ロエベの新キャンペーンに、本田翼、北村道子、シャラ・ラジマの3人が登場、撮影は黄瀬麻以
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ロエベの新キャンペーンに、本田翼、北村道子、シャラ・ラジマの3人が登場、撮影は黄瀬麻以
Interview with Sharar Lazima, a new face of
Loewe
2020 hammock bag campaign
interview & text: miwa goroku
LOEWE (ロエベ) を象徴するアイコンのひとつ「ハンモック」バッグのファミリーから、大きなトートタイプの新作「ハンモックトート」が登場。これを祝し、LOEWE は初となる日本を舞台としたキャンペーンを公開した。
LOEWE がキャンペーンの顔に選んだのは、本田翼、北村道子、Sharar Lazima (シャラ・ラジマ) の3人。ヴィジュアルは、それぞれゆかりのある場所で撮影され、独自のスタイルを模索する表現者としての生き方にフォーカスが当てられている。撮影は、写真家の黄瀬麻以 (きせ・まい) が手掛けた。
中でもニューフェイスの Sharar Lazima に、今回TFPはインタビュー。Sharar の撮影は、新居へと引っ越す直前だったという本人の自宅で行われた。スタイリングは、本キャンペーンの主人公のひとりでもある北村道子が担当。初対面だったという二人だが、すぐに意気投合し盛り上がりを見せたようだ。
Sharar Lazima (シャラ・ラジマ) は10歳の頃に来日。実は広島生まれだが、1歳になる前に両親の故郷であるバングラディッシュに戻っており、来日時に話すことができた言語はベンガル語と英語だった。そこからわずか半年で、日本語をマスターしたというシャラ。「テレビのスイッチがパチっと入るように、3ヶ月経ったあたりで日本語がわかるようになりました。今では思考も文章もすべて日本語」。モデルを続けるかたわら、執筆家としても活動する。
― 撮影場所は自宅。William Morris (ウィリアム・モリス) の壁紙が印象的です。
自分の家に誰かを招いて撮影したのは初めてでしたし、しかも北村道子さんがスタイリングに来てくださると聞いて、ものすごくテンションがあがりました。私も夫 (今年7月、OKAMOTO’Sのオカモトショウと結婚) も 60〜70年代のカルチャーが好きで、たまたま70年代の音楽をかけていたことをきっかけに話が盛り上がり、とても楽しい撮影でした。このヴィジュアルには、自分が好きなものが詰まっています。家具は、新しく引っ越す家に持っていくために買ったもの。William Morris の壁紙もお気に入りで、新しい家にも貼ります。編集さんが持ってきてくれた花を、たまたま家にあった青い花瓶に生けて、後ろの棚には愛猫が座っていて…… 偶然の重なりに、北村さんが選んでくださった服がものすごく合っていて、とてもいいヴィジュアルになったと思います。
― シャラさんにとってLOEWE はどんな存在ですか?
LOEWE のロゴが変わったあたり (2014年) から気になっていました。大好きな William Morris のフォントに近いなと思って (笑)。今回初めて LOEWE の服を着て、やっぱりいいものはいいなと感じています。
― 今回のキャンペーンで声かかったとき、どう思いましたか?
まず、私を起用する時点で、革新的だなと! ハンモック バッグは個性がありながらいろんな使い方ができて、人の生活に寄り添うというコンセプトがあります。その誰でも使えるというアイデアと、自分の起用はリンクしているなと思いました。何より、モデル、ひとりの人間としてインタビュー映像にも出てほしいというオファーが自分に来たのは感動したし、ものすごく嬉しかったです。本田翼さん、北村道子さんという並びにも震えました。
― 普段のバッグの使い方について。シャラさんが選んだ「ハンモック スモール」の魅力は?
いつもは簡単なトートバッグを使っていて、そろそろいいバッグを持ちたいと思いつつ、いいバッグって重かったり固かったりして、なかなかしっくりくるものと出会えてなかった。LOEWE の「ハンモック」シリーズは柔らかいし、何よりカジュアルもドレスも合うところが好きです。私はこの小さいサイズがお気に入りです。必要なものがちょうど入るから。
― 今日のバッグの中身は?
イヤホン、リップ、財布、三島由紀夫『行動学入門』。
― 三島由紀夫の本は、キャンペーン ヴィジュアルにも写ってましたね!
『行動学入門』は高校受験時代に出会った本です。私は圧倒的に直感で生きてきて、でも感覚だけじゃどうにもならないことがある、論理も大事なのではと思い始めた頃に三島由紀夫をはじめて知って。この本には、まさに自分がそれまで考えてきたことがまとめてあって、とても感動しました。たとえるなら、栓が空いていないワインの瓶が論理で、栓抜きが感覚のイメージかな。結局どっちも使わないと、ワインにはたどり着けないということ。
― 好きな本は繰り返し読む?
読みます。逆に、私は19歳頃までは、なるべく本は読まないようにしていました。若い時に影響力のある本を読みすぎると、自分の考えと引用の境目がわからなくなりそうだと思ったから。やっぱり感覚が自分にとっていちばん大事なんです。大好きな音楽も同じ。誰かがいいと言っているから、ヒットしているからという理由で探すことはしないようにしてきました。自然と出会って、耳に入ってくるものを聞いて、自分がいいと思うかどうか。何事も自分で感じるところからはじめたい。
― 感覚において自然体である一方、ヴィジュアルは意図的にセルフプロデュースしていますよね。髪を金髪に染めて、ブルーのコンタクトを入れて、つかみどころがないイメージ。Instagram のプロフィールには “no identity” と書いてあります。
アイデンティティって、所属に求めるものではなく、自分であるかどうかを考えるものだと思うんです。東洋思想ではアイデンティティは基本的に無いという趣旨の概念があるのですが、大学で初めて勉強した際に、自分が感じたことは間違っていなかったんだととても共感した経験があります。私はただ水のように調和してなじんでいたい。私は白人でも黒人でもなく、まわりと比べる基準がわからなくて、自分で考えるほかありませんでした。見た目だけで、あなたは何人?と聞かれないために、見えなくしてみたらこうなったという感じです。すべては自分次第だと思います。自分がマイノリティである時、こちらのことをわかってもらおうとするだけじゃなく、私たちも相手のことを理解しようとしなくてはいけない。相手と調和を取ろうとするならば、それは可能だし、なじんでいくことができる。
― フェミニズム、LGBTQ、BLM…… いろんな問題が議論される中、戦うのではなく、調和するというスタンスに未来を感じます。
私の場合、見た目のヴィジュアルだけだと説明が足りないから、文章も書き始めました。人権とか国籍とかジェンダーの問題だけを主張したいわけではないです。ただ、責任を持って存在して、自分の言葉に責任を持って発言するということをしていきたい。自分に責任を持つことは、相手にも責任を持つということ。それが愛だとも思う。