Kanako Nishi Art Exhibition 'Omajinai' & '“I” beyond' At AI KOWADA GALLERY

アーティスト西加奈子の “画家” としての活動にスポットを当てた個展が AI KOWADA GALLERY にて開催

Kanako Nishi Art Exhibition 'Omajinai' & '“I” beyond' At AI KOWADA GALLERY
Kanako Nishi Art Exhibition 'Omajinai' & '“I” beyond' At AI KOWADA GALLERY
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アーティスト西加奈子の “画家” としての活動にスポットを当てた個展が AI KOWADA GALLERY にて開催

Kanako Nishi Art Exhibition 'Omajinai' & '“I” beyond' At AI KOWADA GALLERY

by Mikiko Ichitani

AI KOWADA GALLERY では西加奈子「おまじない」「“I” beyond」展を開催する。本展は『サラバ!』で直木賞を受賞し、作家としてのキャリアを着実に重ねてきた西加奈子が、並行して幼少期から情熱を傾け続けてきた “絵画” にスポットを当てた、同ギャラリーでは2度目となる企画展示。

孫係 “私たちは、この世界で役割を与えられた係なんだ。” ボール紙にクレヨン 550x460mm 2018

孫係 “私たちは、この世界で役割を与えられた係なんだ。” ボール紙にクレヨン 550x460mm 2018

AI KOWADA GALLERY では西加奈子「おまじない」「“I” beyond」展を開催する。本展は『サラバ!』で直木賞を受賞し、作家としてのキャリアを着実に重ねてきた西加奈子が、並行して幼少期から情熱を傾け続けてきた “絵画” にスポットを当てた、同ギャラリーでは2度目となる企画展示。

これまでも小説のテーマを絵画でも制作してきた彼女の作品は表紙絵や挿絵となり、ストーリーを理解する鍵となる存在感を放ってきた。特徴的な作品を作る素材は、幼少時から親しんでいるクレヨンと近所のスーパーで譲り受けるという段ボール。クレヨンが油絵の具のように暑く塗り重ねられた段ボールのタブローには、西の華奢な体に宿るエネルギーが放出され、力強さに溢れている。小説を通して自己のアイデンティティ に悩み、途方に暮れる人々の背中を「あなたはあなたのままでいい」と押し続けてきたが、そのメッセージは絵画においても力強く投影されている。

二期制で構成される本展は、絵画という形でも発揮される西加奈子の表現の奥行きを、具象画・抽象画という二つの視点で紹介する。前期の「おまじない」では、先日刊行された西にとって10年ぶりとなる短編集『おまじない』(筑摩書房) で描かれる8篇の物語を象徴する作品を取り上げる。同書でスポットを当てるのは、いくつになってもやわらかく、こわれやすいこころを持ち続けている “女の子” たち。様々な人生の節目で穴に迷い込んでしまう彼女たちを、救い出してくれるような「おまじない」のような言葉にまつわる、8編の物語が収録されている。夕焼けのように赤く染まる空をバックに煙を吐く煙突や、こちらを見上げる子犬の何か言いたげに揺らぐ瞳、地を這うカタツムリの滑らかな躰と魅惑的な殻模様。具体的な輪郭を与えられて描かれたそれらは優しい印象を持つ一方、同時に小説にも表現される心の「ゆらぎ」や「不安定さ」をも見事に表現している。

後期の「“I” beyond」では、昨年同ギャラリーで開催され、多くの観客を豊穣なストーリーで包み込み、圧倒させた個展「インスタレーション “I”」をさらに再構成したもの。作品のベースとなったのは2016年に発表された小説 『i (アイ)』(ポプラ社)。アメリカ人と日本人の夫婦に引き取られた主人公「アイ」が自己の境遇にもがきながらも、アイデンティティを、そして自由を獲得していく過程が、世界で起こる悲劇と並行しながら進んでいくストーリーとなっている。インスタレーションでは、登場人物たちの心の機微を追体験させるような力強いストロークで描き上げた波や渦が会場全体を埋め尽くし、西の表現世界に観客を引き込む壮大な展示として大きな話題となった。今回は「インスタレーション “I”」 を、「“I” beyond」というテーマで、個別のタブローとして再構成。独創的な色使いで、鮮烈な生命観を描いた抽象絵画13点が展示予定となっている。昨年の展示では会場で西の文章を読むという乙な楽しみ方をするために足繁く会場を訪れるリピーターも多くいたほど、中毒性のある彼女の表現世界に迷い込んで見るのはいかがだろう。6月16日(土)には自身も絵画を描いているという芥川賞作家・村田沙耶香をゲストに迎え、「アートと文学」というテーマでのトークイベントも開催予定だ。こちらも合わせて足を運んでみてほしい。

i (アイ) “no7”-ボール紙にクレヨン 598x843mm 2017

i (アイ) “no7”-ボール紙にクレヨン 598x843mm 2017

展覧会情報
展覧会名 ⑴おまじない
⑵“I” beyond
会期 ⑴6月10日(日)〜6月24日(日)
⑵6月30日(日)〜7月16日(月・祝)
場所 AI KOWADA GALLERY
住所 千代田区外神田6丁目11-14、3331 Arts Chiyoda 2F
開廊時間 14:00-18:00
休廊日 会期中無休
観覧料 無料
問い合わせ先 03-5459-6433
HP aikowadagallery.com
イベント情報
トークイベント 「アートと文学」
出演 西加奈子 (小説家、美術家)、村田沙耶香 (小説家、エッセイスト)
進行 こやま淳子 (コピーライター)
日程 6月16日(土)
開催時間 14:00~15:00 (受付開始13:30-)
会場 3331 Arts Chiyoda 1F コミュニティスペース
定員 先着入場100名、参加費1,000円