Interview With Shinnosuke Mitsushima

PORTRAITS | Sep 1, 2017 9:00 PM
是枝裕和が脚本と監督を手がけた新作映画『三度目の殺人』にて、福山雅治演じる主人公・重盛の元で働く若手弁護士・川島の役を演じた満島真之介にインタビューを行った。
Photo by UTSUMI

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是枝裕和が脚本と監督を手がけた新作映画『三度目の殺人』は、接見室や弁護士事務所、法廷など限定されたシーンで構成されており、殺人という強いサスペンスの要素はあるものの、ある意味で会話劇ともいえる映画。かつて働いていた工場の社長を殺害した罪で立件された三隅 (役所広司)、彼の弁護を託されたのは、法廷戦術を知り尽くした有能弁護士の重盛 (福山雅治)。今まで「裁判に勝ちさえすれば、真実なんて知る必要はない」というポリシーを貫いてきた重盛だが、三隅の揺れる供述に翻弄されるがあまり、映画終盤にかけてついに “真実” に手を伸ばそうとする。30年前にも殺人の前科がある三隅は、いったい誰のために、何のために殺人を犯したのか。

被害者の妻・美津江 (斉藤由貴) や、娘・咲江 (広瀬すず) の複雑な感情も絡み合うこの事件の輪郭が少しずつ明らかになる過程で、観客はしかし、真実が指の間をすり抜け、空中を浮遊し、やがて見えなくなってしまうような感覚に陥る。以下は、根本的な事実を揺さぶるこの映画の見方について、重盛の元で働く若手弁護士・川島の役を演じた満島真之介に訊くインタビュー。普遍的で日常的な問題こそが本作品の本質的なテーマであると、彼は語った。

—今回の映画、私は「いかにもそれっぽく見える話が、実は本当とは異なるかもしれない」という既存の歴史や事実に対する根本的な疑問を呈する映画だと捉えたのですが、満島さんはどう解釈しましたか?

僕は、事件や犯人がどうこうではなく、人と人がわかり合うことはとても難しいけれど、そこ (相互理解) へ向かうことが大切なんだ、ということを伝えている映画だと思うんです。ちゃんと人と対峙することで、噂で聞いていたような事前情報が嘘か本当かがわかる。目を見つめるだけでわかることってあるじゃないですか。だから、この映画のように、難しくても対峙しないといけない気がするんです。「色々あるから」とか、形にならない言葉がはびこっているけれど、いま目の前にあることこそが真実じゃないかと。

—本作品の重要なテーマは、殺人事件や裁判というトピックにあるのではなく、そこで交わされる一つ一つの会話によって浮き彫りになるもの、ということですか?

死刑制度の是非などのトピックも含まれているにせよ、この映画でのことは誰の人生にも起こり得ること。「自分の親や一緒に働いている人のことがわからないというけれど、そもそもちゃんと対峙した?」ということを問いかけている映画だと思う。自分のことすらわからないのに人のことをわかろうとする図々しさ。人のことを裁く、裁くまでいかなくとも “判断” する滑稽さ。重盛が三隅に「お前はどういう人間なんだ」と突きつけるシーンで、それらが浮き彫りになっているような気がします。喜怒哀楽だけじゃ表現できない人間の性みたいなものです。

—満島さんの実生活の中でもそういうコミュニケーション障害みたいなことが起きて、今回の映画のテーマと自然にリンクしたということはありますか?

日々感じます。だからこそ、自分は素直でいることが大切。今の自分をさらけ出していくしかない。嘘ついたり背伸びしたりすると、体は正直だから、痛みでもって教えてくれる。でも、現代はそれにすら気づかないようになっている。先に何があるかわからない事を恐れず、霧の中の光を見つけるような、前に進む勇気が必要だと思いますよ。人と対峙する時にも、相手を感じ、触れあい、誠実に向き合う事だけは忘れずにいたいです。

 

『三度目の殺人』

—演ずることだって、嘘で真実に近づくことだとも言えますよね。

だからこそ、人に希望も絶望も与えられる。この映画でも監督は「僕たちは真実を描いているのか」という疑問を観客に提示している。「作りものが、人生を変えるほど心に響いていることってあるでしょう?」っていう。映画自体は嘘なわけですから。是枝さんも意地悪なんです (笑)。

—満島さん自身がフィクションの物語から大きく影響を受けることは?

