18人の画家が描くスウェーデン在住ガラス作家・山野アンダーソン陽子の作品が一冊に。写真は三部正博
News
18人の画家が描くスウェーデン在住ガラス作家・山野アンダーソン陽子の作品が一冊に。写真は三部正博
Yoko Andersson Yamano's
"Glass Tableware in Still Life"
photographed by masahiro sambe
スウェーデン在住のガラス作家・山野アンダーソン陽子の発案で、写真家・三部正博とグラフィックデザイナー・須山悠里とともに2018年よりスタートした「Glass Tableware in Still Life」プロジェクトが一冊の本になり、9月上旬に torch press (トーチプレス)より刊行される予定だ。日本とスウェーデンの画家計18名が参加した本プロジェクトは、彼らが山野にガラス器をそれぞれのイメージでオーダーし、そのガラスを画家たちが各々の作風で絵の中に描くというもの。本書のローンチを記念して、10月21日より鎌倉の ink gallery (インクギャラリー) にて展示が開催予定。さらに、ガラス器と静物画、写真からなる本プロジェクトの展覧会「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」が2023年11月より東京オペラシティ アートギャラリー、広島市現代美術館、熊本市現代美術館を巡回予定となっている。
山野アンダーソン陽子は、1978年に日本で生まれ、現在はスウェーデンのストックホルムを拠点に活動するガラス作家。北欧最古のガラス工場であるコスタ内の学校で吹きガラスの手法を学び、スウェーデンの国立美術工芸デザイン大学で修士課程を修了。在学中には、同国を代表するデザイナー、Ingegerd Raman (インゲヤード・ローマン) にその美学を学び、Margaret Howell (マーガレット・ハウエル) をはじめ、スウェーデン、イギリス、日本などで作品を展開している。
ガラス器は古くより静物画の中で描かれ続けてきたが、「Glass Tableware in Still Life」プロジェクトでは、この身近なガラスという素材を媒介に、山野とさまざまな文化的背景をもつ画家たちが言葉とイメージを通じた対話を経て作品を制作。写真家の三部正博が、山野によるガラス器と画家たちが描いた静物画を、それぞれの画家のアトリエで撮り下ろした。8×10の大判カメラを用いて透明なガラス器は白黒フィルム、静物画はカラーフィルムで撮影。35mmカメラでは、画家のアトリエの風景を白黒フィルムで写真に収めている。そうした作品群が、須山悠里のデザインによって一冊のアートブックに。表紙の印刷では、異なるインクを同時に流し込み、インク量、印圧を調節しながら刷っていくことで、モノクロームの中に流れるような風合いを携えた、静謐な本に仕上がった。
参加作家には、石田淳一や小笠原美環、八重樫ゆい、伊庭靖子、CM Lundberg (CM・ルンドベリ)、Maria Nordin (マリーア・ノルディン)、Anna Camner (アンナ・カムネー)、Jens Fänge (イェンス・フェンゲ) らが名を連ね、さらにアーティストの Gunnar Larson (グンナル・ラーソン) が寄稿。同氏は以下のように本書について述べている。
「彼女は招聘したアーティストたちに、それぞれのイマジネーションを通してまだ存在しない静物のリアリティを呼び起こす機会を与えている。私はこれをある種の魔法だと解釈している。現実と私たちの体感の間にカメラのレンズを介入させることへの執着が見られる現代において、存在を主張することが困難な静物画という芸術的実践に(文字通り)息を吹き込む魔法のようなものではないだろうか。」