Interview With Friedemann Vogel

世界中から引く手あまた。バレエ界に輝く王子ダンサー、Friedemann Vogel (フリーデマン・フォーゲル) が演じる光と闇の2役

Onegin | Ch. John Cranko | D: Friedemann Vogel and ensemble| © Roman Novitzky

Interview With Friedemann Vogel
Interview With Friedemann Vogel
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世界中から引く手あまた。バレエ界に輝く王子ダンサー、Friedemann Vogel (フリーデマン・フォーゲル) が演じる光と闇の2役

Interview With Friedemann Vogel

by Daisuke Yokota

Friedemann Vogel (フリーデマン・フォーゲル) はヨーロッパの名門、シュツットガルト・バレエ団のプリンシパル(最高位ダンサー)。その活躍はドイツ国内にとどまらず、ミラノ、モスクワ、英国、スウェーデン、中国、そして日本…世界中の舞台から引きもきらない出演依頼が続く、世界的人気を誇るダンサー。身長189cm、碧眼の小顔に甘いマスクと絵にかいたような王子が、今年の秋、日本の舞台で新境地をみせる。

Friedemann Vogel (フリーデマン・フォーゲル) はヨーロッパの名門、シュツットガルト・バレエ団のプリンシパル(最高位ダンサー)。その活躍はドイツ国内にとどまらず、ミラノ、モスクワ、英国、スウェーデン、中国、そして日本…世界中の舞台から引きもきらない出演依頼が続く、世界的人気を誇るダンサー。身長189cm、碧眼の小顔に甘いマスクと絵にかいたような王子が、今年の秋、日本の舞台で新境地をみせる。

—フォーゲルさんは、1998年に入団、わずか4年でプリンシパル(最高位ダンサー)に昇進しました。生粋のシュツットガルト育ちであるフォーゲルさんにとって、バレエ団というのはどのような場所なのでしょうか?

僕は5人兄弟の末っ子。兄弟は全員芸術に関わる仕事をしていて、上の兄がシュツットガルト・バレエ団のダンサーでしたから、幼いころからバレエ団の舞台を観ていました。小さい頃から踊ることは好きでしたし、はじめから“プロのダンサーになりたい!”と思っていました。留学、ローザンヌ国際コンクールをへて入団した時は“夢が叶った”という気持ちでいっぱいでした。他のバレエ団に入ることは考えられませんでした。
世界中で踊り、経験を積むことも大切ですが、故郷とは大切な、忘れてはいけない場所です。バレエ団には個性的な同僚がいて、その中で僕は成長してきました。かけがえのない場所です。
プリンシパルには早い段階で昇進しましたが、まさか自分がなれるとは思ってもいなかったので……あるとき、「世界中の著名なダンサー」の1人に自分の名前が挙げられているのを発見したときは感慨深いものがありました。

—今年は日本に縁が深い年ですね。1年の間に3回来日されます。

そうですね。4月に東京バレエ団との共演で「真夏の夜の夢」、8月はバレエ界最大の舞台、世界バレエフェスティバル。そして11月にはホームのシュツットガルト・バレエ団とともに戻ってきます。今回の日本公演ではみんなの大好きな「白鳥の湖」(笑)、そして僕らダンサーにとって聖なる作品「オネーギン」を上演します。

—バレエダンサーにとって「オネーギン」は特別な作品だと言われます。一体どのような点が人々を魅了してやまないのだと思いますか?

人間的にオネーギンは性格が良いとはとても言えません(笑)。自分のことしか考えていませんし、早熟で世間を厭い、人を見下し、タチヤーナの気持ちを踏みにじってしまいます。とても彼に共感することはできませんが、人間には良い部分だけではありません。彼が感じる後悔や生き方に心が動かされてしまうのではないでしょうか。
また、クランコの振付には、物語の核心をつく重要な場面があります。『オネーギン』では第二幕、決闘の場面。オネーギンは、親友であるレンスキーを殺してしまいます。呆然と立ち尽くす彼とタチヤーナが、一瞬、見つめ合う。すると彼は、雷に打たれたような衝撃を受ける。自分の犯した過ちの大きさに愕然とするのです。そこから彼の人生は転落の一途をたどり、タチヤーナは新しい人生を歩み始める…… この作品を踊り終わったあとには「自分の全てを出し尽くしてしまった!」と強い喪失感を感じます。同時に、「ダンスとはなんて雄弁に表現することができるのだろう!」と。

