Interview with Film Director: Deniz Gamze Erguven

PORTRAITS | Jun 26, 2016 11:10 PM
処女作にしてアカデミー外国語映画賞にノミネートされる快挙を遂げた『裸足の季節』。監督である Deniz Gamze Erguven (デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン) が映画の公開を記念し来日。監督をメインに作品に込められたメッセージ、そしてデニズ監督自身について語ってもらった。

処女作にしてアカデミー外国語映画賞にノミネートされる快挙を遂げた Deniz Gamze Erguven (デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン) 監督作『裸足の季節』。瑞々しい少女5人の美しさと凛々しさに私たちは何度も息を飲み、気がつけばすっかり虜になってしまっている。ガーリー・ムービーの頂点に立つソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ (1999年)』を引き合いに出されている。確かに5人姉妹という設定であったり、目を奪われるような映像美がふたつの作品に共通している。しかしこの『裸足の季節』は「女性の権利」という世界的にも大きな問題に対して問題提起をしている作品としてより「進んでいる」と言えるだろう。先見の目を持つブランドとして唯一無二の存在である Chanel (シャネル) もデニズ監督の才能、そして美貌をいち早くピックアップし、お互いの魅力を共鳴させていることでも注目された。

ファッション、ウォッチ&ファインジュエリー、メークアップ/すべて Chanel (シャネル) | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

ファッション、ウォッチ&ファインジュエリー/すべて Chanel (シャネル) | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

交通事故で両親を失った5人姉妹。田舎に住む祖母と叔父に引き取られた少女たちは不自由なく学生生活を送っていたが、ある事件がきっかけとなりその自由を奪われる。処女でなければキズ物として取り扱われるような封建的な鳥カゴに閉じ込められた美しき姉妹たち。「クソのような」ワンピースを着て、花嫁修業をする日々の中で彼女たちは抵抗を重ねるが、その結果はより束縛は強くなっていく。次から次へと見ず知らずの男と結婚させられる残酷な運命から逃れるために、末っ子のラーレは遂に行動を起こす。観客の私たちは5人の姉妹の生き様から、今私たちが日々生活しているこの世界に自由が奪われている人たちがいる現状に目を向ける大切さを学んでいく。

次女セルマ役を演じた Tugba Sunguroglu (トゥーバ・スングルオウル) は試験勉強のために残念ながら来日できなかったが、5人姉妹を演じたそれ以外の4人の女優と監督である Deniz Gamze Erguven が映画の公開を記念し来日。監督をメインに作品に込められたメッセージ、そしてデニズ監督自身について語ってもらった。

—デニズ監督はこの『裸足の季節』とともにカンヌ映画祭、アカデミー賞など世界各地を回り、初監督作にしてこれほど世界で賞賛されるのはとても稀だと思います。その評価などについて監督はどんな風に感じましたか。

この作品は私にとって素晴らしいチャンスとなりました。この作品が評価されることによって、次作の権利を獲得することができました。それだけでなく、今後に向けてのエネルギーだったり、自信をつけさせてくれる作品になりました。初作ということで本当にたくさんの試行錯誤があって、制作が中断することもあったり、完成するまでの道のりはとても長いものでした。それは何年もの期間が続きました。それでも、こうやって日本に来れたこともとても嬉しく思っています。

© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

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—キャスティングですがどういった経緯で5人姉妹はそれぞれの役を得たんでしょうか。

三女のエジェを演じたエリットはこの作品の前にも映画への出演経験もあり、私は彼女に声をかけました。次女のセルマは飛行機の中でその容姿に一目惚れし、演技経験がなかったにもかかわらず、出演が決まりました。他の女の子たちはオーディションで決めましたが、その出演してもらう条件というのが、私の話を聞いて理解してくれる子というもので。キャンプ合宿で演技指導をしたのですが、それが終わる頃には本当の姉妹みたいになっていて、作品の中でもその関係性が生かされていたと思います。

© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

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—この作品の中では美しい5人姉妹が描かれていますが、5人姉妹というのはトルコの家庭では一般的なのでしょうか?デニズさん自身はどんな家庭環境で育ったのでしょうか?

実際、5人姉妹はトルコでも珍しいと思いますね。その5人姉妹という設定も特別ですが、彼女たちは父母を事故で亡くしているという設定も普通ではないですよね。これは映画の中では説明されていないのですが、彼女たちは元は都会育ちの姉妹なんです。両親を亡くした当時、長女は7歳という設定でした。その交通事故がキッカケで彼女たちは都会から村へと移り住むことになります。彼女たちを引き取った祖母は彼女たちをある意味甘やかして育てた。祖母は彼女たちが両親を亡くし、不憫だと思っていたんです。5人姉妹が日が暮れて外で遊んでいても、怒ることはなく自由を与えていたんです。叔父がそのことを責めるシーンも映画の中で描きました。私自身は従姉妹二世代にわたって、女系の家族の中で育ったのもあって、いとこ同士ではありますが、姉妹のような関係でした。でも、この作品はあくまでもフィクションなので、彼女たちみたいな家庭環境はトルコでは一般的ではないですね。

© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

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—デニズ監督はこの作品を撮影中に出産も経験していますよね。出産を経て、何か感じたことはありましたか。

変わったという部分もあればありますし、ないと言えばあまりないかもしれないですね。私は自分が母親になる前に、子供を産んだからと言って、母親論について口すっぱく意見を言うような女性にはなりたくなかったんです。実際、母親になって発見が沢山ありました。その中でも驚いたのは母親同士で出産の話や授乳の話を話題にするのがごく普通だったってことですかね。出産する前はそういうトピックを大っぴらに人前で話をするのはタブーのような気がしていたのですが、そんなことはなかった。トルコの女性もフランスの女性もそれは同じで、今のトルコのエルドアン大統領が勝手に肯定している女性の在り方とは相反するもので興味深い発見でしたね。

ファッション、ウォッチ&ファインジュエリー、メークアップ/すべてChanel (シャネル) | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

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—日本に住んでいるとトルコの閉鎖的な価値観みたいなのがなかなか伝わってこないのが現状なのですが、取り巻く環境というのは実際どうなのでしょうか?

