Sébastien Meunier
Sébastien Meunier

Ann Demeulemeester (アン ドゥムル メステール) デザイナー Sébastien Meunier (セバスチャン・ムニエ) インタビュー

Sébastien Meunier

Photographer: UTSUMI
Writer: Nozomu Miura

Portraits/

“カルト的”な人気を誇るブランド Ann Demeulemeester (アン ドゥムル メステール) を受け継いだ アーティスティック・ディレクターの Sébastien Meunier (セバスチャン・ムニエ) をインタビュー。権威あるブランドの二代目デザイナーとして、また彼個人として、どんな思想を元に服を生み出しているのかに迫った。

Ann Demeulemeester (アン ドゥムル メステール) デザイナー Sébastien Meunier (セバスチャン・ムニエ) インタビュー

2013年冬、一人の世界的ファッションデザイナーが自身のブランドを辞任した。その名は、アン・ドゥムルメステール。ある種”カルト的”とも言えるほどの大きな支持を集めた彼女のデザインは、ダークで、ムーディーで、それでいてジェンダーレスな雰囲気を持っていた。そんなアン・ドゥムルメステールの偉大なブランドを継いだのが、アーティスティック・ディレクターのセバスチャン・ムニエ。パリのエスモードでファッションを学んだ彼は、卒業後、自身のブランドを立ち上げ、Maison Martin Margiela (メゾン マルタン マルジェラ) で経験を積んだのち、アン ドゥムルメステールのデザインチームに入った。そして、アン・ドゥムルメステールによる絶大な信頼から、2014年春夏シーズンよりブランドのアーティスティック・ディレクターに就任。そんな彼が、権威あるブランドの二代目デザイナーとして、また彼個人として、どんな思想を元に服を生み出しているのかに迫った。

—今回来日されて、もっとも印象に残っていることはありますか?

1999年に初めて来日して以来、日本には何度も来ていますが、やはり東京の街並みにはいつも感動します。無限大な可能性を感じますね。神戸、大阪など他の都市にも出向いたことがありますが、特に東京の雰囲気には感銘を受けます。

—日本の街並みや雰囲気からインスピレーションを受けることはありますか?

もちろんあります。日本に来る時には、ビンテージショップやギャラリーなどに出向くことが多いですが、それらから受けるインスピレーションも多くあります。また、コレクションには、日本の伝統的なアートや日本特有のものから得たインスピレーションを反映することも多いです。たとえば、桜をプリントした洋服を作ったことも。「常に」と言っても良いほど、日本の文化やアートからは大きな影響を受けています。

—普段のデザインには、どのようなものからインスピレーションを受けますか?

ブランドのDNAとリンクしているアーティストからインスピレーションを受け、洋服に反映させることが多いです。今回、2018年春夏のメンズコレクションにおいて参考にした写真家のRobert Mapplethorpe (ロバート・メイプルソープ)、ウィメンズコレクションにおけるインスピレーション源である Patti Smith (パティ・スミス) は、それぞれ個人的にも興味・関心が深く、彼らの思想や作品などといった言わば“DNA”とも呼べるものをコレクションに反映させました。

—アン ドゥムルメステールはしばしば“中性的”というイメージを持たれることが多いですが、それについてはどう考えていますか?

「男性/女性」の垣根が無くなりつつある現代において、ブランドの思想的根源である、「フェミニンな男性像」、「力強くタフな女性像」というのは強く意識しています。それは、アン・ドゥムルメステールの表現においては、たとえばメンズコレクションには、より女性らしいモチーフやシェイプを取り入れたり、ウィメンズコレクションには、力強さを感じるボーイッシュなモチーフを取り入れたり、ということでした。一方私は、人間が持つ“セクシャリティ”をあえて押し出すことで、「男性/女性」の境界線を曖昧にするような洋服づくりを心がけています。

—世界的にもっとも大きなトピックとして考えられる、LGBTQといった「性差」について、ブランドとしてはどう解決できると思いますか?

あくまでこれは私の個人的意見ですが、その問題を直接的に解決しようとは思いません。ただ、どんな人であっても、「自由」や「自分らしさ」、「ありのままの姿」を許し、認め、受け入れられるべきだと思います。そして、僕が作る服は、そういった考えに寄り添うような表現を意識しています。男っぽい女性であろうが、女性らしい男性であろうが、すべての人が自由でいられるような服を作りたいと思っています。ファッションにおいて一番大切なのは、その人がその人らしくいられること。自由でいられること。自分の好きな服を好きなように着て、ありのままの姿で楽しめること。それは昨今のLGBTQといったトピックにも通ずるところがあると思います。

—最後に、この世の中にメッセージをお願いします。
ファンがいてくださるのはすごく嬉しいことです。これからも、ありのままで、自由に、ファッションを楽しんでください。アン・ドゥムルメステールが、その手助けになれば、それは幸せなことです。

<プロフィール>
Sebastien Meunier (セバスチャン・ムニエ)
フランス出身のデザイナー。1974年、ヴェリジー=ヴィラクブレー生まれ。1999年に自身の名を冠したレーベルを設立。2000年に MM6 とメゾン マルタン マルジェラ ウィメンズコレクションのヘッドデザイナーに就任し、ベルギーで自身のクリエイションを磨く。2005年よりメゾン マルタン マルジェラ メンズコレクションである 10 と 14 のヘッドデザイナーを務め、「マルタン・マル ジェラの右腕」の地位を確立するまでに至る。2010 年からはメンズコレクションのヘッドデザイナーとしてアン・ドゥムルメステールに参画。その後、アン・ドゥムル メステールから絶大な信頼を置かれ、 2013 年にアン・ドゥムルメステールのアーティスティック・ディレクターに就任した。