Diane Krüger
Diane Krüger

女優・Diane Krüger (ダイアン・クルーガー) インタビュー

Diane Krüger

Photographer: UTSUMI
Hair: Dai Michishita
Writer: Sakuya Konohana

Portraits/

新作『女は二度決断する』で第70回カンヌ国際映画際主演女優賞を見事受賞し、これまでの “美人女優” というイメージを払拭するほどの類まれなる演技力を見せ付けた Diane Krüger (ダイアン・クルーガー)。今回、本作で女優魂を燃やした彼女が、映画内で見せる絶望に満ちた瞳とはうってかわり、優しく穏やかな光をたたえた瞳を向けてファッションや映画への想いを語ってくれた。

女優・Diane Krüger (ダイアン・クルーガー) インタビュー

Photo by UTSUMI

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Diane Krüger (ダイアン・クルーガー) と聞いて皆さんはどのようなイメージをもつだろうか。映画『トロイ』(2004) や『イングロリアス・バスターズ』(2009) で世界中を魅了した”美貌の女優”という印象が強いのではないだろうか。とはいえ、フランス映画『バツイチは恋の始まり』(2012) では自分勝手な女をコミカルに演じ、北欧ドラマのリメイク版『ザ・ブリッジ~国境に潜む闇』ではアスペルガー症候群の刑事を体当たりで演じるなど、実は芸達者な彼女。

そんな彼女が、新作『女は二度決断する』では第70回カンヌ国際映画際主演女優賞を見事受賞し、これまでの “美人女優” というイメージを払拭するほどの類まれなる演技力を見せ付けた。幼い息子と愛する夫をネオナチに奪われ、想像を絶する怒り、苦しみ、哀しみのなかで、“ある決断” をくだす女性カティヤ——。監督は、ベルリン、カンヌ、ヴェネチアと、世界三大映画祭を制した名匠 Fatih Akın (ファティ・アキン)。実際に起きたネオナチグループによる連続殺人事件をもとに人種差別やテロリズムを鮮烈に描く問題作だ。今回、本作で女優魂を燃やした Diane Krüger が、映画内で見せる絶望に満ちた瞳とはうってかわり、優しく穏やかな光をたたえた瞳を向けてファッションや映画への想いを語ってくれた。

ファッションは好きだけど、トレンドは追わない

—昨日の記者会見ではシルバーのコルセット、スカートにニーハイブーツとエッジが効いたスタイル、今日は黒のタートルネック、デニムにサンダルとカジュアルなスタイル。ダイアンさんは本当にスタイリッシュですよね。

ありがとう!(笑) 昨日はニナ・リッチの衣装を着ました。今日の服は着心地で選んだかな (笑)。私、ファッションのトレンドは気にしないんです。

—女優になる前はモデルとして世界的に活躍していた上に、Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) とも親交が深いと聞いてますが、ファッションには興味がないんですか?

ファッションは大好きです。でも、服が好きだからといって、トレンドを追いかける必要はないと思う (笑)。私は着たい服を着ているだけで、着心地のよい服を着ることが多いかな。あ、たまには、着心地はよくないけどステキな服を着たり (笑)。特に、ファッションに関してポリシーがあるわけではないんです。

—ダイアンさんが選ぶレッドカーペットのドレスは、無難なエレガンスに留まらず、どこか冒険的ですよね。今年の第75回ゴールデングローブ賞で着ていたプラダのドレスも、とても素敵でした。しかも、ダイアンさんはレッドカーペットにパーソナルスタイリストを雇わないのだとか。セレブにしては珍しいのでは?

まぁ、ありがとう (笑)。長期のプレスツアーには、スタイリストさんにコーディネートをお願いするときもあります。ただ私は、レッドカーペットのドレス1枚を選ぶことに、それほど迷わないタイプ。だから、スタイリストさんの必要性をあまり感じないんです。

 

『女は二度決断する』

監督と一緒に泣いた、カンヌ国際映画祭

—カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したときは、どんなお気持ちでしたか?

