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ポストロックバンド Mogwai (モグワイ) インタビュー

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ポストロックを象徴するバンドとして、根強いファンベースを持つグラスゴー出身の4人組、Mogwai (モグワイ)。今回は、メンバーの Stuart Braithwaite (スチュアート・ブレイスウェイト) と、Dominic Aitchison (ドミニク・アイチソン) の2人が、新作のビハインドストーリーはもちろん、ヒップホップや Mogwai 流のソング・タイトルの付け方、世界一ラウドなバンドについて、そして Trent Reznor (トレント・レズナー) との仕事に至るまでを語ってくれた。

ポストロックバンド Mogwai (モグワイ) インタビュー

ポストロックを象徴するバンドとして、あるいは世界でもトップクラスの轟音を鳴らすバンドとして、ここ日本でも根強いファンベースを持つスコットランド・グラスゴー出身の4人組、Mogwai (モグワイ)。2015年にオリジナル・メンバーのジョン・カミングスが脱退するという憂き目に遭いつつも、この度3年ぶりに届けられた通算9作目のアルバム『Every Country’s Sun』では、「原点回帰」と言えるほどラウドなギター・サウンドが全編で鳴り響いており、初期からのファンも大満足の仕上がりだ。8月の HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER (ホステス・クラブ・オールナイター) にヘッドライナーとして出演した Mogwai だが、その夜のライヴがここ数年の来日公演でもっとも音がデカく殺傷力が高かったことからも、20年選手としての彼らのプライドが窺い知れる。

今回は、ギターと時にヴォーカルを努める Stuart Braithwaite (スチュアート・ブレイスウェイト) と、ベーシストの Dominic Aitchison (ドミニク・アイチソン) をキャッチ。ボーダーTシャツにキャップ姿ですっかり垢抜けた Stuart のシティ・ボーイっぷりには驚いたが、新作のビハインドストーリーはもちろん、ヒップホップや Mogwai 流のソング・タイトルの付け方、世界一ラウドなバンドについて、そして憧れの Trent Reznor (トレント・レズナー:Nine Inch Nails (ナイン・インチ・ネイルズ) のリーダー) との仕事に至るまで、リラックスした表情で語ってくれた。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

—まず、HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER のステージ、最高でした。ここ数年の来日公演でもっとも音がデカかった気がするのですが、今の Mogwai は再びラウドなフェーズに入ったということでしょうか?

Dominic Aitchison (以下、Dominic):俺たちにとっては、至っていつも通りのライヴだったんだけどね (笑)。ただ、音響を担当するスタッフが前回までのツアーと違う奴だったんだけど、終演後に彼とバーで話していたら、俺たちの初期のライヴを何本も見ていたらしいんだ。言われてみれば当時はめちゃくちゃデカい音でライヴをやっていたし、その頃の印象が強く残っていたのかもしれないな。彼いわく、会場の椅子が勝手に動くくらいの爆音だったらしいから (笑)。

—正直、毛穴が震えるような体験でした (笑)。

Stuart Braithwaite (以下、Stuart):僕も観客側に立って味わいたかったよ (笑)。

—初期といえば、新作では3rdアルバムのRock Action』(2001) 以来16年ぶりに Dave Fridmann (デイヴ・フリッドマン) とタッグを組んでいますが、そういうのも一周回った感じで面白いですよね。

Stuart:Dave もまた、世界一ラウドな音を鳴らすバンド (Mercury Rev (マーキュリー・レヴ)) の一員だからね!
Dominic:彼のベースもありえないくらい爆音だったよな。
Stuart:僕たちも “原点回帰” というよりは、22年間ずっと爆音でやってきただけだからなあ (笑)。「アコースティック・アルバムを作ろう」っていう誘惑から常に抗ってきたのは確かだよ。

Hostess Club All Nighter 2017 Mogwai Photo by Tadamasa Iguchi

Hostess Club All Nighter 2017 Mogwai Photo by Tadamasa Iguchi

—バンドと Dave の間では、何らかのテーマやルールを決めて作業に取り組んでいたのでしょうか?

Stuart:そういうのは特に無かったと思う。お互い純粋に良いアルバムを作りたいって気持ちがあったし、Dave もそれを念頭に置いて作業してるはずだからね。16年ぶりっていうのも言われてみれば……って感じだったし、スタジオに入ってからはすごく自然なカタチで制作ができたんだ。
Dominic:Dave みたいに何でも分かっている人に、「こういう音でお願いします」って伝えるのなんて野暮だからね。彼とだったらきっと最高の作品ができるって信じていたから、基本的にはおまかせだったよ。

—アメリカでのレコーディングというのも久々だったと思われますが、あなたたちにとってアメリカは居心地のいい場所なんでしょうか?

