ポーランドの巨匠、Andrzej Wajda (アンジェイ・ワイダ) 監督の遺作となった『残像』が公開

2016年10月に死去したポーランドの巨匠、Andrzej Wajda (アンジェイ・ワイダ) 監督の最新作で、遺作となった『残像』が6月10日(土) より岩波ホールほかにて公開する。本作は実在の芸術家 Władysław Strzemiński (ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ) の晩年を描いた作品なっており、トロント映画祭マスター部門で世界初上映され、2017年アカデミー外国語映画賞のポーランド代表作品にも選ばれた。主演は80年代に名声を得たポーランドの俳優 Boguslaw Linda (ボグスワフ・リンダ)。

Władysław Strzemiński は1930年代を中心に、当時最も国際的に認知されたポーランドの芸術家で、近代美術の方向性を深く理解していた美術理論者でもあった。1934年ポーランドのウッチに世界で2番目となる近代美術館を設立し、1945年にはウッチ造形大学 (現ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ記念ウッチ大学) の設立にも寄与している。しかし、終戦後のポーランド政府の芸術を政治利用していく方針に真っ向から反発したため、一瞬にしてそれまで築き上げてきた名声や尊厳が踏みにじられていった。本作の舞台は1940年代から50年代だが、ロシアの刑務所に禁錮20年の判決を受けたウクライナの映画監督 Oleg Sentsov (オレグ・センツォフ) や、 出国を禁じられているイランの映画監督 Jafar Panahi (ジャファール・パナヒ) など投獄されたり、不当な扱いを受けたりしている芸術家は今もなお存在する。

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本作に関し、Andrzej Wajda は死の数ヶ月前に以下の言葉を遺している。

「私は、人々の生活のあらゆる面を支配しようと目論む全体主義国家と、一人の威厳ある人間との闘いを描きたかったのです。一人の人間がどのように国家に抵抗するのか。表現の自由を得るために、どれだけの代償を払わねばならないのか。全体主義のなか、個人はどのような選択を迫られるのか。これらの問題は過去のことと思われていましたが、今、ふたたびゆっくりと私たちを苦しめ始めています。これらにどのような答えを出すべきか、私たちは既に知っているのです。このことを忘れてはなりません。」

＜あらすじ＞
第二次大戦後、ソヴィエト連邦の影響下におかれたポーランド。スターリンによる全体主義に脅かされながらも、カンディンスキーやシャガールなどとも交流を持ち、情熱的に創作と美術教育に打ち込む前衛画家 Władysław Strzemiński。しかし、芸術を政治に利用しようとするポーランド政府が要求した社会的リアリズムに真っ向から反発したために、芸術家としての名声も、尊厳も踏みにじられていく。けれども彼は、いかなる境遇に追い込まれても、芸術に希望を失うことはなかった。“芸術と恋愛は、自分の力で勝負しなければならない” その気高い信念と理想は、今の不確かな時代にも、鮮烈な光を残していく―。

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