内田紅甘が纏うファッション、綴る言葉。「君のきれい」〈後編〉
guama uchida
model: guama uchida
photography: chikashi suzuki
styling: sumire hayakawa
hair: tsubasa
makeup: kie kiyohara
edit: daisuke yokota & yuki namba
text: guama uchida
俳優やエッセイストとして自身を表現する内田紅甘。その佇まいや眼差し、そして選ぶ言葉には、ひと言では言い表すことのできない魅力が滲む。普段のやわらかな物腰、纏っているやさしい空気は、カメラの前で一変。凛とした表情に、思わず釘づけになる。
少女のように透き通った瞳に、世界はどのように映っているのか。彼女を取り巻く「内」と「外」の世界を舞台にした2部構成で、写真家の鈴木親が撮り下ろしたファッションストーリー。内田紅甘自身が綴った、ショートエッセイとともにお届けする。
内田紅甘が纏うファッション、綴る言葉。「君のきれい」〈後編〉
私が高校生のとき、量子力学を教えてくれたひとがいた。量子力学の世界では、観測が存在を確定させるらしい。量子と呼ばれるごくごくちいさなその粒は、観測される前、そこにあるようなないようなあやふやな状態でゆらいでいて、観測した途端に存在をはっきりさせるのだという。
人間もそうだと思うんだ、とそのひとは言った。「君だって、まわりのひとみんなから無視されたら、存在していないような気分になるだろ」と意地悪く笑われてみれば納得した。たとえば私やあなたをふくむ、この世のすべてのものたちが、だれかに見られることで存在するなら。それなら、私たちはひとをうつくしいと思ったり、ひとにうつくしいと思われたりすることで、互いの存在を創造している、と言える。
うつくしく着飾った私を見て、「おっ」と思ってくれるひとがいる。そのとき心が満たされるのは、きっと私がそのひとに、存在をあたえてもらったからなのだろう。