今トルコという国は十字路に立たされていると言ってもいいと思います。ウクライナもそうですけど、ヨーロッパとロシア、二つの全く違う文化の中心にあって、トルコはトルコでオリエントとヨーロッパの交わる場所にあって、常に正反対の考え方をしている人たちが混在しているんです。一方では現代的かつ自由な思想を持った人たちがいるし、そのもう一方ではとても保守的な人たちがいる。宗教的な戒律を守り、スカーフをまとっている女性もいれば、それにはとらわれず、自由なファッションを楽しんでいる女性もいるんです。

—今作『裸足の季節』のような作品が出てくることによって少しずつトルコの状況も変わっていく兆しというのは見えてきていますか?

無信仰の人たち、宗教を信仰している人たちの共存が難しい時代になっていますよね。エルドアン大統領になってから保守主義の度合いはどんどんと高まっていて、民主主義が崩れていくような、後退していくような方向にトルコは向かっていると私は思っています。

エルドアン大統領の方針に従わない人たちは脅されたり、仕事で不利な状況になったり、一種の魔女狩りのような現象が起こっています。この作品も保守的な人からの批判も勿論ありました。この作品を通してというわけではないですが、女性の権利を主張するデモがあったりと、アクションは色んな人の手によって起こされています。トルコは早い段階で女性の権利を保障していた国だったのに、大統領のパワーによって後退していることはとても悲しいことです。

—エルドアン大統領がやっていることは思想の統一のようなものなのでしょうか?

考え方の統制というよりは何も考えられないような環境をエルドアン大統領は意図的に作り出しているんです。例えば、新聞や雑誌、テレビといったメディアは内容を発表される前にコントロールされるような、校閲のようなフィルターが存在しているんです。私たちが映画のロケーションに使用した地方の町などでは、テレビで常にプロバガンダが流れているような状況で、政府を批判すること自体が不可能なんです。

© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

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—印象深いシーンがこの作品の中にはたくさんあり、どのシーンを切り取ってもとても美しいですね。その中でも5人の姉妹に共通するロングヘアーがあると思うのですが、個人的にはあの美しい髪が処女性を感じさせるものだと印象を受けました。その髪をラーレが切るシーンにはどのような思いが込められていたのですか?

実際にはシナリオを書いた時点で、作中で描かれていたよりもさらに短く、バッサリと切るつもりにしていたんです。でもラーレを演じていたギュネシにとってあの長い髪は彼女のチャームポイントであり、愛情を込めて伸ばしてきたものなので、最終的にはバッサリショートヘアにするようなことはできなかったんです。ただシンプルにトルコの少女たちにとって長い髪が一般的なのでロングヘアが何かを象徴しているということではないです。彼女たちの髪を綺麗に梳かされたロングヘアというよりはバサっとラフにした自然な感じにしたかった。小さな野生の動物のような生命感を与えたかった。私自身はこの5人の少女たちを5つの頭を持った『イドラ』のような怪物をイメージで作品の中に描きたかったんです。『Mustang (ムスタング)』という原題にはその思いが込められています。そのハツラツとしたイメージ、エネルギーを作品から感じとってもらえたら嬉しいです。

© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

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—映画監督として日本映画から影響を受けたことなどありますか?好きな映画監督などがいたら教えてください。

私自身は河瀬直美監督の大ファンなんです。彼女の作品は瑞々しい魅力があるとおもいます。日本の古い作品にも素晴らしいものがいっぱいあり、私も今まで沢山出会ってきました。溝口健二監督の『雨月物語』も私にとってかけがえのない作品です。妻を亡くした夫がガランとした家の中で、振り返った瞬間に幽霊となった妻の姿を見るシーンがあるんです。長回しで撮られたこのシーンがとても印象に残っていて、自分の作品の撮影の際に、何度も何度もこのシーンが蘇ってきました。三女のエジェがこの作品の中で現れたり、消えたりするシーンはその『雨月物語』の幽霊になった妻のシーンからインスピレーションを受けています。色んな監督がこのシーンにオマージュを捧げていますが、私もその内のひとりなのかもしれませんね。

ファッション、ウォッチ&ファインジュエリー、メークアップ/すべてChanel (シャネル) | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

ファッション、ウォッチ&ファインジュエリー、メークアップ/すべて Chanel (シャネル) | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

問い合わせ先/シャネル
ファッション Tel: 0120-525-195
時計・宝飾 Tel: 0120-159-559
香水・化粧品 Tel: 0120-525-519
HP: www.chanel.com

映画 裸足の季節
原題 Mustang
監督 Deniz Gamze Erguven (デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン)
音楽 Warren Ellis (ウォーレン・エリス)
キャスト ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハル・コルダシュ、アイベルク・ペキジャン
制作年 2015年
制作国 フランス=トルコ=ドイツ
上映時間 97分
提供 ビターズ・エンド、サードストリート
配給 ビターズ・エンド
HP www.bitters.co.jp/hadashi
© 2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

Photographer/Hiroki Watanabe
Styling/Chihiro Ogura
Makeup & Hair/Yoshihiro Chida(Z SALON GINZA)
Interviewer & Writer/Sumire Taya

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