気鋭デザイナー Diego Vanassibara (ディエゴ・ヴァナシバラ) の作り出す、モードで "楽観的" なメンズシューズ
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気鋭デザイナー Diego Vanassibara (ディエゴ・ヴァナシバラ) の作り出す、モードで "楽観的" なメンズシューズ
London's Rising Talent Diego Vanassibara Talks About His Passion And Optimism For Shoe Making
ロンドンを拠点にする気鋭シューズデザイナー、Diego Vanassibara (ディエゴ・ヴァナシバラ)。南ブラジル出身、現地では建築を志していた Diego がシューズデザインに興味を持ったのは「アーキテクチュアと同じ構築的なアプローチを靴に感じた」からだという。
Editor – Shunsuke Okabe
ロンドンを拠点にする気鋭シューズデザイナー、Diego Vanassibara (ディエゴ・ヴァナシバラ)。南ブラジル出身、現地では建築を志していた Diego がシューズデザインに興味を持ったのは「アーキテクチュアと同じ構築的なアプローチを靴に感じた」からだという。
その後22歳で渡英。ロンドンの名門 Cordwainers College (コードワイナー・カレッジ) にてシューズデザインを学んだ彼は、2013年に自身の名を冠したフットフェアブランドを立ち上げている。
伝統的な紳士靴の製法やノウハウを踏襲しながらも、構築的なスカルプチュアソールや、個性的なウッドパネルを装飾として取り入れるなど、固定概念にとらわれないハイブリッドな創造性で注目を集めるクリエイション。メンズファッションの多様性が求められるなか、Diego Vanassibara のシューズはそれだけでスタイリングを旬に見せてくれる驚きに満ち溢れている。
– 現在 Dover Street Market Ginza (ドーバー ストリート マーケット ギンザ) にて展開中の最新コレクション「TORNADO (竜巻)」について、製作背景を教えてもらえますか?
まず今回のコンセプト「TORNADO」を思いついたのは、昨年の夏のこと。ロンドンの田園地帯に出向いた際、どういうわけか空に浮かぶ雲に気が向いたんだ。すごく分厚い、大きなカミナリ雲で、それがやけに情緒的に見えた。この美しい情景を靴で表現したらどうなるんだろうと思った。こうして構想を練ったのが今回のコレクションなんだ。
– 自然から着想を得るというのは、ブラジルの故郷とも通ずるところがあるのでしょうか?
そうだね、僕が生まれ育ったのはブラジル南部の Caxias do Sul (キャシアス ド サル) から更に下った田舎町。自然が形を変えず現存する町で、幼い頃は近所に生えてるイチジクをもぎとって食べたりしてた。
– ブラジルで建築を学んでいたあなたに転機が訪れるのが22歳のとき。ロンドンでシューズデザインを学びたいと思ったのはどういったきっかけだったのでしょう?
建築を学べたことは素晴らしい経験だった。でも正直言ってシリアス過ぎて退屈に感じていたというかんじかな。退屈というには語弊があるけど、一つのプロジェクトが完成するのに何年も要する建築の世界では、自分のイマジネーションが発揮しきれないと感じたんだ。
転機というか、もともとシューズデザインには興味があった、といった方が正しいかな。建築を学ぶ中で、デザインのプロセスで多くの共通点があることに気づいたんだ。自分のブランドを立ち上げようと思ったのは、ありきたりかもしれないけど自分が欲しいと思うような靴が無かったからというのが大きいね。
僕のコレクションのテーマは “Modern Artisanship (現代の職人技)”。伝統的な紳士靴はもちろん美しいし、デザイン性を全面に押し出したスニーカーやその類は見ていて面白いけど、多様化する現代のメンズファッションの世界で、どういうわけか靴においては偏ったデザインばかりが見受けらた。そこで僕は、これら2つのギャップを埋めるような、オーセンティックでありながら洗練されていて、遊び心に溢れているけどシックなメンズシューズを作りたいと思ったんだ。
– それらの背景を元に製作されたこれらのシューズですが、中でも目を引くのがウッドパネルを用いたレースアップシューズですね
