daikanyama tsutaya books' concierges recommend 8 art books

代官山 蔦屋書店コンシェルジュがおすすめする、この秋に読みたいアートブック8選

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代官山 蔦屋書店コンシェルジュがおすすめする、この秋に読みたいアートブック8選

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text: kana sakanishi (daikanyama tsutaya books art concierge)

あたりに響く心地よい虫の音に、秋の訪れを感じる9月。今回、代官山 蔦屋書店コンシェルジュがピックアップしたのは、芸術の秋にぴったりのアートブック8冊。アーティストの世界観が詰まったアートブックは、リアルな本だからこそ伝わる魅力と創造性にあふれている。内容で選ぶもよし、装丁で選ぶもよし。自由な選び方ができるのはアートブックならでは。ぜひこの機会に、代官山 蔦屋書店でお気にいりの一冊を見つけてみて。

01. RO-SÉ: A Book as a Bridge

イタリアを拠点として活動するフランス人アーティスト Nathalie du Pasquier (ナタリー・ドゥ・パスキエ) の作品集。1981年より、建築家の Ettore Sottsass (エットレ・ソットサス) が中心となり、ミラノで結成されたデザイン集団「メンフィス」の創設メンバーとして活動。多くの家具やオブジェ、カーペットなどのデザインを手がけている。現在は、絵画作品を制作し、世界中での個展開催や HAY (ヘイ)、American Apparel (アメリカンアパレル) などとのコラボレーションも行う。本書は、ローマ現代アート美術館 (MACRO) で開催された個展を機に出版され、身近な工具や果物などを描いた静物画や、建造物を思わせる抽象画に加え、展示風景も同時収録。柔らかな配色に幾何学的な図形、ラインや波線が多用された彼女らしい作品集であり、80年代の装飾的なデザインが楽しめる。

02. Reza Shafahi, the Diary of a Gambler

イラン・テヘランを拠点に活動するアーティスト Reza Shafahi (レザ・シャファヒ) による作品集。プロレスラー引退後、72歳の時にアーティストとしてキャリアをスタートさせたという、ユニークな経歴の持ち主。きっかけは、彼が患っていたギャンブル依存症から抜け出すため、自身の息子でありアーティスト仲間でもある Mamali Shafahi (ママリ・シャファヒ) にデッサン教室を勧められたことからである。本書では、彼の初期から今までの作品が収集されており、その芸術活動の全容を紹介。彼の描くスタイルは花や動物、女性の姿がほとんどで、大胆な線と自由で鮮やかな色彩は、力強い自立した女性を連想させる。出版はインテリア雑誌の Apartamento (アパルタメント)。

03. WINDOW SHOPPING

ニューヨークとロサンゼルスで、アーティスト、ファッションイラストレーターとして活動する Kelly Beeman (ケリー・ビーマン) による作品集。彼女のインスピレーション源は、ファッションのルックブックやキャットウォークを歩くシーン。刺繍のブルゾンや、ベルボトム、レースドレス、シルバーのイヤリングなど、遊び心に満ちたスタイルが彼女に刺激を与えるのだとか。とはいえ、単なるファッションイラストレーションの域に留まるのではなく、その領域を遥かに越えた意義ある世界観をも作り出す。独学で学んだ社会学を通じて、文化とファッションとの間に生じる関係性、あらゆる社会における根本的な側面から人物像、物語、文化的背景を作りだし、アーティスト、ファッションイラストレーターとして自身を見つめている。そんな彼女のスタイルを楽しむことができる一冊。

04. DISTANCES

フランス人フォトグラファー Romain Laprade (ロマン・ラプラード) の写真集。
『Vogue Paris (ヴォーグ パリ)』や『Holiday (ホリデー)』などの雑誌でグラフィックデザイナーを務めたのち、写真家へと転向。Aēsop (イソップ) や Rimowa (リモワ)、MR PORTER (ミスターポーター)、Hermes (エルメス)、Isabel Marant (イザベル マラン) など、多くのブランドとのコラボレーションを手がける。本書はモダニズム建築を被写体にしたものであり、心を落ち着かせるような細かな描写やミニマルな構成が特徴。彼がとらえる光は、直近の5年間で多くの写真を撮ることで得たものであり、詩的かつ絶妙な絵を作り出している。彼の美的感覚は見るものを魅了する。

05. The Fendi Set

FENDI (フェンディ) のアーティスティック・ディレクター Kim Jones (キム・ジョーンズ) が、初めて手掛けた2021年春夏クチュールコレクションを記念して発行された。本書はコレクションのインスピレーション源となった、Virginia Woolf (ヴァージニア・ウルフ) の小説『オーランドー』からKim Jones の創造性を紐解く。女優 Tilda Swinton (ティルダ・スウィントン) による序文、Kim Jones による前書きに加え、パリで開催された2021年春夏クチュールコレクションも収録されている。彼の世界観が詰まった、クリエイティビティにあふれた魅惑的な一冊。

 

06. As If

オランダ出身のアーティスト Uta Eisenreich (ウタ・アイゼンライヒ) による作品集で、2010年に出版された『A NOT B』の続編。彼女は、普段の生活にありふれたものをディスプレイすることによって、論理、言語、意味に対する独特の遊びを作り出す。質素なオブジェが、それ自体が意味を持つ抽象的な形へと変化し、欲望や不吉な未来の前兆を感じさせる。広告のような単色の背景とライティングによって、決して隣り合わないオブジェ同士が放つ独特の関係性に引き込まれるような感覚を覚える作品集。彼女は作品を通して、日常生活に疑問を投げかけているのだ。

07. Casually Sauntering the Perimeter of Now

デザイナー、アーティストとして活動する Misha Kahn (ミーシャ・カーン) の作品集。アッサンブラージュで知られる彼の作品は、家具や照明に水中のモザイク彫刻やゴミなどを取り入れたデザインが特徴。アーティストでもデザイナーでもなく、枠にはまらず常に新しい素材や技術的な挑戦を続け特異な発想や美学を持つ彼は、同世代のクリエイターにおいて先駆的存在でもある。本書は、Dries Van Noten (ドリス・ヴァン・ノッテン)、Todd Oldham (トッド・オールダム)、Su Wu (スー・ウー) といったクリエイティブ業界の著名人達との対談も収録された、読み応えのある一冊。

 

08. À MON SEUL DÉSIR

日本でも絶大な支持を得る、ロンドンを拠点とするファッションブランド Kiko Kostadinov (キコ・コスタディノフ) による写真集。パリ・ファッションウィークで発表された、2022年春夏ウィメンズコレクションの制作過程を追った一冊。今回のコレクションを手がけた、Deanna Fanning (ディアナ・ファニング) とLaura Fanning (ローラ・ファニング) にフォーカスし、ショーの様子や裏側を収録している。写真を手がけたのは、日本人アーティスト E-WAX (イーワックス)。目を惹く深紅のハードカバーは、新進気鋭のアートディレクター Daniel Sansavini (ダニエル・サンサヴィーニ) のデザインによるもの。記念すべき初のウィメンズコレクションの発表に伴い、500部限定で出版された。