今週のTFP的おすすめ映画
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おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
9/2025
『シナリオ 予告篇の構想』

2022年9⽉13⽇、世界的名匠 Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) は自身が手がけたシナリオに従って自発的な死を遂げた。その2年前から彼は『シナリオ〔Scénario〕』と題した遺作の制作に取り組んでおり、その企画説明の模様を収めたのが本作である。彼は最後の長編作品をつくるにあたって、アイデアやモンタージュの構想を何冊ものノート、手帳に記した。だが死の数日前、その企画は仕切り直され、ゴダールは2部構成の映画を仕上げるよう指示。コラージュ技法による18分間の短編『シナリオ〔Scénario〕』が制作された。本作では、長年アシスタントを務めたジャン゠ポール・バタジアとファブリス・アラーニョにゴダール本人が企画の説明を行う様子が丁寧に写し出されている。静止画像と動画像を混ぜ合わせ、読むことと見ることの中間にあるような映画体験を通じて、Jean-Luc Godard の世界に触れてみて。
公開日: 9月5日(金)
監督: Jean-Luc Godard
HP: roadstead.io/scenarios
『遠い山なみの光』

©︎2025 A Pale View of Hills Film Partners
2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロが、自身の出身地・長崎を舞台にした同名小説を映画化。日本、イギリス、ポーランドの3カ国合作による国際共同製作で、『ある男』などで知られる石川慶が監督を務める。本作は、戦後まもない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を交錯させながら記憶の秘密を紐解いていく。物語の主人公ニキは、日本人の母とイギリス人の父を持つ。大学を中退して作家を目指し、戦後長崎から渡英してきた母・悦子の半生を作品にしたいと考えた。そこでニキは、母の知られざるひと夏の思い出について知ることになる。その話に心を揺さぶられると同時に嘘に気づき始めた彼女は、やがて思いがけない真実に辿り着くことになる。長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに悦子の夫に松下洸平、その父親に三浦友和と、日英映画界の煌びやかな至宝がそろった。カズオイシグロの長編小説デビュー作が豪華キャストによって彩られ、ついにスクリーンに放たれる。
公開日: 9月5日(金)
監督: 石川慶
出演: 広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊
HP: gaga.ne.jp/yamanami
『九月と七月の姉妹』

©︎Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024
フランス人俳優 Ariane Labed (アリアン・ラベド) がメガホンをとり、長編デビュー。本作は史上最年少のマン・ブッカー賞候補となった作家 Daisy Johnson (デイジー・ジョンソン) の同名小説に着想を得て制作され、ラベドの公私に渡るパートナーである Yorgos Lanthimos (ヨルゴス・ランティモス) を中心として生まれた映画ムーブメント「ギリシャの奇妙な波」を継ぐ作風で脚光を浴びた。物語を彩るのは、10ヶ月違いで生まれた一心同体の姉妹・セプテンバーとジュライ。我の強い姉は内気な妹を支配し、2人は強い絆で結ばれていた。2人は時折とあるゲームに興じていたが、アイルランドの海辺近くに引っ越してから徐々に2人の関係は変化し始めていく。ただの戯れだったはずのゲームは緊張感を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく。セプテンバー役の Pascale Kann (パスカル・カン)、ジュライ役の Mia Tharia (ミア・サリア) はともに本作が映画デビュー。互いの境目がわからないほどに絡み合う姉妹を見事に演じきった。狂気を帯びていく幼き少女たちのゲームがスクリーンを不穏な予兆で充たし、観る者を悪夢へと誘う。
公開日: 9月5日(金)
監督: Ariane Labed
出演: Mia Tharia、Pascale Kann、Rakhee Thakrar (ラキー・タクラー)
HP: sundae-films.com/september-says
『タンゴの後で』

