Gucci
presents 'no Space, Just A Place' at Daelim Museum

グッチが主導する多層的プロジェクト「No Space, Just A Place」展が開催中

No Space Just a Place, Daelim Museum, Seoul (2020)

Gucci presents 'no Space, Just A Place' at Daelim Museum
Gucci presents 'no Space, Just A Place' at Daelim Museum
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グッチが主導する多層的プロジェクト「No Space, Just A Place」展が開催中

Gucci
presents 'no Space, Just A Place' at Daelim Museum

ソウルの豊かな文化的景観とコンテンポラリーアートシーンをサポートするために Gucci (グッチ) が主導する、多層的プロジェクト「No Space, Just A Place」展がソウルの大林美術館にて開催している。バーチャルでの鑑賞も可能。会期は、7月12日(日)まで。

アートシーンにおけるインディペンデント/オルタナティブ スペースは、いつの時代もアンダーグラウンド的な場として、店先、ロフト、倉庫など、メインストリームからは見過ごされがちな場所に存在してきた。それらは、しばしば政治的あるいは実験的で、商業的成功よりも芸術的論争を巻き起こすことに注力しているアーティストや作品を取り上げることで、いわゆる「ホワイトボックス」的な商業ギャラリーの中立性と相対する関係だ。ソウルでは1990年代後半にこうしたムーブメントが自然発生的におこり、以来、さまざまなスペースで展開される多様化するプロジェクトによって、既存のアート界に対する批判や疑問を投げかけている。

ラディカルな美のビジョンで知られる Myriam Ben Salah (ミリアム・ベン・サラ) がキュレーションを手がけた本展では、ソウルのアートシーンにおけるインディペンデント/オルタナティブ スペースの多様性と、クリエイティブ・ディレクター Alessandro Michele (アレッサンドロ・ミケーレ) による「eterotopia (エテロトピア)」の省察をベースに、「eterotopia」、つまり「他なる空間」の新しい定義を提案。ジャンルとジェンダーの関係性の倫理的・美学的価値、環境への意識向上、自由な自己表現、そしてエイジレスな人類学的マニフェストといった、Alessandro Michele にとっての重要なテーマが、本展のミッションに反映され、自主性について思索しながら権威に立ち向かい、未来の新たなストーリーを予見するコンセプチュアルなツールの「オルタナティブ (代替)」としての可能性を探求するものとなっている。

「No Space, Just A Place」展 イントロダクションムービー

今回の展示のために、インディペンデント アートスペース Audio Visual Pavilion、Boan 1942、D/P、Hapjungjigu、OF、Post Territory Ujeongguk、Space illi、Space One、Tastehouse、White Noise が選ばれ、大林美術館の3フロアにわたり、キュレーターである Myriam Ben Salah との対話を通じてそれぞれのプロジェクトを展示する。Meriem Bennani (メリエム・ベナーニ)、Olivia Erlanger (オリビア・エルランガー)、Cécile B. Evans (セシル・B・エバンス)、Kang Seung Lee (イ・ガンスン)、Martine Syms (マルティーヌ・シムズ) といった韓国や他の国々から選ばれたアーティストたちはそれぞれ、未来や幻想的な神話からインスピレーションを得た没入型インスタレーションを制作。それらはユーモアとマジカルなリアリズムを組み込んだ力強いビジュアルイメージを通じて、社会を支配する言説の偏狭な視点への疑問を投げかける役割を果たす。

変位、バイオテクノロジー、クイアリング、混成などのテーマを提起し、「他者性」にまつわる解放論的ストーリーを紐解くため、ストーリーテリングとフィクションの可能性を探る、という趣旨にもとづき Meriem Bennani は、「Party on the Caps」(2018-2019) を出展。大西洋の真ん中に浮かぶキャプス島の架空の住民を描き出したビデオ インスタレーションでは、違法に国境を越えた難民・移民たちが抑留されている島で、作家はやがて彼らに起きる転移 (物理的および心理的) の新たな構造を想像し、その地理的分布、市民権の状態、年齢、性別の間に存在する新しいコミュニティを創り出している。

Cécile B. Evans  のインスタレーション「What The Heart Wants」では、現代人の状態を定義するものとなっている人と機械の 交流について追究。未来が現代になるというパラドックスの中で、誰が、または人を構成する何物が、あるいはどんなシステムが「人間」であることの条件を形成していくかということについての、ネゴシエーションが繰り広げられる。

Kang Seung Lee のウォールペーパー インスタレーション「Covers (QueerArch)」は、QueerArch (韓国のクィア文化のアーカイブ プラットフォーム) からのコレクションを中心に、韓国におけるクィア コミュニティの40年間にわたる歴史にオルタナティブな視点を提示。歴史の本流から取り残された個人の物語をたたえる内容となっている。

Lee Kang Seung, Covers (QueerArch), 2019/2020. Exhibition view, No Space Just a Place, Daelim Museum, Seoul (2020)

Lee Kang Seung, Covers (QueerArch), 2019/2020. Exhibition view, No Space Just a Place, Daelim Museum, Seoul (2020)

館内にコインランドリーを出現させた Olivia Erlanger によるシュールなインターベーション「Ida、Ida、Ida!」は、ただ時間が過ぎるのを待つのみの一過性の空間に。このコインランドリーには、性別といった概念のないキメラ的な存在としてマーメイドの尾が置かれ、流動性、異種交配、ジェンダーの原型についての疑問を提起する。

Martine Syms は、ビデオ インスタレーション「Notes on Gesture」を通して、ジェスチャー、ボディランゲージ、 および実際の言語が文化的な力によっていかに形成されるか、またいかにアイデンティティを発揮するようになるかを描き出し、 それをベースにオルタナティブなアイデンティティの可能性が広がっていくことを暗示している。

会期に合わせて、本展のプロジェクトはバーチャルでも展開中。ヴィジュアルだけでなく、オーディオコメンタリーやステートメントなどの資料も充実しており、実際に作品一つ一つをじっくりと観てまわることができるのが嬉しい。今週末は、時間や人ごみを気にせずに満喫できるバーチャルトリップを楽しんでみるのはいかがだろうか。

「No Space, Just A Place」展 メイキングムービー