今週のTFP的おすすめ映画
TFP的
おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
10/2025
『見はらし世代』

©︎2025 シグロ/レプロエンタテインメント
本作の監督は、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に、日本人史上最年少監督としてノミネートされた団塚唯我。オリジナル脚本、そして初長編作品にして大いなる快挙を成し遂げ、映画界で沸々と話題を呼んでいる。そんな国内外から注目を浴びる本作で映画初主演を飾ったのは、NHK 連続テレビ小説「ブギウギ」で俳優デビューを果たした黒崎煌代。また遠藤憲一、井川遥など、ベテラン俳優らも登場し、新人監督がつむぐ瑞々しい世界観に深みをもたらした。物語は、再開発が進む東京・渋谷を舞台に、ばらばらになった家族を映し出す。主人公の青年、蓮は、渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働いている。ある日、蓮は疎遠になっていた父に数年ぶりに遭遇。だが、結婚を控える姉は父に関心を持たない。変わりゆく街並みを見つめながら、蓮はもう一度家族の距離を測り直そうと決意し、家族にとって最後の一夜を迎える。本作は、母親の喪失と、父親との疎遠という出来事から、個々の人生と家族の相関性を繊細に浮き彫りにしている。さらに都市開発がもたらす影響にまでテーマを広げ、新たなスタイルの日本映画に挑戦。切実さを失わず、軽やかにすすんでいく物語の結末は、スクリーンでたしかめてほしい。
公開日: 10月10日(金)
監督: 団塚唯我
出演: 黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥
HP: miharashisedai.com
『秒速5センチメートル』

©2025「秒速5センチメートル」製作委員会
リリースから18年経った今も根強い人気を持つ新海誠の劇場アニメーション『秒速5センチメートル』が実写映画化。新海誠作品では初の実写化となる本作を手がけたのは、映像監督・写真家の奥山由之。34歳の若さにして CM「ポカリスエット」や自主映画『アット・ザ・ベンチ』など、あらゆる才能を発揮する彼が並々ならぬ熱量で初の大型長編商業映画に挑む。物語のはじまりは、1991年の春。東京の小学校で出会った遠野貴樹と篠原明里が離れ離れになり、中学1年で再会。そして時は流れ、時代は2008年を迎える。30歳を前にした2人は、約束の日を胸に抱えながらそれぞれの人生を歩んでいた。奥山は四季をまたぎながら東京、種子島などを舞台に全編ロケで制作。18年という年月と、異なる速さで人生を歩む2人をセンチメンタルに表現した。互いを常に意識しながら交わらない運命を進む2人を演じたのは、松村北斗と高畑充希。新海誠監督作『すずめの戸締まり』にも出演し、新海が「最も信頼している」と評価している俳優・松村が主演を飾り、新たな新海ワールドを演出する。また、同じく新海作品『天気の子』に出演した森七菜や、『うみべの女の子』で圧倒的存在感を放った青木柚、宮崎あおい、日本の演劇・コントユニット・ダウ90000主宰の蓮見翔など、個性豊かなキャストが集結。大切な人との巡り合わせを淡く、静かに紡いだ不朽の名作が実写として生まれ変わる瞬間を、ぜひ見届けてみては。
公開日: 10月10日(金)
監督: 奥山由之
出演: 松村北斗、高畑充希、森七菜
HP: 5cm-movie.jp
『グランドツアー』

©2024 ‒ Uma Pedra No Sapato ‒ Vivo film ‒ Shellac Sud ‒ Cinéma Defacto
ポルトガルの鬼才 Miguel Gomes (ミゲル・ゴメス) 監督が4年の歳月をかけて制作し、第77回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『グランドツアー』。歴史と幻想、美と旅の狭間を巧みに揺らぐメランコリックな旅を描き出す。時は1918年。現在はミャンマーとして知られるビルマのラングーンで、大英帝国の公務員エドワードは、婚約者モリーと出会う約束を破り失踪する。逃げるエドワードを追いかけ、アジアを巡る大旅行が繰り広げられる。本作は、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、日本、中国のアジア7カ国でロケを敢行。監督自身がアジア各地で撮影した実景素材と、スタジオセットで構築した幻想的な風景を組み合わせ、「旅行映画」のあり方そのものを問い直すような斬新な手法が用いられた。また、モノクロームの古典映画調と現代のドキュメンタリー風映像を交錯させ、時代や場所の境界をクロスオーバー。過去と現代、現実と幻想、カラーとモノクロが混ざり合い、共鳴しながら織りなす類まれな映画の旅を、あなた自身の目と心で味わってほしい。
公開日: 10月10日(金)
監督: Miguel Gomes
出演: Goncalo Waddington (ゴンサロ・ワディントン)、Crista Alfaiate (クリスティーナ・アルファイアテ)、Claudio da Silva (クラウディオ・ダ・シルバ)
HP: mimosafilms.com/grandtour
『ホーリーカウ』