2024 ©︎ LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT
1972年に発表された、Bernardo Bertolucci (ベルナルド・ベルトルッチ) 監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』。大ヒットを記録した本作の舞台裏で起こった、1人の女優の怒りと葛藤を映し出し、エンターテインメント業界における権力勾配、搾取について鋭い視線を投げかける。19歳の若手女優 Maria Schneider (マリア・シュナイダー) はベルナルド・ベルトルッチ監督と出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターへ駆け上がった。しかし、ヒーロー役を務めた48歳の Marlon Brando (マーロン・ブランド) との過激な性描写シーンの撮影は彼女に苛烈なトラウマを、その後の人生に大きな影を落としていく。大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼び、「70年代最大のスキャンダル」と呼ばれた作品の裏では何が起きていたのか。映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人である、マリア・シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てる。
公開日: 9月5日(金)
監督: Jessica Palud (ジェシカ・パルー)
出演: Anamaria Vartolomei (アナマリア・バルトロメイ)、Matt Dillon (マット・ディロン)、Giuseppe Maggio (ジュゼッペ・マッジョ)
HP: transformer.co.jp/afterthetango
『バード、ここから羽ばたく』

©︎2024 House Bird Limited, Ad Vitam Production, Arte France Cinema, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Pinky Promise Film Fund II Holdings LLC, FirstGen Content LLC and Bird Film LLC. All rights reserved.
イギリスの名匠 Andrea Arnold (アンドレア・アーノルド) 監督最新作。『フィッシュ・タンク』や『アメリカン・ハニー』で社会の片隅に生きる人々の姿を映し続け、賞賛を浴びてきた彼女が、リアリズムと神話的ファンタジーの融合という新境地を拓く舞台は郊外の下町。孤独な12歳の少女ベイリーは、謎の男「バード」と出会い、わずか4日間の不思議な交流によって世界との距離が開かれていく。瑞々しい成長物語の主演には、演技経験ほぼゼロの Nykiya Adams (ニキヤ・アダムズ) を抜擢。思春期の揺れをリアルに表現した。そして演技派の Barry Keoghan (バリー・コーガン) が父親バグを演じ、家族への愛情を内包した姿が観る者の胸を打つ。また、映像美も本作の魅力のひとつ。Andrea Arnold とは多くの作品でタッグを組んでいる撮影監督 Robbie Ryan (ロビー・ライアン) が、16mmフィルムとスマホのデジタル映像を融合させ、リアルのなかから詩的な世界を際立たせる。日常の隙間に魔法が降り注ぐ瞬間を繊細に掬い上げた、珠玉のヒューマンドラマをぜひ体感してほしい。
公開日: 9月5日(金)
監督: Andrea Arnold
出演: Nykiya Adams、Franz Rogowski (フランツ・ロゴフスキ)、Barry Keoghan (バリー・コーガン)
HP: bird-film.jp
『SEX』

©︎Motlys
ベストセラー小説家や図書館の司書といった異色の経歴を持ちながらも、北欧映画界では確かにその実力が評価されてきた Dag Johan Haugerud (ダーグ・ヨハン・ハウゲルード) 監督による最新作。本作は、トリロジー「SEX / LOVE / DREAMS」の第1作としてリリースされる。2024年の第74回ベルリン国際映画祭でエキュメニカル賞をはじめ複数の部門を制した本作では、煙突掃除というミステリアスかつ詩的な職業に従事する中年男性2人が主人公。1人は男性客との衝動的な一夜を経て新たな刺激を覚え、もう1人は夢の中でデヴィッド・ボウイに女性として見られ、他人の視線によって形成される自分の姿に興味を持ち始める。「どこからが浮気か」「夢は現実にどのような影響を与えるのか」といった普遍的なテーマを掲げ、妻子持ちの男性2人の会話劇が繰り広げられていく。アイデンティティ、欲望の交錯といったデリケートな話題を含みつつ、あっけらかんとした会話にはオフビートな雰囲気が漂う。Dag Johan Haugerud が織りなす異色なコメディを、あなたの感性で受けとめてみて。
公開日: 9月5日(金)
監督: Dag Johan Haugerud
出演: Jan Gunnar Roise (ヤン・グンナー・ロイゼ)、Thorbjorn Harr (トルビョルン・ハール)、Siri Forberg (シリ・フォルバーグ)
HP: bitters.co.jp/oslo3