
Sophie Mechaly
30周年を迎えたポール & ジョーがポップアップイベントを開催中。ブランド創設者兼クリエイティブディレクターのソフィー・メシャリ―へインタビュー
Paul & Joe
Interview with Sophie Mechaly
パリ発のファッションブランド PAUL & JOE (ポール & ジョー) が、ブランド創設30周年を記念したポップアップイベント「PAUL & JOE GARDEN」を、原宿ベーカリーカフェ426 にて期間限定で開催中。幻想的な庭園をイメージした本イベントでは、2026年の春夏コレクション「Ready-to-Wear」の展示に加え、30周年を記念した限定Tシャツ、ソックス、ハンカチのほか、秋冬のファッション雑貨やコスメを販売。さらに、オリジナルドリンク&スイーツや来場者プレゼントなど多数のコンテンツを展開し、まるで不思議な庭園に迷い込んだようなブランドならではの特別な世界観を体験できる。
「PAUL & JOE GARDEN」の開催を記念し、ブランドの創設者でクリエイティブディレクターを務める Sophie Mechaly (ソフィー・メシャリー) に話を聞いた。
30周年を迎えたポール & ジョーがポップアップイベントを開催中。ブランド創設者兼クリエイティブディレクターのソフィー・メシャリ―へインタビュー

Sophie Mechaly

– ブランド創立30周年、おめでとうございます!
ありがとうございます! 私にとって30周年を日本でお祝いすることは、とても深い意味があります。というのも、私が PAUL & JOE を立ち上げた当初、まだメンズウェアだけだった時代から、日本の皆さまは常にあたたかく私たちを応援してくださいました。そして最初に私のブランドを好きになってくれたのも、日本の方々でした。だからこそ、私にとってもブランドにとっても、日本は特別な存在なのです。皆さんは本当に良いブランドを見つける力を持っていて、「日本のお客様に愛されるなら、ブランドをもっと成長させられるチャンスがある」と、いつも感じています。そして今回、このような素晴らしいポップアップを東京の表参道で開催できることができ、とても嬉しく思います。日本のポップアップ開催後は、パリでもアニバーサリーの続きを行う予定なんですよ。
– クリエイティブディレクターとして、最も大切にしていることは?
服作りにおいて私が最も大切にしているのは、「ファブリック (生地)」です。特に自然素材の生地を重視しており、ポリエステルやナイロンといった化学繊維ではなく、コットンやリネンなどを中心に使用しています。また生地のテクスチャーや質感、肌触りにも強いこだわりがあります。平面的なものだけでなく、ジャガード織りや立体感のある3Dのような特別な素材にも注目していて、そういった生地に新しい方法でプリントを施すことに、常に挑戦しています。洋服に興味を持ってもらうためには、まず「目を惹くこと」が大事。人々の目に留まり、「あ、素敵!」と思ってもらうことが、最初のステップなんです。次に手に取って生地の質感を感じ、そして最後に試着してもらう——私にとって「目で惹きつけ、触れて感じ、着て確かめる」という流れがとても大事で、その第一歩として、生地選びはとても重要な役割を果たしているのです。
また、プリントの作業は、ブランドが始まった時からずっとイタリアで行っており、100年以上の歴史を持つ老舗の工場と長い間、協力関係を築いています。彼らには豊富な知識と経験があり、高度なプリント技術や膨大なアーカイブを持っていて、手描きから生まれる繊細な柄と、熟練の技術による高品質なプリントは、私のこだわりの一つです。最近では多くのブランドがデジタルプリントを採用していますが、私はデジタルがあまり好きではありません。鉛筆や水彩のように、人の手が感じられる手法が好きです。なぜなら、私は「完璧すぎるものには魅力がない」と感じているから。あまりに完璧すぎるものは不自然で、人間らしさが感じられません。私たちが作り出すプリントは、すべて手作業のような繊細な仕上がりで、ディテールがとても丁寧。でもそれは機械的な完璧さとは違い、“人の手による美しさ” なのです。少しの“ゆらぎ”や“個性”があるほうが、私は魅力的だと感じています。
– あなたのインスピレーションは、どこからやってくるのですか?
私は普段から多くの美術館や展覧会を訪れたり、本を読んだりしてインスピレーションを得ています。集めているのは陶器やリネン、寝具など、ジャンルを問わず幅広く。アンティークなライフスタイルにも惹かれていて、そこからアイデアを拾い集め、コレクションを作り上げています。特にファッションとアートを融合することが好きで、これまでも多くのアーティストとコラボレーションしてきました。有名無名を問わず、自分が「好き」と思えるアーティストと仕事をしています。
今回の春夏コレクションでは、息子 Joe (ジョー) の友人であるアーティスト、Pandora Decoster (パンドラ・デコステール) とコラボしました。彼女の作品と出会ったのは2年前に息子が引っ越した新居を訪れたとき。リビングの壁に美しい手描きの壁画があって、それを見た瞬間、「これ、誰が描いたの?」と思わず聞いたのがきっかけでした。それから彼女と話をしながら、彼女が生まれ育った場所の風景や、私の愛猫 Gipsy (ジプシー) とNounette (ヌネット) も描いてもらい、まさに絵画とファッションが一つになった特別な作品に仕上がりました。原画は今オフィスに飾ってあるんですよ! 本当に素晴らしい作品です。
– ご自身にとって PAUL & JOE はどんな存在ですか?
PAUL & JOE は、フランスらしいエレガンスと強い個性を持った、唯一無二のブランドです。確立した独自のスタイルがあり、それがひと目でわかるのが特徴と言えます。ブランドを立ち上げた当初、誰も注目していなかった柄やプリント、色使いに挑戦したことは、大きなリスクでした。でも私にとって一番大事なのは、「ブランドの個性=ブランドらしさ」を失わないこと。方向性を変えすぎてしまうと、ブランドもお客様も迷走してしまいます。私は自分が好きなもの——イラスト、アート、ものづくりへの深い知識や丁寧な製造、シックでエレガントだけどどこか特別なスタイル——を、いつも大切にしています。だからこそ自分が「良い」と思えるものを作り、それを通じて人に感動を届けたい。これこそが私の原点であり、この原点を守ってきたからこそ、30年続くブランドになったのだと思います。
– 最後に、今回のポップアップイベントやコレクションを通して、伝えたいメッセージはありますか?
今回のポップアップに来てくださった方々には、とにかく楽しい時間を過ごしてもらいたいです。たとえば、友達や家族と一緒に来たり、ギフトを探したり。そういう“誰かとシェアできる楽しさ”が、今回の取り組みの魅力だと思っています。最近はスマートフォンの影響で、人と人のつながりが少しずつ希薄になっていると感じます。だからこそ、直接会って、話して、交流できる場が大切だと思い、このポップアップを開くことにしました。老若男女問わず、誰でも気軽に入れる、オープンな空間にしたかったんです。
私のファッションは、自分のライフスタイルそのものにとても近いものです。それぞれのアイテムには、私自身の日常や、リアルな体験が反映されています。たとえば度々登場する猫たちは、実際に私が飼っている愛猫たち。すべてが想像で作られているのではなく、想像と現実がほどよく混ざり合った、”リアルさのある世界”——それがPAUL & JOEの魅力だと思っています。

本イベントは、10月14日(火) まで期間限定で開催。この連休に、 ブランドのこだわりが詰まった鮮やかな世界に足を運んでみては。