The Play #1 Anohni’s OBAMA

【The Play】Anohni (アノーニ) のミュージックビデオが問う、アーティストが顔を "出さない"意味

The Play #1 Anohni’s OBAMA
The Play #1 Anohni’s OBAMA
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【The Play】Anohni (アノーニ) のミュージックビデオが問う、アーティストが顔を "出さない"意味

The Play #1 Anohni’s OBAMA

『The Fashion Post (ザ・ファッションポスト)』が独断と偏見でキュレートした「今週観るべき一本」をご紹介する連載企画「The Play」。イギリスの異彩バンドの ”紅一点” であり、ソロのフィーメールアーティストとしても活躍する Anohni (アノーニ) の最新ミュージックビデオに見る、音楽業界のトレンドを探ります。

もはや Netflix (ネットフリックス) がなくともチル出来るんじゃないか?というほど動画コンテンツがますます一般的になる昨今。ファッション界隈も例外なく、ブランドのシーズンキャンペーンからアーティストコラボ、”BTS (Behind The Scene=いわゆるメイキング映像)” などありとあらゆる手法が試され、さながら動画全盛の様相を呈している。

『The Fashion Post (ザ・ファッションポスト)』の新連載『The Play』では、ファッション、ミュージック、アート、カルチャー分野から独断と偏見でピックアップした「今見るべき」動画を週替わりでご紹介。暇を持て余した時、作業に行き詰まった時、インスピレーションが必要な時の息抜きになれば、これ幸い。では今週の一本を、レッツプレイ。

 


Anohni’s OBAMA from Hopelesness

 

イギリスのバンド Antony & the Johnsons (アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ)、改め性転換手術により晴れてフィーメールソロシンガーとなった Anohni (アノーニ)。前身のバンド時代より、幻想的かつミステリアス、そしてコンセプチュアルな音作りと、過激なリリックでコアなファンを獲得してきた “紅一点” は、昨年の5月にはスーパーモデル Naomi Campbell (ナオミ・キャンベル) をモデルに、Givencny (ジバンシィ) の Riccardo Tisci (リカルド・ティッシ) をアートディレクターに起用したミュージックビデオ『Dromp Bomb Me (ドローン・ボム・ミー)』をリリース。最新アルバム『Hopelessness (ホープレスネス)』のドロップに合わせ、7月にはパリで単独ライブを開催し大きな話題を呼んだ。

同アルバムからはこれまでに同名のシングル、『CRISIS (クライシス)』、『MARROW (マーロウ)』、そして最新シングルの『OBAMA (オバマ)』のミュージックビデオを立て続きに公開。そのいずれも、本人ではなく多様な人種や年齢、容姿の一般人のモデルがリップシンクをするという実験的なものだ。

ほぼ顔の露出をすることなく大成功を収めたプロデューサー兼シンガーソングライターの Sia (シア) やともリンクしているように見える、この “アノニマス” かつ “マルチ・ペルソナ” なムーブメント、もとい表現技法。疲弊した音楽シーンを象徴するアンチテーゼなのか、それとも表層的なビジュアル表現に走る商業主義に対する「音楽で勝負したい」という気概の表れか。今後どのように波及していくのか気になるところだ。