Interview With Mikako Ichikawa

PORTRAITS | Feb 1, 2018 9:00 PM
女優・市川実日子さんは、ちょっと離れたところから人や物事をよく観察している人、という印象が勝手ながらある。そして、「言葉にできなくて」と言う彼女の口から出てくるひとつ一つの言葉には、いつも嘘がない。2000年に長編映画デビューして以来、女優として躍進し続ける彼女が次に挑むのは、山上たつひこ氏が原作、いがらしみきお氏が作画を担当した同名マンガを『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が実写化した映画『羊の木』(2月3日より公開)だ。更生促進極秘プロジェクトによって移住した6人の元受刑者の一人、栗本清美役に扮する市川さんに、役との付き合い方や、最近の彼女の在り方について話してもらった。

女優・市川実日子さんは、ちょっと離れたところから人や物事をよく観察している人、という印象が勝手ながらある。そして、「言葉にできなくて」と言う彼女の口から出てくるひとつ一つの言葉には、いつも嘘がない。2000年に長編映画デビューして以来、女優として躍進し続ける彼女が次に挑むのは、山上たつひこ氏が原作、いがらしみきお氏が作画を担当した同名マンガを『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が実写化した映画『羊の木』(2月3日より公開)だ。更生促進極秘プロジェクトによって移住した6人の元受刑者の一人、栗本清美役に扮する市川さんに、役との付き合い方や、最近の彼女の在り方について話してもらった。

映画『羊の木』

—市川さんは、吉田大八監督とは以前にご一緒したことはあったんですか?

CM監督をされていたときに一度あります。「ミツワ」という3つの話が最後にひとつになるネット上のショートムービーで、樋口可南子さんと板尾創路さんと私の話がそれぞれあって。樋口さんと板尾さんの息子の役だったんですけど(笑)。

—息子!?

声は後からアフレコで入れて、実は男性の野太い声なんですけど、最後は宇宙人に連れて行かれる。という言葉では何とも説明がむずかしい作品です(笑)。吉田監督とはそれが初めてで、それ以来でした。

—「人を映す監督だと思った」とおっしゃっていましたが、それはどの作品を観て思ったんですか?

『紙の月』(2014) です。映画館で観て、びっくりしたんですよね。映画ってこんなに映ってしまうんだ……と。役ではあるんだけど、役者自身、その方の持っているものが映っていて。もちろん、それは勝手に私が受け取っているものなんですけど、すごく綺麗だなって思ったんです。それは見た目じゃなくて、放たれているものというか。

—役者さん自身の在り方が映っていた?

それを私が勝手に受け取ったんですね。今回、現場で他の役者のみなさんに演出されているのを見ていると、その方が持っているものを見て引っ張っていくというか。「もっとこういうのを見てみたい」という部分をヒュッヒュッと糸で引っ張っているような(笑)。それぞれの魅力を監督が見ているんだろうな。現場でそういうのを見て、うれしくなりましたし、だから、ああいう風に映画になるんだなぁと思いました。

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

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—確かに、みなさんハマってらっしゃるのに、今まで見たことがない感じでしたね。

そうなんです。見たことない部分はワクワクしますよね。

—現場での吉田監督はどんな感じなんですか?

テキパキ、はっきり、しっかり(笑)。「そういうの要りません」とか、見たいものがたぶんはっきりされてる。それは言葉にはなっていないかもしれないんだけど、たぶんここにそれがほしいみたいなものは絶対にあるんだなという感じはしました。それは、衣装合わせの前からそう感じました。

—現場に入る前からだったんですね。

衣装合わせの前に、それぞれひとりずつ監督とお会いする時間がありました。そのときにいくつか説明を受けて、それから衣装合わせがあって、現場で見て、もうちょっとこういうのがいいっていうのがどんどん細かい線になって、役の人物になっていったというか。

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

—市川さんが演じた清掃員の清美は、事件を起こした事実以外の過去が見えないキャラクターでしたが、どう役を探っていったんでしょうか。

監督も探りながらおっしゃっていたんですけど、一番最初の言葉が、「清美は人間じゃない」だったんです。「……?神様とつながっているというような意味ですか?」とか、「足が地面からちょっと浮いている……?」というような、言葉というより感覚的な質問をたくさんしました。

—情報と自分の目で見たり感じたことのどちらを信じるか、を問われる映画でもありますよね。

「私が肌で感じていることと違うんだけど!」、ですよね。

—安藤玉恵さんの名台詞、すごく良かったですよね。市川さん自身は、情報には疑り深い方ですか?

両方強くあると思います。疑っているといよりは、構えているというか様子を見るというか。そこは清美と近い部分もあると思うんですけど。

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

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—疑うんじゃなくて、伺うんですね。

はい。一方で、すごく信じる。一度パカっと開いたら。嘘つきは嫌いですけど、その人にとってその嘘が本当ならいいんじゃないかというか。

—じゃあ、極論ですけど、過去に何があっても一度開いてしまえば、目の前にあるものを信じる?

