6月の TFP 的おすすめ本
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6月の TFP 的おすすめ本
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「本は時代を映す鏡」とも言われている。さまざまなメディアから情報を得やすくなった昨今、紙をめくりながら文化に触れる味わいを体感してほしい。そんな思いから、代官山 蔦屋書店、Hi Bridge Books、flotsam books が “今” 読んでほしい本を独自の視点でピックアップ。今月は、写真集やファッション、アート系のビジュアルブックを中心に、エッジの効いたセレクト手がける flotsam books から4冊ご紹介。
We Will Return to You
ユダヤ系アメリカ人アーティスト Hannah Altman (ハンナ・アルトマン) の写真集。彼女のことは最初の写真集『Kavana』で知っていたのですが、300部というとても少ない刊行部数だったこともあり、僕が知ったときにはすでに入手困難に。作品を見てみたいなあと思っていたら、最近この本が出版されました。ユダヤ教のテキストやイディッシュ文学を参照しながら、ユダヤの思想、民間伝承、メタファーや象徴性を写真を通して翻訳し、新たな世界を呼び起こしている、とても美しい写真集です。
TRUST IN GOD: BELIEVE IN AMMUNITION
オランダを拠点に活動する編集者 Pouria Khojastehpay (プーリア・コジャステハペイ) による出版レーベル「550BC」の最新作『Trust in God, Believe in Ammunition (神を信じ、弾薬を信じよ)』。本書は、現代戦争を赤裸々に記録したヴィジュアル・アーカイブです。Pouria による写真集が常にそうであるように、作り手に企画と編集の面白さ、そして重要性を静かに突きつけているのです。誰が撮影したかということも、写真集においては大切なことかもしれないですが、それ以上に、ある一つの意図をもって写真を集め、並べることで、世界を再構成し、新たな視座を提示することの意義がわかると思います。
BAXT【2nd edition】
アメリカ・シアトル出身で、ここ15年間はリトアニアを拠点に活動する写真家 Andrew Miksys (アンドリュー・ミクシス) による写真集。2007年に初版が出版され、長らく入手困難になっていた写真集の2nd editionとしてリリースされました。本書では、リトアニアの「ロマ」、英語圏では「ジプシー」として知られる人々を撮影しています。タイトルの「BAXT」は、ロマ語で「運命」「宿命」「幸運」を意味する言葉であり、写真集では、ロマの人々の家族の温かさや伝統の豊かさ、困難な状況の中にも確かに存在する「BAXT」を体現しています。なんかいい話だなあって思ったのは、Miksys は撮影した写真を彼らに渡したり、写真集が完成したときには彼らにプレゼントをしていたらしく。後に彼らの元を訪ねたら、その写真が額装されていたり、写真集のページが切り取られて飾られていたそうなんです。深い信頼と絆が垣間見えるエピソードで素敵だなと思いました。
【2nd edition】COLLECTED OBBSESSION!
Ryan Bannahan (ライアン・バナハン) のアメリカのハードコア T シャツのコレクション約400点をまとめた作品集。最近は、こういうアーカイブ的な作品集ってけっこうあって。「全部集めてみました」みたいなのもいいのですが、やっぱり個人が集めたものが偏りがあって一番面白いと思います。単にバンド T シャツを網羅した辞典的なものではなく、Ryan Bannahan 自身の歴史、その音楽への愛着が垣間見えますよね。「このバンドのことが本当に好きで買っているんだな」とか「このバンドの T シャツは持っていないんだ」といった小さな発見も楽しみ方の一つ。コレクションの面白さってコンプリートされていることじゃなくて「歪さ」だと思います。T シャツをそのまま物撮りして載せるだけではなく、プリント部分だけクローズアップして1ページ丸々使っている構成も秀逸です。