—フォーゲルさんは2014年にはじめてタイトルロールのオネーギン役を踊られました。

僕は長い間友人のレンスキーを踊ってきました。僕たち男性ダンサーにとって、「オネーギン」は誰もが“踊りたい!”と切望する役です。世界各地のガラ公演で他のバレエ団のダンサーたちに会ったとき“ついにオネーギンを踊れたよ!”という喜びの声を聞くたびに、「いいね、でも僕はまだ……」と(笑)。一時期は「僕だけ踊ることが許されないんじゃないか」と半ば諦めていました。ですが、ある日突然オネーギンを踊れることになりました。役には時間…人生経験が必要なものもあります。今思うと、良い時期にオネーギンを踊ることができていると思います。自分から「オネーギン役を踊らせてくれ!」と頼んで役をもらったわけではないからか、不思議とストレスやプレッシャーを感じずに踊ることができました。レンスキーはみんなを幸せにしたい、みんなが正しくなければいけないと思っています。そして舞台の半ばで突然殺されてしまいます。レンスキーを踊り終わった時、実はどこか満たされない気持ちが残っていました。でもオネーギンは、最後まで物語に関わり、思い悩み、タチヤーナに自分の気持ちを吐露し、役を“生きぬく”ことができるのです。アーティストとしては悪役の方に魅力を感じています。

—「オネーギン」のほかに定評ある「白鳥の湖」の王子役も踊りますね。クランコ版「白鳥の湖」の面白さはどのような点にあると感じますか?

基本的には世界中で親しまれているプティパ=イワーノフ版をベースにしていますが、ジークフリート王子とオデットの悲劇がより際立つよう、ドラマティックな改訂がされています。例えば、第2幕の王子とオデットの出会い。この場面では形式的なマイムではなく、心の動きがそのまま振付に現れています。手を差し伸べたり、抱き寄せたりするマイムもとても自然です。一番の特徴は終幕、第4幕ですね。少しネタバレになってしまいますが、王子とオデットは悪魔に勝つことはできず、永遠に結ばれることのない運命を迎えます。非常に物語の悲劇性を際立たせるもので、他の版にはみられない解釈です。最後に2人で踊るデュエットもクランコのならではの振付で、踊るたびに感じ入ってしまうほどです。あとはユルゲン・ローゼの素晴らしい舞台美術と装置。3幕の舞踏会、黒鳥の場面は圧巻で、独特な音楽構成と相まって、視覚、聴覚、両方から黒鳥オディールが王子を誘惑する様子を表現しています。

—そのような数々の舞台を演じるにあたり、身体作りはとても大切ではないかと思います。日々のトレーニングや食事など、気を付けていることはありますか?

バレエ以外に特別なことはしていません。通常は1日に8時間くらい練習しています。ジャンプして、回って、…ジムに通っているダンサーもいますが、僕にはスタジオの8時間で十分です。そこに全てがつまっていますから。デスクワークがメインの仕事だと、年を取るにつれて机に向かう時間が長くなるでしょう?でも僕たちダンサーは違います。もちろん休息も大事ですが、数日休むと体調に違和感を感じることも。継続してトレーニングを続けることが大切です。食事にはそこまで気を使っていませんが、質の良いものを食べるように心がけています。ハンバーガーは好きですが、良い素材で作られたハンバーガーにする、など。和食も大好きですよ。寿司に餃子 (笑)。あとはサウナと暑いお風呂です。

—今年の夏の日本は異常な暑さでしたが、コンディションの調整は大変ではなかったですか?

今年はヨーロッパもすごい暑さなんです。しかも、ヨーロッパでは冷房がないところも多いので。日本はスタジオや建物に冷房が効いてますから問題ありません。それに、筋肉には暑さと湿気がある方が良いと思います。もしかすると、日本人の肌が綺麗なのはそのためかもしれないですね (笑)

HP: https://www.nbs.or.jp/stages/2018/stuttgart/

Photo by Ayano Tomozawa

Photo by Ayano Tomozawa