私にとって、カンヌ国際映画祭は本当に特別な夜となりました。映画祭の最後の金曜日の夜がプレミア上映の日だったのですが、実は、作品の撮影は終わったばかりで誰も観ていなかったのです。そこをアキン監督が速攻で編集して上映にギリギリに間に合わせたんですよ。皆さんもご存知のように、カンヌ映画祭はときに残酷で、気に入らない映画に対してはブーイングが起こったりします (笑)。ですから、「皆さんがこの作品をどう思うかな」と本当にドキドキしていました。でも、上映中に一緒に座っている皆さんの、なんともいえない”エモーション”が私にも伝わってきたんです。そして映画が終わり、映画館の電気がパッとついた瞬間、「あぁ、この映画は皆さんの心に響いたんだ」と胸が一杯になりました!次の日の土曜日は最終日だったので、私はパリに帰るつもりで荷物をパッキングしていたんです。すると、アキン監督が泣きながら、この作品が何かの賞を受賞したらしいと電話をかけてきました。それを聞いて、私も一緒に泣いてしまって……(笑)。何の賞をいただいたかまではわからなかったんですが、監督と一緒に車でセレモニーへ向かい、壇上に上るときは、本当に言葉には尽くせない感動で……。まさか、私が賞をとるなんて……心の底から驚きました!本作で、私は自分をギリギリまで追い込んで、精一杯演じたつもりです。だから、こんなふうに皆さんが作品を評価して下さったことに対して、感謝の気持ちしかありません。

 ©︎ 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions,Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH

©︎ 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions,Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH

カティヤを演じるのは、自分には無理だと思っていた

—本作では、役作りに何ヶ月もかけたと伺いました。

最初、私にはカティヤを演じられないと思っていました。まず、私には子供がいません。映画の最後にカティヤはある”決断”をくだすのですが、その決断に至るまでの彼女の “心の動き” をリアルに演じられるのか、観客を納得させられるほどの演技力があるのか、と正直不安でした。なので、役作りに何ヶ月も費やしました。殺人事件などで亡くなった被害者の遺族のグループから話を聞き、彼らの哀しみを分かち合おうとしました。筆舌に尽くせぬほどの哀しみや痛みに対して、自分の心を開き、その哀しみや痛みに心で触れる……。これは本当に辛かったです。私にとって大切な経験でしたが、一番のチャレンジでした。

ドイツ映画と世界を結ぶ、架け橋のような存在になりたい

—ダイアンさんはドイツ人ですが、実は本作が初めてのドイツ映画出演だったのだとか。母国の映画に出演することはダイアンさんにとってどんな意義があったのですか?

フランス語や英語で演じるときにはない、“違い” をやはり感じました。ただ、それが母国語であるドイツ語という言語ゆえの違いだったかというと、そうではない気がします。ドイツを離れてから25年経ちましたが、撮影のため、久しぶりに故郷に住んだせいでしょうか、カティヤという女性の社会的、文化的なバックグランドを、より”感覚的に”理解できたんです。つまり、カティヤのセリフや感情がスッと自分に入ってくるような感じ。これまで、様々なアメリカ人やフランス人の役を演じてきましたが、どんなに努力しても、例えば、オハイオ出身やフロリダ出身の女の子が経験してきた “感覚” は、理解はできても感覚的に自分のものにならないんです。ですから、ドイツで撮影をし、ドイツ人のスタッフと仕事をし、ドイツ語で演じたことは素晴らしいフィーリングでした!この作品をきっかけに、ドイツ映画に出演する機会が増えればよいですね。ドイツ映画を世界に紹介できるような、架け橋のような存在になりたいと思っています。

Photo by UTSUMI

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<プロフィール>
Diane Krüger (ダイアン・クルーガー)
1976年7月15日、ドイツ、ハノーバー生まれ。英国ロイヤル・バレエ団でバレリーナを目指すが、怪我のため断念。その後、パリでモデルとして成功を収める傍ら、有名な俳優学校ル・クール・フローランで演技を学び、『ザ・ターゲット』(2002) でスクリーンデビューを飾る。2003年、第56回カンヌ国際映画祭で将来有望な俳優や女優に贈られるショパール・トロフィーを受賞、翌年 Brad Pitt (ブラッド・ピット) 主演の歴史スペクタクル『トロイ』(2004) で王妃ヘレン役に大抜擢され、国際的にブレイクする。その後、Quentin Tarantino (クエンティン・タランティーノ) 監督作『イングロリアス・バスターズ』(2009) に出演、全米映画俳優組合賞助演女優賞にノミネートされる。その他の主な出演作に『戦場のアリア』(2005、『マリー・アントワネットに別れをつげて』(2012)、『バツイチは恋のはじまり』(2012)、など、インターナショナルに活躍している。本作『女は二度決断する』で、母国語であるドイツ語での演技を初めて披露し、第70回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞、世界的な映画祭で主演女優賞を獲得したのは本作が初めて。

作品情報
タイトル 女は二度決断する
原題 Aus dem Nichts
監督/脚本 Fatih Akın (ファティ・アキン)
出演 Diane Krüger (ダイアン・クルーガー)、Denis Moschitto (デニス・モシットー)、Johannes Krisch (ヨハネス・クリシュ)
配給 ビターズ・エンド
制作国 ドイツ
制作年 2017年
上映時間 106分
HP www.bitters.co.jp
 ©︎ 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions,Pathé Production,corazón international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH
4/14(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!