Dominic:Dave のスタジオ (Tarbox Road Studios) は人里離れた山奥にあるんだけど、そういう意味ではすごくリラックスできるし、レコーディングに集中できる環境だから気に入ってる。ただ、時期としてはちょうどトランプ政権が発足した頃と重なるから、周りのアメリカ人たちが動揺しているのは伝わってきたし、ちょっと不思議な感覚だったね。ただ、アメリカという国そのものは悪い面よりも良い面の方が多いし、いつ行っても楽しいのは間違いないな。

—Stuart さんは、サイド・プロジェクトの Minor Victories (マイナー・ビクトリーズ) での活動も良い刺激になったのでは? その後、Rachel Goswell (レイチェル・ゴスウェル) も Slowdive (スロウダイヴ) として素晴らしい新作をリリースしましたし……。

Stuart:僕だけじゃなく、Dominic もソロで Crippled Black Phoenix とかとコラボしていたし、Minor Victories では Martin Bulloch (マーティン・ブロック) もライヴに参加してくれていたんだ。あと、Barry Burns (バリー・バーンズ) も 「SUMS」っていうプロジェクトを初めたんだけど、絶対にインタビューは受けないみたい (笑)。だから、4人それぞれが Mogwai 以外の活動で得たフィードバックがあるとは思うね。具体的なところでは、Minor Victories のアルバムにBPMの速い楽曲がほとんど無かったから、『Every Country’s Sun』ではその反動が表れているのかもしれない。

Hostess Club All Nighter 2017 Mogwai Photo by Tadamasa Iguchi

Hostess Club All Nighter 2017 Mogwai Photo by Tadamasa Iguchi

—「Party in the Dark」はアップリフティングなヴォーカル・トラックです。『レ・ルヴナン』(Mogwai が楽曲提供したドラマのサントラ) に収録された「What Are They Doing In Heaven Today?」も印象的でしたけど、Stuart さんの歌声ってすごく透き通っていてキレイですよね。

Stuart:ハハハ、サンクス!

—Dominic さんから見て、「シンガー」としての Stuart さんをどう評価されますか?

Dominic:いや、上手いと思うよ (笑)。このバンドで歌うなら彼以外にいないと思うしね!

—ちなみに、もっとも尊敬しているシンガーって誰ですか。

Stuart:そうだな……Iggy Pop (イギー・ポップ)、Ian Curtis (イアン・カーティス)、Patti Smith (パティ・スミス)、Leonard Cohen (レナード・コーエン)、あとは Chuck D (チャック・D :Public Enemy (パブリック・エネミー) のメンバー) に、もちろん David Bowie (デヴィッド・ボウイ) もハズせないよね。僕の場合は決してレンジが広いわけじゃないし、限られた表現しかできない中で歌わなきゃいけないから、基本的には曲を耳でしっかり聴いて、自分の中からヴォーカルを導いていく感じになるのかな。

なるほど。

Stuart:いつかブルース・ディッキンソン (アイアン・メイデン) と一緒に歌えたら面白いよね。まあ、絶対ありえないんだけど (笑)。

 

Mogwai // Party In The Dark (Official Video)

—それはぜひ見てみたい (笑)。さっき Chuck D の名前が挙がりましたけど、2年前の ATP Season というイベントで、Public Enemy や GZA (ウータン・クラン) をゲストに迎えていましたよね。当時のインタビューで Stuart さんは、「ヒップホップのあらゆる面をリスペクトしている」と語っています。Mogwai がヒップホップの MC とコラボしたり、Stuart さん自身がラップに挑戦する……という新機軸はありえるのでしょうか?

Stuart:それは誰にもわからんね (笑)。
Dominic:これまでも予期せぬことばかり起きてきたわけだから。
Stuart:もしもだけど、地元のパブに Nas (ナズ) がいて、「スタジオで何か一緒にやってみないか?」っていうことも起きるかもしれない (笑)。どんなことでも可能性はゼロじゃないんだ。

—ちなみに、新作の8曲目「Don’t Believe The Fife」って、Public Enemy の「Don’t Believe the Hype」をもじったものですよね?

Stuart:その通り! 「Fife」っていうのはスコットランドの地名なんだけど、そこからやって来た友達がいつもホラばっか吹いてるもんだから、「奴のウソには気をつけろ」っていうジョークだね (笑)。

—以前 Barry さんにインタビューした際、「曲のタイトルはいつも適当に付けている」と語っていたのですが、今作には「Im Jim MorrisonIm Dead」や「You’re Lionel Richie」みたいな固有名詞のタイトルがありませんね。もし新作で使おうと思っていた名前の候補があれば教えてください。

Stuart:有名な人物の名前を少しだけいじってソング・タイトルにするのが好きなんだよ。「Devie Wonder」とか (笑)。スタジオかどこかにリストがあったはずだけど、今は思い出せないな。

—前作『Rave Tapes』(2014) に収録された「Simon Ferocious」は、Sid Vicious (シド・ヴィシャス) が由来だとか?

