家族のためにアーカイヴスを一挙放出。アーティスト 後藤輝がたどり着いた境地
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家族のためにアーカイヴスを一挙放出。アーティスト 後藤輝がたどり着いた境地
With Her Family’s Way of Life in Jeopardy, Artist Aki Goto Is Releasing Her Entire Archive of Works
by Daisuke Yokota
後藤輝(ごとうあき)の絵を眺めていると、おそろしいのに笑ってしまう。ふだんは誰にも見せることのない秘密の狂気が、ここへきて生き生きと腰を振り踊っているかのようなのだ。おそろしいのに笑えてしまうなんて何ごとかとも思うけれど、度を超えた恐怖とヒューモアというのは案外近いところでつながっているのかもしれない。わたしは何年か前にひと目見て彼女の作品が好きになり、個人的な知り合いとなってからは、そのウィットの効いた賢さや正直さ、彼女自身の美しさ、現在はニューヨーク州北部の田舎町で夫とふたりの幼い子どもたちと暮らす、その自然に根付いたライフスタイルの大ファンにもなった。
後藤輝(ごとうあき)の絵を眺めていると、おそろしいのに笑ってしまう。ふだんは誰にも見せることのない秘密の狂気が、ここへきて生き生きと腰を振り踊っているかのようなのだ。おそろしいのに笑えてしまうなんて何ごとかとも思うけれど、度を超えた恐怖とヒューモアというのは案外近いところでつながっているのかもしれない。わたしは何年か前にひと目見て彼女の作品が好きになり、個人的な知り合いとなってからは、そのウィットの効いた賢さや正直さ、彼女自身の美しさ、現在はニューヨーク州北部の田舎町で夫とふたりの幼い子どもたちと暮らす、その自然に根付いたライフスタイルの大ファンにもなった。
多摩美術大学を卒業後、作家としてアートギャラリーに所属し(※)、Cosmic Wonder(コズミック・ワンダー)にドローイング作品を提供するなどしていた後藤は、個展のために東京を訪れた Susan Cianciolo(スーザン・チャンチオロ)と親しくなったことがきっかけで2009年に渡米。Susan の仕事を手伝う傍ら、ドローイング、ペインティング、ファッション・デザイン、映像など、さまざまな手法を使い分けながら創作活動を続けてきた。すべての作品に共通するテーマは「NOW(今)」。
この度、彼女がこれまで手がけた作品のほぼすべてが販売されることになった。今年の夏に夫に骨髄のがんが発覚し、長期の治療が必要となったためだ(幸い、今は手術を経て快方に向かっているが、彼はしばらく仕事を休養する必要がある)。作品数は全部で200点を超え、後藤のマスターピースと言える勢いと慎重さが共存したドローイング、そこへオイル特有の色味と質感が足されたペインティング、自宅の庭で育てた野草から採取したエッセンス等のプロダクトもある。売上金はすべて、夫の治療費と家族の生活費に充てられる予定。後藤から届いたメールはこう結ばれている。「過去12年間にわたり生まれた数々の作品は、みなその時々の『今』を表現してきました。そして2018年現在、私達家族の『今』を支えようとそれらがこの田舎町へ集合してくれたことを思うと、作品への感謝の気持ちが止みません」
すでにブルックリンなど2箇所のギャラリーで展示会が行われ、11月15日からはオンライン販売もスタート。日本への発送も可能なので、ぜひサイトを訪れてあなたも彼女の作品に触れてみてはどうだろうか。「がんを憎むのではなく、愛し、そして解き放つ」という境地に達した、ひとりのアーティストの覚悟を応援したい。
今後の活動としては、2019年1月にニューヨーク郊外のD-DAY (@ddaystudio) というセレクトショップにて野草とファッションをテーマにした展覧会、2月にはニューヨークのレコードレーベル commend (@commendnyc) からのLP/カセットリリース、4月にはニューヨーク郊外の教会にて、3度目となる後藤のエクスペリメンタルオーケストラシリーズ(シロテントオーケストラ)の公演が予定されている。
※所属していたギャラリーは2017年に脱退。
後藤輝 website:「Love to cancer Love to Kentaro」akigoto-ny.com
instagram: @a3igo1o