言おうとしていた言葉と口から出てくるものが違うことって絶対あると思うし、それってなんとなく見ていると感じるじゃないですか。全ては思い込みかもしれないけど、自分が「うん」と思えればそれを信じますね。あとは、疑うところまでいく前に自分の中に入ってこないようにするかも。でも、ずっと一緒にいなきゃいけないとなると、疑うこともありますよね。疑うというか、信じられないことも。

—信じられないってつらいですよね。人それぞれでしょうけど、側にいられるなという感覚、わりと重要じゃないかって確かに思いました。

そうですね。皮膚感というか、自分の中で言葉になる前に勝手にそうなっている感じがします。信じられる人だと自然と近くにいられるだろうし、そうじゃない場合はたぶん近寄らない。そういう直感を信じていきたいな。相手や状況を信じたいから、自分の直感を疑うこともあります。でも、自分が感じたことを、まずは自分で信じてあげないとなって思っています。それを我慢したり、自分を疑わないようになりたいなと思う。

—自分の知らない部分を監督から引き出されるのって、楽しい側面もあると思うんですけど、そうじゃないときもあるんじゃないかなと想像するんですが、市川さんの場合は本来の自分とどういう風に折り合いをつけるんですか?

私は自分と混ぜる気がします。どうしたらその役とつながれるかなと考えて、まず探してみる。20代のときに、ドラマ「すいか」でとてもテンションの高い役を演じたことがあって、後に姉から「あのときのあなたは手に負えなかった」って言われたんです(笑)。年齢もあったと思うんですけど、あの時期から自分も変わったところがあると思うんですよね。同時に、『キューティーハニー』(2004) という映画も撮っていて、それも作品自体のテンションが高くて。あのときにたくさんの人と出会ったし、現場が好きで、台本の世界観も好きでうれしいとか、いろんな出会いがあった時期だから楽しくてとにかくハイテンションだったんですよね。

—じゃあ、「すいか」のゆかの役が今の市川さんの一部でもあるんですね。

そうですね。どこかには。作品に入っている期間はその役のことを知りたいし、近くにいてほしいという感覚をどこかに持ちながらごはんを食べたり、お風呂に入ったり、寝たりしていて。自分だけど、もうひとり側にいるから、自分の感覚なのかわからなくなりますよね(笑)。

—わからないことは別に嫌じゃないんですよね?

嫌じゃないですし、無意識でも影響は受けますよね。でも最近は、私個人、自分自身の感覚もちゃんとその中でわかっておきたいなと思っています。

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

—『羊の木』は、人には言えない過去を持っている人の話でしたけど、市川さんは過去にとらわれるほうですか?

どうしても、あるんだと思うんです。何年か前まではすごく過去が好きだったし大事にしたかったし、自分の中で絶対的なもの、記憶とか大きな存在だったんです。でも、ここ1~2年くらいはけっこう変わってきましたね。離れてきたというか。

—どう変わったんでしょうか?

1段1段階段を上っているのか、後ろに置いてきたものという感じ。前はずっと引き連れていたんです、離したくなかった(笑)。でも今はその場その場に置いていってる。そうしたいし、そうなりつつあるなと。過去が嫌だってことでも大事じゃなくなったわけでもないんだけど、それよりも今なんだよなって思うようになったというか。今に興味が出てきたというか。

—市川さんはモデル出身で、『The Fashion Post』の「The Look」でもモデルとして出演されていましたが、モデルも役者とはまた違う楽しみがありますか?

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>コート ¥845,000、シャツ ¥122,000、スカート ¥305,000、Valentino (ヴァレンティノ) | ブーツ ¥178,000 *参考価格、ネックレス ¥95,000、Valentino Garavani (ヴァレンティノ ガラヴァーニ)

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>コート ¥845,000、シャツ ¥122,000、スカート ¥305,000、Valentino (ヴァレンティノ) | ブーツ ¥178,000 *参考価格、ネックレス ¥95,000、Valentino Garavani (ヴァレンティノ ガラヴァーニ)

あの撮影、すごく楽しかったです! 実は……、申し訳ないんですが、楽しみにしていたんだけどあの日は体調があまりよくなくて。う~んこのタイミングで……って思ってたんですよ。でも、楽しくて逆に元気になってしまいました。

—写真もスタイリングもメイクも、すっごくかっこよくて素敵でした。

やっぱり、関わる人のタイミングと自分のタイミングが合って、それがどうしてかあの日に集まったから生まれるものなんだなと感じました。もし「体調が悪いから別日にしてください」ってお願いして、1日ズラしていただいたら、あの写真にはならなかった。そういうのがおもしろいなと。

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>ジャケット ¥305,000、レザーシャツ ¥345,000、パンツ ¥170,000、ブーツ ¥105,000、ピアス ¥65,000、バッグ ¥670,000、全てCéline(セリーヌ) メガネ ¥53,000 ブリンク外苑前

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>ジャケット ¥305,000、レザーシャツ ¥345,000、パンツ ¥170,000、ブーツ ¥105,000、ピアス ¥65,000、バッグ ¥670,000、全てCéline(セリーヌ) メガネ ¥53,000 ブリンク外苑前