Dominic:ああ (笑)。Queen (クイーン) のドキュメンタリーを見ていたんだけど、彼らが昔『トップ・オブ・ザ・ポップス』っていう音楽番組に出演したとき、Sid Vicious も出ていたんだ。で、彼がクイーンの楽屋にやって来てバンドを散々ディスって帰ったらしくてね。そのエピソードを後日 Freddie Mercury (フレディ・マーキュリー) が語るんだけど、どうしても Sid の名前が思い出せず「Simon Ferocious (シモン・フェロウシャス)」って言ったのが、俺たちのツボにハマりまくったんだ (笑)。

—わかりました (笑)。先日のライヴでも最後に披露された「Old Poisons」は、ヘッドバンギングしながら聴きたい超攻撃的なナンバーですね。個人的には「Glasgow Mega-Snake」と「Batcat」のその先の景色を描いているようにも思えたのですが、この曲に込められた想いは?

Dominic:ただ「ぶっ飛んだナンバーを書こう」ってことかな。特にそれらの楽曲の続きを作ろうとは考えなかったし。
Stuart:ものすごく速くて複雑な曲をやりたかったっていう……それだけだね。

Photo by Hiroki Watanabe

Photo by Hiroki Watanabe

—国内外のフェスティバルでいろんなバンドを見てきたと思いますが、逆にお2人でもビビるようなヴォリュームで演奏していたバンドって誰か思い当たりますか?

Dominic:Sunn O))) (サン O))) はマジで衝撃的だったな。「Oh My Bigness!!」って感じ (笑)。
Stuart:僕は PAN SONIC (パン・ソニック) だね。先日メンバーの Mika Vainio (ミカ・ヴァイニオ) が亡くなってしまったんだけど、今まで見たライヴの中で彼らの音がもっともデカかった記憶があるよ。
Dominic:俺には耐えられなかった (笑)。
Stuart:あとは Earth (アース) に、My Bloody Valentine (マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)、Dinosaur Jr. (ダイナソーJr.) も凄いよな。俺たちのレーベル Rock Action Records (ロック・アクション・レコード) からリリースしている Part Chimp (パート・チンプ) もぜひ聴いてほしいね。

—そういえば、映画『地球が壊れる前に (Before the Flood)』のサントラでは Trent Reznor がプロデュースを努めていましたが、いま振り返ってみてどんな経験でしたか?

Stuart:Nine Inch Nails は、僕らも若いときからずっと聴いて育ってきたヒーローだから、プロジェクトに関わることができて光栄だったよ。ただ、僕らがグラスゴーにいて、 Trent はロス・アンジェルスに住んでいるわけだから、みっちり顔を突き合わせながら仕事したわけじゃないんだけどね。
Dominic:最初に彼からEメールが届いた時は興奮したよ。「もちろんやります、やらせてください!」って即答さ (笑)。

—彼が Nine Inch Nails を再始動したのは、David Bowie の死が影響しているんじゃないかと思ったんですよね。あなた達にとっても Bowie の存在って大きいのでしょうか?

Stuart:そりゃあね。『Low (ロウ)』(1977) はたぶん人生でいちばん聴いたレコードだと言っても過言ではないし。むしろ、David Bowie から影響されてないミュージシャンがいるんだとしたら、それこそ心配だよ (笑)。

—最後の質問です。広島への訪問にインスパイアされた「Atomic」(2016) のプロジェクト然り、Franz Ferdinand (フランツ・フェルディナンド) らと共に実行したスコットランドの独立支援コンサート然り、近年の Mogwai の行動にはしっかりとした「意義」や「理由」があるように思えます。今後、バンドとして何か成し遂げたいこと、あるいはチャレンジしてみたいことは何ですか?

Stuart:まあ、曲のタイトルはナンセンスなものであっても、音楽そのものは意味があるっていうか、ずっとマジメに取り組んでいるからね。スコットランドの独立支援にしろ、核廃絶にしろ、自分たちが心から賛同するイベントや運動であれば、積極的に関わっていきたいと思っているんだ。
Dominic:俺はこれと言って大きな野心があるわけでもないし、このままずっと音楽を作って、演奏し続けていけたら本望だよ。

Photo by Hiroki Watanabe

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<プロフィール>
Mogwai (モグワイ)
1995年に Stuart Braithwaite (スチュアート・ブレイスウェイト) (G)、Dominic Aitchison (ドミニク・アイチソン)( B)、Martin Bulloch (マーティン・ブロック)(Dr)、Barry Burns (バリー・バーンズ)(Vo, G, Key)で結成されたポストロック界で最も影響力を持つ重鎮バンド。1997年のデビューから現在までに8枚のスタジオ・アルバムを発表。2017年8月には HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER のために来日。轟音シャワーの降り注ぐ圧巻のステージで大勢の観客を魅了した。待望の最新アルバム『Every Country’s Sun(エヴリ・カントリーズ・サン)』は、9月1日より発売中。
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