新年を迎える前におさらい、ファッション業界の3つの新常識 Vol.3
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新年を迎える前におさらい、ファッション業界の3つの新常識 Vol.3
Year In Review 2016; 10 Most Memorable Fashion Mash Ups
今年もこの台詞を言う時期がやってきた。「ファッション業界にとって激動の一年」。ファッションは常に移り変わるものであり、それはいつの時代も変わらないこと。むしろ激動でない期間が一年あったとすれば、逆に大事件だ。
新年を迎える前におさらい、ファッション業界の3つの新常識 Vol.1
今年もこの台詞を言う時期がやってきた。「ファッション業界にとって激動の一年」。ファッションは常に移り変わるものであり、それはいつの時代も変わらないこと。むしろ激動でない期間が一年あったとすれば、逆に大事件だ。
そんなわけで、今年もファッションにまつわる様々な事柄が世間を賑わせた。特に今年は、これまでファッションの世界で常識とされていたルールが塗り替えられた一年。新年を迎える前に、3つの新常識をおさらいしよう。
『The Man Who Became a Label (ブランドになった男)』という自叙伝を出版し、洋服に留まらず化粧品、生活雑貨、そして建築や不動産に至るまで1000点以上ものライセンス事業で一大帝国を築き上げた Pierre Cardin (ピエール・カルダン) は今のファッション業界を見てどう思うだろう。
今やファッションを洋服単体で成り立つものと考える人は少数派であろう。だからこそファッションブランドは新たな可能性を見出すためにコラボする。その勢いは冷めるどこか加熱する一方で、今年も数々の名コラボがファンを熱狂させた。来年に備える意味でも、今年発表されたコレクションの中でも、特に印象に残るコラボプロジェクトをランキング形式で紹介しよう。
Gucci, an art curator
今年はとにかく Gucci (グッチ) の勢いが目覚しかった。Alessandro Michele (アレッサンドロ・ミケーレ) による新たなディレクションにより飛ぶ鳥を落とす勢いのイタリアンメゾンは、今年の下半期には過去最高となる17.8%もの売り上げの増加を記録し、名実ともに「今最も注目されるブランド」となった。
セールスと同時に、今年1年を通してアーティストコラボを矢継ぎ早に発表した Gucci。中でも4人のアーティストとのコラボにより4つの異なる世界観の “部屋” を3Dとバーチャルを横断して披露した「4 Rooms」は、ファッション × アートのコラボの最前線とも呼ぶべき画期的なアイデアで高い評価を集めた。
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GUCCI GARDEN ROOM©2016 Mr./Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
Chanel Generation
Chanel (シャネル) とセレブリティ、長い年月が作り出した円熟のコラボ
モデル、女優、アーティスト、その他スポットライトを浴びる全ての人たちにとって、「Chanel のアンバサダー」という肩書きは間違いなく最も輝かしい経歴に値する。その歴史は長く、80年代には Inès de la Fressange (イネス・ド・ラ・フレサンジュ) や Carole Bouquet (キャロル・ブーケ)、Vanessa Paradis (ヴァネッサ・パラディス) など数々の名コラボを披露し、「ラグジュアリーブランドの隣にセレブリティあり」という新常識を作り出した。
そして今年に入ってから、新たに Chanel の顔に選ばれたのが、Vanessa Paradis の娘 Lilly-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ)、Willow Smith (ウィロー・スミス)、Inès de la Fressange の娘 Violette d’Urso (ヴィオレット ドゥルソ)、そして Bob Dylan (ボブ・ディラン) の孫でありメンズモデルの Levi Dylan (レヴィ ディラン)。メゾンの伝統を忠実に守り、それと同時に次世代を大胆に切り開く Chanel のスピリットは、アンバサダーというコラボを通して常に新鮮な驚きとともに継承されていく。
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「N°5 ロー」のキャンペーンに登場した Lilly-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ)。撮影は Karim Sadli (カリム・サドリ) が手がけた。| © Chanel
Luxury Goes Street
Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン) が打ち出した「ラグジュアリーストリート」の最前線
世界で最も名の通るラグジュアリーブランドと東京のストリートシーンの “ドン” のコラボに驚きを覚えた人も多いことだろう。Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン) と藤原ヒロシによる fragment design (フラグメント・デザイン) のコラボコレクションは、予想通り即日完売を記録。次作も控えているという噂もあり、ファンは1秒たりともニュースから目を離せないことだろう。
