『Double (ドゥーブル)』マガジン編集長、Fabrice Paineau (ファブリス・パイヌー) インタビュー
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『Double (ドゥーブル)』マガジン編集長、Fabrice Paineau (ファブリス・パイヌー) インタビュー
Interview With Fabrice Paineau From Double Magazine
今パリのファッション業界人が熱い視線を送る雑誌、『Double (ドゥーブル)』マガジン。まずはじめに断っておくと、米 Condé Nast (コンデナスト) 社のファッション誌『W (ダブル)』マガジンとは別の雑誌だ。ユニークな装丁とビジュアルアプローチで知られる同誌は、編集長 Fabrice Paineau (ファブリス・パイヌー) のもと年2回発刊。これまでアート、ファッション、そしてインテリジェンスに特化した特集を31号に渡り発行してきた。アートディレクションを手がけるのは、Hermès (エルメス) や Marimekko (マリメッコ)、Max Mara (マックス・マーラ) をはじめ著名ブランドのキャンペーンを数多く手がける Carina Frey (カリーナ・フレイ) と Stefanie Barth (ステファニー・バース)、シニアファッションディレクターはイタリア版『Vogue (ヴォーグ)』でもコンサルタントを務める Marie Chaix (マリー・シェクス)、そしてファッションエディターは Chanel (シャネル) のキャンペーンや『WSJ』にてスタイリングを手がける Charlotte Collet (シャーロット・コレット)。ウェブの興隆と共に雑誌の衰退が叫ばれる昨今、フランスから新たに波及するニューウェーブの秘訣に迫ってみよう。
今パリのファッション業界人が熱い視線を送る雑誌、『Double (ドゥーブル)』マガジン。まずはじめに断っておくと、米 Condé Nast (コンデナスト) 社のファッション誌『W (ダブル)』マガジンとは別の雑誌だ。ユニークな装丁とビジュアルアプローチで知られる同誌は、編集長 Fabrice Paineau (ファブリス・パイヌー) のもと年2回発刊。これまでアート、ファッション、そしてインテリジェンスに特化した特集を31号に渡り発行してきた。アートディレクションを手がけるのは、Hermès (エルメス) や Marimekko (マリメッコ)、Max Mara (マックス・マーラ) をはじめ著名ブランドのキャンペーンを数多く手がける Carina Frey (カリーナ・フレイ) と Stefanie Barth (ステファニー・バース)、シニアファッションディレクターはイタリア版『Vogue (ヴォーグ)』でもコンサルタントを務める Marie Chaix (マリー・シェクス)、そしてファッションエディターは Chanel (シャネル) のキャンペーンや『WSJ』にてスタイリングを手がける Charlotte Collet (シャーロット・コレット)。ウェブの興隆と共に雑誌の衰退が叫ばれる昨今、フランスから新たに波及するニューウェーブの秘訣に迫ってみよう。
— まずはじめに簡単に自己紹介をお願いできますか?
編集者、ジャーナリスト、分かりやすく肩書きを挙げるとフランスの『Double (ドゥーブル)』マガジンのクリエイティブ・ディレクター。
— フランスでは今や誰もが注目している『Double』マガジンですが、日本ではあまり聞き馴染みのない人も多いと思います。簡単にどんな雑誌か教えて頂けますか?
もともと僕自身がジャーナリストとして様々な雑誌に寄稿していたこともあって、フランスの有名写真家たちと知り合う機会が多かった。そこで出会ったのがアートディレクターの Carina Frey (カリーナ・フレイ) と Stefanie Barth (ステファニー・バース)。彼女たちと一緒に2009年にフランス発のインデペンデントファッション誌『Double』を創刊し、才能あるアーティストたちのポートフォリオのような雑誌を3ヶ月周期で出そうと決めたんだ。
ロンドンではインデペンデント雑誌が多く存在することで知られているけど、一方でフランスは大手出版社、そしてそこから発行される有名ファッション誌がメインストリームの国。そんな中で誕生した『Double』マガジンは、創刊後すぐに話題となって、有名どころで言えば Juergen Teller (ユルゲン・テラー) とのコラボによるイシューも発表している。あの時の取材のことは今でも覚えているよ。なんてったって遠いハバナの地で彼と12日間を過ごしたんだからね!
We always have to think about what is new and interesting.
— 2010年といえばちょうど世界的に見ても雑誌からデジタルへ移行する変革期でした。その中で積極的に新しいアプローチを取り入れた『Double』マガジンが、どのようにして今の知名度を獲得していったのでしょう?
その通り、『Double』マガジンが誕生した時はすでにファッション雑誌の雛形というものが存在していた。それに対して僕たちがフォーカスしたかったのは、あくまでファッションのフィールドにおいて活躍するアーティストたちの作品。だからレイアウトやタイポグラフィーそれぞれ、いわば「オーダーメイド」のような感覚で一冊ずつ作っているんだ。そのこともあってか、古参の雑誌が重宝されるフランスにおいて、数少ない「今」を体現するメディアとして評価してもらっているよ。
— 信頼のおける伝統と全く新しい才能の邂逅、その精神は「タイムレスとトレンド」という『Double』マガジンのフィロソフィーからも伺えます
その通り。フォトグラファーをはじめ次世代を担うアーティストたちのプラットフォームであるとともに、フランスらしい伝統への敬意も表現したいというのが僕の願いだね。
— 伝統を大切にするというとてもフランス的な考え方を継承していると同時に、『Double』マガジンのクルーはフランスのニューウェーブにも通ずる価値観を見て取ることができます
そうだね、オートクチュールや昔からある雑誌に対する考え方に対し、フランスで今注目を集めるニューウェーブの考え方はどちらかというと “Resistance (反抗)” と言えるんじゃないかな。
– Vetements (ヴェトモン) や Jacquemus (ジャックムス) など、フランスの新たなムーブメントが世界中を賑わしていることについてはどう思われますか?
彼らに共通するのは、フランスの伝統を知った上で、いい意味で固定概念を打ち破っているところだね。それは洋服単体だけにとどまらず、写真をはじめビジュアル表現にも共通している。パリの街並みを背景に撮った写真はいつの時代も美しく感じられるけど、そこに新しさは無い。
– かつて Peter Lindbergh (ピーター・リンドバーグ) がパリの路上でスーパーモデルを撮影した時にはファッションがグラマーでセクシーだったのに対し、その直後に台頭してきたアヴァンギャルドの一派たちによってその固定概念が覆されたことともシンクロしているような気がします
まさにその通り。最近よく “Low-key (ローキー)” という表現が用いられるけど、どこか斜に構えたような低体温なテンションはまさに今のフランスのユースカルチャーを体現しているんじゃないかな。
– 情報過多の時代において、『Double』はどのようなメッセージを伝えたいとお考えでしょう?
まさに現代は情報で埋め尽くされている。その中でいかに「純度の高い」コンテンツを厳選できるかということが僕たちにとって最も難しい課題であり、また同時に最も大切なことだと考えている。あらゆるフィールドにおいて「フランス的」なスタンダードが認知される側で、いかに「ニッチであること」の価値を最大化できるか。これこそが僕たち『Double』のミッションだね。