アートディレクター・永戸鉄也の映像作品「種火」が公開
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アートディレクター・永戸鉄也の映像作品「種火」が公開
tetsuya nagato
"tanebi"
UNDERCOVER (アンダーカバー) デザイナーの高橋盾らと結成した「UNDERCOVER PRODUCTION (アンダーカバー プロダクション)」のメンバーであり、広告やパッケージデザイン、ミュージックビデオ、ドキュメンタリー映画、展覧会キュレーションなど音楽、ファッション、アートといったフィールドで活躍するアートディレクターの永戸鉄也が YouTube (ユーチューブ) 上に自身のチャンネル「床の間」を開設。映像作品「種火」が初公開された。
「種火」は、都内のスタジオで収録された蓄音機DJの映像と音をベースに、3.11後に永戸が住んでいた阿蘇の風景や撮りためてきた断片的な映像を重ね合わせた実験的作品。
映像は、蓄音機を2台並べてMIXする様子を3台のカメラと9本のマイクで収録。溝に刻まれた音が針を伝って再び振動となり増幅され、ランダムに差し込まれた映像とともに、いつのどこのものかわからない記憶として現れる。近年なかなか聞くことのできなくなった蓄音機から奏でられる独特の音色と阿蘇山や炎、雨といった自然の美しい風景のハーモニーを是非映像から楽しんでほしい。
永戸鉄也は本作について以下のように語っている。
「蓄音機と記憶
蓄音機に出会ったのは十数年前。
実家の倉庫にあった、カビの生えた重いレコードを掃除して、オークションで数台入手したポータブル蓄音機をバラバラにし、組み上げ、ゼンマイを巻き、針を落とし、聞き始める。
高音の張りと高い針圧により拾ってしまうノイズ、その音像には、暖かな最後の感覚、孤独で無言、厳かで儚い膨大な記憶を纏っているかのように感じた。
そしてその電気を通さない音色、振動と増幅というシンプルな魔術に感銘を受けた。
この映像を編集している間、記憶について考えていた。
死の間際に思い出すのは、誰がいる、どんな風景なんだろう。
いつのことを観るのだろうか。
人の記憶は意外でふとした箇所に杭を立て、思い出を作り上げる。
なるべく深く遠くの思い出は、小さくて上等な作りの宝箱のようで、記憶の迷路にはその箱が至る所に点在している。
一旦記憶の持ち主の肉体が終わりに向かい始めると、その迷路の壁と宝箱はトロリと溶けてなくなり、広間にはただ思い出たちが散りばめられている。
ただその空間は暗く広く、全てのシーンに出会うことはできない。
流れていく時間の中で、出会えた記憶を留められたらと思った。」
今後、YouTube チャンネル「床の間」には、永戸の映像作品が不定期に公開されていく予定だ。