—Céline(セリーヌ)のバッグに新聞紙を入れるなど、市川さんもアイデアも出されていたとか。

ああいうアイデアが出てくる現場って、毎回じゃないと思うんです。あのときたまたましたことを、スタッフの方々がいいねって受け取ってくださったから。やっぱり、「ただここに立っていてください」というカメラマンの方だったらきっと私もしなかった。

あと、たとえば、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)のルックで使ったチーフとネクタイ。あれはマルジェラのものじゃないじゃないですか。私はあの物自体に惹かれて。でも、ないのも素敵かもしれない。というようなことを、心の中で思っていたんです。できあがった写真を見たら、そのちょっとがすごく良くて、それはやっぱりスタイリストさんの力だなあと。ルックってもう決まっているものだけど、ちょっとしたチョイスでこんなに見え方が違うんだって思いました。

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>ジャケット ¥320,000、シャツ ¥95,000、ショーツ ¥65,000、ブーツ ¥160,000、全て Maison Margiela(メゾン マルジェラ) | ヴィンテージのネクタイ ¥16,000、SURR by LAILA (シュール・バイ・ライラ) | ポケットチーフ、スタイリスト私物 | チェア¥ 77,000、Jean Prouve (ジャン・プルーヴェ)

<Creative Staff> Photographer: Mitsuo Okamoto | Stylist: Megumi Yoshida | Hair&Makeup: Hiroko Ishikawa <The Look includes>ジャケット ¥320,000、シャツ ¥95,000、ショーツ ¥65,000、ブーツ ¥160,000、全て Maison Margiela(メゾン マルジェラ) | ヴィンテージのネクタイ ¥16,000、SURR by LAILA (シュール・バイ・ライラ) | ポケットチーフ、スタイリスト私物 | チェア¥ 77,000、Jean Prouve (ジャン・プルーヴェ)

—まさに、カッコいい女でした。

蓋をあけると違うけど(笑)。

—そんなことないじゃないですか。カッコいい女といえば、2016-17年は『シン・ゴジラ』の影響で、爆発的な「尾頭ブーム」が起きていましたが、尾頭ヒロミを演じたご自身としては実感はありました?

自分の中では、仕事との向き合い方は基本的にいつもと変わらないんです。出来上がった作品はおもしろかったけれど、自分は反省ばかりでした。だからびっくりしました。作品の力が大きいですよね。でも、彼女の場合は、こんな人なんじゃないかっていうのがふっと湧いてきたというか、楽しみながらできたので、役とは相性が合ったんだと思いますね。何となくですが。

—本当に、ずっと若々しくて、20代の頃から印象が変わりませんよね。

変わってないのは問題だと思うんですけど(笑)。私の中では変わっているんですよ。たとえば、昔、忙し過ぎて心が荒れていた時期にインタビューで話したこととか、それがそのまま記事になるじゃないですか。後から読んで、「うわー!」って落ち込んだこともあります。

—見た目というか印象の話で、もちろん中身は変わっていらっしゃると思います。でも、そういう、後から読み返すと「うわー!」ってなるような荒れたりする時期は、そのまま身をまかせるんですか?

気分転換もするんですけど、どうにもならないこともある。でもその時期も大事だと思うんですよ。その状況を嫌なことだと思うか、じゃあどういうことなんだろうって考えるのか、起こったことを自分の中でどう受け止めるのかが重要なんだと思う。嫌だって思うと、嫌だ目線でしか見れなくなるけど、どうしたらその中でいい考えが浮かぶだろうって、嫌だを1回手放すと意外と平気だったりするんだなぁとか、色々試しながら。

—わかります。でも、そこまでいくのがなかなか難しいんですよね。

難しいけどできるはず、トレーニングすれば。私もいつも上手くできないから、そういうときは「うわー!」ってなりますけど、まずは、「うわー!」ってなってること自体を自覚する。そして、なるべく楽しい受け取り方ができる心の筋肉というか、力をつけたいなと思っています。

Photographer:Mitsuo Okamoto

Photographer:Mitsuo Okamoto

<プロフィール>
市川実日子 (いちかわ みかこ)
1978年6月13日生まれ、東京都出身。10代の頃からモデルとして活躍。雑誌「OLIVE」の専属モデルをへて、2000年『タイムレスメロディー』で長編映画デビュー。03年に映画『blue』(安藤尋監督)で第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。主な出演作に、『嫌われ松子の一生』(06/中島哲也監督)、『めがね』(07/荻上直子監督)、『マザーウォーター』(10/松本佳奈監督)、『レンタネコ』(12/荻上直子監督)、『ぼくたちの家族』(14/石井裕也監督)、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明総監督)、『三度目の殺人』(17/是枝裕和監督)など。現在、TBS系で放送中の金曜ドラマ『アンナチュラル』に出演中。

作品情報
タイトル 羊の木
監督 吉田大八
脚本 香川まさひと
原作者 「羊の木」山上たつひこ いがらしみきお(講談社イブニングKC刊)
出演 錦戸亮、木村文乃、北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、松田龍平
配給・制作 アスミック・エース
制作協力 ギークサイト
制作年 2018年
上映時間 2時間6分
HP hitsujinoki-movie.com
 © 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
2018年2月3日 (土) 全国ロードショー

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