これらのウッドパネルは、僕がこれまでシグネチャーとして多く用いてきたもの。あれは実は全て東南アジアで採取されたもので、ジャワにある、高級な木材を取り扱う業者から直接仕入れている。黒い木材はマホガニー、少し赤みがかったものはローズウッド。少し紫がかった色味は、ニューギニア産特有のもの。木目、質感、色味、それぞれの材質が持つ表情が個性的なんだ。その上、これらの材木は全て再生資材だから環境にも優しい。
あと、これらのシューズを履いた人には分かると思うけど、実はこのウッドパネルはシューレースの動きに合わせて柔軟に動くよう設計している。デザインばかりが先行して履き心地が後回しになってしまっては意味が無いだろ?シューズのデザインによって製作過程も変えてるんだけど、それぞれイタリアの職人の熟練の技が細部にまで行き渡っていることは自信を持って言えるね。
– 斬新なデザインは、それを裏打ちするクラフツマンシップがあってのこと
その通り。例えば今季のテーマの雷雲を直接的に表現したのが、シルバーのメタリックレザーを象嵌細工で組み込んだピース。雷をイメージしたラインをアッパーに落とし込んだこのシューズは、3つの異なるパネルを一枚に組み合わせている。シンプルに見えるかもしれないけど、一寸も違いなく縫い合わせるにはとても高い技術を要するんだ。
– 今回のインスタレーションでは、イギリス人のセットデザイナー William Murray (ウィリアム マレイ)とのコラボレーションを手がけていますね
僕のコレクションは、毎シーズン一つのテーマに沿ってインスタレーション形式で発表している。そこにはやっぱり、潜在的に靴がある種のアート表現としての側面を持っているという僕の考えが反映されているんだ。ファッションでありながら建築的でもあり、一種のアートでもある。そこに佇んでいるだけでイマジネーションが掻き立てられる上に、実際に履いたときまた違った発見があるのが魅力だね。
今回のインスタレーションでは、巨大な竜巻を作りたくて William に依頼した。荒々しい竜巻の様子をアクリルの板を縦横無尽に這わせることで、シューズのディスプレイとともに表現しているよ。
これらのインスタレーションは、ロンドンファッションウィークで発表される NEWGEN MEN の一環として発表したんだけど、このプログラムの中でアクセサリーデザイナーとして参加したのは僕が初めてなんだ。
– 今季は日本人デザイナーの Mihara Yasuhiro (ミハラヤスヒロ) との待望のコラボも手がけていますが、今後デザイナーとのコラボは積極的に行っていく予定でしょうか?
彼とのコラボレーションはとても有意義なものだった。何より、彼自信が靴作りに熟知していることが大きかったね。若いメンズシューズデザイナーは本当に数が少ないから、実際ロンドンのデザイナーとのコラボの話も少なくない。今はブランドの規模も小さいけど、将来的にはデザイナーコラボも含め様々なクリエイションに携わっていきたいね。
– 靴といえば、“Beautiful shoes will take you to beautiful places (素敵な靴を履くと素敵な場所へ連れていってくれる)”というフレーズがしばしば用いられますが、Diego Vanassibara のシューズはどんなところに連れて行ってくれると思いますか?
難しい質問だね…少し考えさせて…素敵な場所であることには違いないと思うんだけど、僕にとって素敵な場所といえば “Optimistic (楽観的)” であることかな。これは僕自身の考え方でもあり、ブランドのフィロソフィでもある。僕の靴を履いた人には、楽観的で、プレイフルな世界観を感じ取ってもらいたいな。
<ショップ情報>
店名: Dover Street Market Ginza
住所: 東京都中央区銀座6-9-5
時間: 11:00-20:00 (日~木)、11:00-21:00 (金、土)
TEL: 03-6228-5080
HP: ginza.doverstreetmarket.com
Diego Vanassibara
ブラジル出身
ブランドを立ち上げる前は、イギリス・ロンドンにある靴の名門校 Cordwainers College で靴作りを学ぶ。 建築の勉強をしていたこともあり、構築的な要素と自由でダイナミックな創造力がバランス よく靴作りに落とし込まれいる。現在ロンドン在住。