©2024 – EX NIHILO – FRANCE 3 CINEMA – AUVERGNE RHONE ALPES CINEMA
コンテチーズの故郷として知られるフランスの・ジュラ地方を背景に、不器用な手つきで人生を切り開こうとする青年を描いた青春譚。主人公は、自由気ままな日常を楽しむ18歳のトトンヌ。ある日、チーズ職人だった父親が不慮の事故で亡くなり、現実は一変。7歳の妹の面倒を見ながら生計を立てる方法を見つけなければならない事態が襲いかかる。そんな時、3万ユーロの賞金が出るチーズのコンテストを発見。金メダルを目指し、伝統的な製法で最高のコンテチーズを作ることを決意するのだった。監督は、本作の撮影地であるジュラ地方出身の気鋭監督 Louise Courvoisier (ルイーズ・クルボワジエ)。キャストには地元の演技未経験者を起用し、農場を営む監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加するなど、ユニークな撮影陣で見事本作を作り上げた。ジュラ山地が生み出す壮大な自然の景色をとともに、美しいだけでない農村のリアルな暮らしをフィーチャー。小規模ながらも確かな魅力が光り、本国では約1000万人を動員するなど、サプライズヒットを巻き起こした。青春、挫折、再生といった映画の定石要素が息づきながらも、リアリティと主人公の未熟な情熱が、そっと観る者の心を突き動かしてくれるだろう。
公開日: 10月10日(金)
監督: Louise Courvoisier
出演: Clement Faveau (クレマン・ファボー)、Luna Garret (ルナ・ガレ)、Mathis Bernard (マティス・ベルナール)
HP: alfazbetmovie.com/holycow
『そういうものに、わたしはなりたい。』

監督は、窪塚洋介、松田龍平の W 主演が話題となっている『次元を超える』の公開を10月17日に控えている豊田利晃。過去に手がけ、ライブハウスでの上映のみとなっていた幻の短編を再編集した『そういうものに、わたしはなりたい。』が、渋谷ユーロスペースにて緊急公開される。本作は、ネット社会から離れ、精神的な修行を行うことの豊かさについて問う、新たな生き方の修行映画。作中にて神社で怒り、燃え上がる松明を手に山を登り、滝に打たれ、五体投地をしながら旅をするのは渋川清彦。豊田作品を語るに欠かせない俳優・渋川が、今回も鬼気迫る演技力を余すことなく発揮し、スクリーンを縦横無尽に暴れ回る。そして音楽には切腹ピストルズ、向井秀徳といった豊田との魂の共同体として知られるミュージシャンが集い、映像の躍動感、臨場感をスケールアップ。現代において修行の意味について考えさせる、新たな希望の映画作品が今、スクリーンに放たれる。
公開日: 10月10日(金)
監督: 豊田利晃
出演: 渋川清彦
HP: toyodafilms.net
『ホウセンカ』

©此元和津也/ホウセンカ製作委員会
2021年のオリジナルテレビアニメアニメ「オッドタクシー」のクリエイターである木下麦、此元和津也が再タッグを結成。大逆転に人生をかけた、ある男の愛の物語をアニメーションで表現した。物語の主人公は、無期懲役囚の老人・阿久津。彼が独房で孤独な死を迎えようとしていたときに声をかけたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。その会話の中で、阿久津は自身の過去を振り返り始める。そこには、素朴で、破天荒で、愛情に溢れた男の生涯があった。W主演を務めるのは、主人公・阿久津の過去と現在を演じ分ける小林薫と戸塚純貴。共演には満島ひかり、宮崎美子、ピエール瀧といった実力派俳優が名を連ね、個性豊かなキャラクターに魂を吹き込む。さらに、全編を通して音楽を担当したのは、エッジの効いた音世界で聴く者を虜にするバンド、cero。圧巻の花火とともに象徴的なオープニングテーマが鳴り響き、物語を鮮やかに彩る。アニメーションであることを忘れさせるほどのリアルなドラマが、切なく美しい映画体験へとあなたを導く。
公開日: 10月10日(金)
監督: 木下麦
出演: 小林薫、戸塚純貴、満島ひかり
HP: anime-housenka.com