それも日々あります。海や山をずっと眺めている人は東京にはほとんどいないはずです。田舎にいる人のほうが感受性は豊かかもしれない。変わり続ける天気、動き続ける波、毎日ミリ単位で伸び続ける草木を見ているから。僕もそういう環境 (出身は沖縄) で育ってきたので、今でも東京にいると息苦しくなるんです。人間は自然が生み出したものだから変わり続けるけど、人間が生み出したものは人間が手を加えない限り変わることはない。そんな中でも、自分自身は昨日と今日で確実に違うから、そこに向き合い続けないと人工物のパワーに飲まれてしまう。役との出会いで今の感覚を確認したり、自分に戻ってこられる。今の “自分” そのものが真実なのかもしれない……真実は変わり続ける。そんな終わりのない旅に出ちゃうんです。

—満島さんはそんな変わり続ける人間と対峙することに楽しみを見出している?

軽い楽しさだけじゃないですけどね。自分と違う細胞に触れ合うわけですから。でも、痛い目をくらおうが何だろうが、モノよりも人間のほうが面白い。

—そういうスタンスだから、まわりからポジティブだと言われるんじゃないですか?

僕のコミュニケーション方法がポジティブかどうかはわからないですよ。これが普通じゃないですか。

Photo by UTSUMI

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—本作品の話の中で、川島はどこか全体を俯瞰しているイメージがあります。大人の事情にまみれた世界で、唯一素直な疑問をどんどん吐いていく。実際に演じられた満島さんご自身の意図を教えてください。

僕の普段のキャラクターがどうこうではなく、この役は若者たちがこうあってほしいという理想像のつもりなんです。僕が若者の代表としてあそこに立っている。ああいう大人たちの怠慢とか自分勝手な考えとか、そこらへんにはびこっているし、自分がそうなる可能性もある。だから、若いうちはわからないことに間髪なく疑問をぶつけることが大切で、川島はその役割を背負っているんですよ。で、若者がハッとする質問をした時に、大人がそれについてじっくり考えてみる、そういう関係性が日常的にあってほしいなと。

—川島が話し始めると、映画全体がシリアスなトーンに覆われそうになったところで、風穴があくような印象がありました。

今回の役を演じることが、僕のこれまでの生き方が間違ってなかったなっていう自信にも繋がりました。100年前の映画を観ても僕たちが何かを感じられるのは、そこでその人がちゃんと生きていたから、なんです。その場しのぎがたくさんある中で、映画は役者たちにその時ごとの真実を吐露させてくれる役割を持っている。おれが若者に「立ち上がれ」なんて言ったって、「お前が言うな」ってなるだけだけど、川島という役を通して言えば届くかもしれない。そして、それは台詞であろうと僕の心の底から出た言葉なんです。

—福山さんや役所さんなど、まわりの演者さんとの接し方において、自分に課したルールはありましたか?

最初に会った時の挨拶、朝の挨拶は全力でする。赤ちゃんからおばあさんまで、全世界共通、変えない。そこからすべてが始まるんです。それと、他の人が気を使って質問しないようなことを僕はぜんぶ聞きます。だからこそ、言葉を交わしていないシーンでもその関係性が映るんだと思います。

—まだまだインタビューを続けたいのですが、そろそろ時間切れです。

もっともっと話したいですね。いつも時間が足りない…。今日はどうもありがとうございました。

Photo by UTSUMI | ジャケット ¥68,000、シャツ ¥36,000、パンツ ¥38,000、タイ ¥13,000 以上全て MAISON KITSUNÉ

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<プロフィール>
満島真之介 (みつしま しんのすけ)
1989年5月30日生まれ。沖縄県出身。2010年、舞台「おそるべき親たち」で俳優デビュー。2012年には NHK 連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で注目を浴び、翌年、『風俗行ったら人生変わったwww』(2013)で映画初主演を果たす。近作は『オーバー・フェンス』(2016) 、『無限の住人』(2017) 、『忍びの国』(2017)など。2017年夏には、『STAR SAND ー星砂物語ー』が公開を控える。

作品情報
タイトル 三度目の殺人
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
製作 小川晋一、原田智明、依田巽
出演 福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子
配給 東宝、ギャガ
製作国 日本
製作年 2017年
上映時間 124分
HP gaga.ne.jp/sandome
©︎ 2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ
9月9日(土) 全国ロードショー

 

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