』

©︎2023 Kino Produzioni, 9.99 Films
イタリア文学界の巨匠 Cesare Pavese (チェーザレ・パヴェーゼ) の同名小説を、Laura Luchetti (ラウラ・ルケッティ) 監督が現代的な感性で映像化。舞台となるのは、イタリアの最初の首都トリノ。1938年、戦争の影が静かに迫るなか、少女が対照的な女性と出会い、少しずつ大人になっていく過程を映し出す。16歳の少女ジーニアは、トリノでお針子として働いている。都会に馴染めない日々を送っていると、ある日、画家のモデルをしている3歳年上の女性アメーリアに出会う。ジーニアは自由に生きる彼女に導かれ、芸術家たちが集う世界へ足を踏み入れる。思春期の真っ只中であるジーニアと、すでに自立し、逞しく生きるアメーリアは、互いを知り、徐々に惹かれあっていく。本作は、バロック様式の洗練された建造物を背景に届けられ、息を呑むように美しいイタリアの夏を体感できる。ジーニア役には、実力派として知られるイタリア人俳優 Yle Vianello (イーレ・ヴィアネッロ)、アメーリア役には、現在 Dior (ディオール) のアンバサダーも務め、世界が注目する新星 Deva Cassel (ディーヴァ・カッセル) を抜擢。2人の変わりゆく心と関係を繊細に綴った不朽の名作が、スクリーンに蘇る。
公開日: 8月1日(金)
監督: Laura Luchetti
出演: Yle Vianello、Deva Cassel、Nicolas Maupas (ニコラ・マウパ)
HP: mimosafilms.com/labellaestate
『未来への警鐘 原発を問う』

©︎2023 Brighter Future, LLC
『プラトーン』、『7月4日に生まれて』で2度アカデミー賞監督賞を受賞したアメリカの名匠 Oliver Stone (オリバー・ストーン) 監督の最新作。アメリカ人科学者 Joshua S. Goldstein (ジョシュア・S・ゴールドスタイン) の著書『明るい未来』をもとに、自らが取材に足を運び、原子力エネルギーを見直す社会派ドキュメンタリー を制作した。再生可能エネルギーへの投資は、世界中でおよそ3兆ドルに達したという。多大な努力と期待にも関わらず、地球は30年以内に炭素排出をほぼ100%カットしなければ、2050年までに生態系と経済に深刻な被害が及ぶと言われている。貧困国は急速に開発を進めるため、最も安く、早い発電手段である石炭を使うが、人間・環境に大きな悪影響をもたらす。また、原子力エネルギーによる被害も甚大だ。地球が気候変動とエネルギー貧困の課題に直面する今、果たして「原発」は未来への鍵となるのか。人類が選ぶべきエネルギーとは何か。スクリーンで、Oliver Stone の原子力に対するメッセージを受け取ってほしい。
公開日: 8月1日(金)
監督: Oliver Stone
HP: nuclearnow.negadesignworks.com
『入国審査』

©︎2022 ZABRISKIE FILMS SL BASQUE FILM SERVICES SL SYGNATIA SL UPON ENTRY AIE
わずか17日間の撮影、低予算で制作された監督デビュー作が、世界15カ国の映画祭で20受賞を達成。映画界に衝撃を走らせた話題作がついに日本上陸を果たす。本作で描かれるのは、空港の入国審査で繰り広げられるサスペンス。監督自身が故郷ベネズエラからスペインに移住した際に経験したエピソードをもとに、リアリティと緊張感あふれる会話劇を作り出した。バルセロナからニューヨークへと降り立ったのは、事実婚のパートナーであるディエゴとエレナ。エレナがグリーンカードの抽選に当選し、憧れの新天地での幸せな暮らしを夢見ていた。だが、入国審査で別室に案内されると、尋問が開始。あらゆる質問と、それに対するディエゴの答えに、エレナは疑念を抱き始める。2人はなぜ別室に案内されたのか。パートナーは、自分に嘘をついているのだろうか。現在アメリカは第2次トランプ政権を迎え、移民の強制送還、不当な逮捕が相次いで報道されている。予測不可能な恐怖が緊迫感を煽る77分間は、我々にとっても「いつか起こりうる話」かもしれない。深層心理を探るサスペンスとその結末を、ぜひ見届けてほしい。
公開日: 8月1日(金)
監督: Alejandro Rojas (アレハンドロ・ロハス)、Juan Sebastian Vasquez (フアン・セバスティアン・バスケス)
出演: Alberto Ammann (アルベルト・アンマン)、Bruna Cusi (Bruna Cusi)、Ben Temple (ベン・テンプル)
HP: movies.shochiku.co.jp/uponentry