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Louis Vuitton と fragment design のコラボによる店舗ディスプレイ | © Louis Vuitton
Sex Sells, And Shayne Oliver Knows It All
Hood By Air. (フッド・バイ・エアー) とポルノサイトの衝撃のコラボ
NY きってのアヴァンギャルドデザイナーであり奇人、Shayne Oliver (シェーン・オリヴァー) による Hood By Air. (フッド・バイ・エアー)。9月に発表された2017年春夏コレクションで披露したのは、前代未聞ポルノサイト『Pornhub (ポルノハブ)』とのコラボ。アイコニックなオレンジのボックスロゴをあしらった T シャツに加え、ランウェイショーでは生々しい “行為中” の音声が流された。ヘアメイクのインスピレーションは「子供がふざけてワセリンで遊んだようなイメージ」。もう一度言うが、これはワセリンをイメージしたもの、だ。
Rihanna Domination Continues
ファッション業界の頂点を極めた Rihanna (リアーナ) 列伝
泣く子も黙るポップクイーン Rihanna (リアーナ) は今年も絶好調。Manolo Blahnik (マノロ・ブラニク) とのコラボで40万円もするクチュールシューズを発表したかと思えば、Puma (プーマ) とのコラボコレクション「Fenty × Puma (フェンティー × プーマ)」では目覚ましいセールスを記録し、また Dior (ディオール) では『スタートレック』を彷彿とさせる近未来的なサングラスを製作。もはや全身 Rihanna コラボで固められそうなほど多岐にわたる彼女の役進撃は、2017年も続くだろうか。
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パリ ファッションウィーク期間中の9月28日に発表された Fenty by Puma の2017年春夏コレクション | © Puma
Timeless Icon In The Form Of Art
言わずと知れた Dior (ディオール) の不朽の名作「Lady Dior (レディ・ディオール)」が誕生してから20年余。これまでに数え切れないほどのバリエーションで登場してきたアイコンバッグは、今年新たなフェーズを迎えた。2012年に披露されたアーティストコラボプロジェクト「LADY DIOR AS SEEN BY」に続くプロジェクト、その名も「DIOR LADY ART」。現代アーティストたちによる多様な解釈の作品は、時代を超えて愛され続けるメゾンの “顔” の新境地を開拓した。
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(左から) Mat Colishow (マット・コリショー)、Jason Martin (ジェイソン・マーティン) とのコラボによる「レディ ディオール」。いずれも英国人作家。| © Dior
Family Affair And Renaissance
Fendi (フェンディ) 一族4代目の Delfina Delettrez (デルフィナ・デレトレズ) の凱旋コラボ
Fendi (フェンディ) の創業一家の4代目にあたる Delfina Delettrez Fendi (デルフィナ・デレトレズ・フェンディ)。既にジュエリーデザイナーとして自身のブランドを成功させている彼女と、Fendi (フェンディ) による初のコラボが今年発表された。ブランド初となるハイジュエリーウォッチ「Policromia (ポリクロミア)」では、Delfina が得意とする意外性のある素材使い、そして Fendi が継承してきたモダンラグジュアリーが見事にマリアージュを遂げている。
No More Borders
『W (ダブル)』マガジンと『i-D (アイディー)』、出版社の枠を超えた異種混合戦
毎年話題に上がる「セプテンバー・イシュー (秋冬コレクションがローンチする9月号)」だが、今年最も驚きを与えてくれたカバーは『W (ダブル)』マガジンで異論は無いはずだ。アートディレクターは『i-D (アイディー)』マガジンの創設者 Terry Jones (テリー・ジョーンズ)。出版社の垣根を超えた「クロス・メディア」のコラボは、2017年どのように出版業界に波及していくのか、注目が集まる。
Vetements Revolutionary
飛ぶ鳥を落とす勢いのイット・ブランドが見せつけた驚愕のコラボ合戦
今年発表された数々のコラボの中でも、話題性で Vetements (ヴェトモン) に敵う例は無いだろう。7月にパリ オートクチュール ファッションウィーク期間中に発表された2017年春夏コレクションでは、Levi’s (リーバイス) や Juicy Couture (ジューシー・クチュール)、Manolo Blahnik (マノロ・ブラニク)、COMME des GARÇONS (コムデギャルソン)、Brioni (ブリオーニ) など全く異なるジャンルの18のブランドが一斉に参加。人気ブランドだからこそ実現出来た “力技” は、コラボに慣れてしまったファッション関係者の目にも新鮮に映ったに違い無い。ちなみにコラボブランドの数は18と報道されていることが多いが、Vetements のグローバル PR である Ritual Project (リーチュアル・プロジェクト) によるとそのうち1ブランドはサンプルが間に合わなかったため実質17ブランドだったという。正直17ブランドでも18ブランドでも、数が多いことには変わり無いが。
新年を迎える前におさらい、ファッション業界の3つの新常識。第1弾の「デザイナー交代編」、第2弾「変化し続けるファッションウィークのスケジュール」も是非ご覧下さい。