日本人写真家 富安隼久の写真展「Fuchs / TTP」が、恵比寿のアートブックショップ POST (ポスト) にて開催

現在ドイツ・ライプツィヒとスイス・チューリッヒを拠点として活動している富安隼久。今年、イギリスの出版社 MACK が主催する過去に写真集出版経験の無い作家の出版支援を目的とする「First Book Award」のグランプリ受賞に伴い、作品集『TTP』を刊行した。

©︎Hayahisa Tomiyasu

『TTP』は、ドイツ・ライプツィヒで、当時住んでいた学生寮の部屋の窓から撮影した写真で構成されている。8階の南向きの部屋から見渡せる公園に置かれた卓球台に焦点を当て、デッドパン・スタイル (主観や感傷、ドラマチックな誇張を可能な限り抑え、対象を客観的、中立的に描写する手法) を用いて定点観測的に撮影。その間に時刻や季節、公園に訪れる人々が移ろいでいく様子を捉えている。タイトル『TTP』を意味するドイツ語の「tischtennisplatte (卓球台)」とは、本来の卓球台として使われるだけでなく、日光浴であった り、スケートボードの障害物、物干し、子供がよじ登る遊具、ミーティングスポット、賑やかな通りからの避難場所などその用途は数知れず。本書でもページをめくるたびにこの卓球台が異なる表情を見せる構成がユニークだ。作者の長きに渡る好奇心の結果、人間の行動から滲む習性やユーモア、それぞれの人の持つ独特な気質をこの謙虚に鎮座する卓球台のもとで垣間見ることができるだろう。

本展では、『TTP』より抜粋した作品のスライドと共に、本作の前身かつ制作のきっかけでもある作品『Fuchs (ドイツ語で狐を意味する)』からも作品を展示する。世界で注目される日本の新鋭作家の作品にぜひ触れてみてほしい。

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