ポール・スミスと描く、私らしい人生の仕立て方 vol.3 haru.
“Classic with a twist (ひねりのあるクラシック)”。英国の伝統的なテーラリングを継承しながら、溢れるユーモアと冒険心とともに唯一無二の個性を確立してきた Paul Smith (ポール・スミス)。2026年春夏の最新コレクションでは Paul Smith の「旅の記憶」をテーマに、端正なシルエットへ鮮やかな遊び心を落とし込んだルックが並ぶ。
日々移り変わる流行や、「こうあるべき」という固定概念を、ユーモアのある“ひねり”で軽やかに手放す。 TFP がおくる連載企画では、そんな Paul Smith の精神に共鳴し、自らの意思でそれぞれのライフステージを歩む4人の女性たちが、「私らしい人生の仕立て方」を紐解いていく。
第3回に登場するのは、インディペンデントマガジン『HIGH(er)magazine (ハイアーマガジン)』の編集長であり、クリエイティブスタジオ「HUG (ハグ)」の代表として、数々のブランドのクリエイティブディレクションを手がける haru.。自身のメディアでの活動や創作を通じて「価値観」を発信し続ける彼女が考える、服とアイデンティティの関係。失敗さえも愛し、自分の道へと仕立て直していく、次世代のしなやかな自信の形について。
paul smith
with haru.
model: haru.
photography: Yusuke Abe
videographer: Taro Okagawa
music: Modern Jazz War
styling: Daichi Hatsuzawa
hair & make up: Yukari Clarke
interview & text: Miu Nakamura
edit: Yuki Namba, Miu Nakamura
Paul Smith の遊び心を映し出す、大胆な金魚柄のシャツと鮮やかなニットベストのレイヤード。上質なレザージャケットの足元に合わせたのは、英国のルーツを持つ「Barbour (バブアー)」とのコラボレーションシューズ。モダンかつモードな着こなしの中に、クラシックとユーモアの絶妙なバランスを楽しんで。
レザージャケット ¥143,000、中に着たシャツ ¥42,900、ニットベスト ¥73,700、パンツ ¥27,500、シューズ「Paul Smith Loves Barbour」¥29,700、ベルト ¥19,800/すべて Paul Smith (ポール・スミス)
− 今回、Paul Smith の最新コレクションから柄の組み合わせが目を引くスタイリングを選んでいただきました。決め手となったポイントを教えてください。
普段はデニムを履いてることが多いので、このパンツもデニム調ではあるんですけど、いわゆるブルージーンズではないっていうところで、いつもの自分とは少し違うかなって思いました。あとは、カラフルなニットベストっていうのが、自分的にすごく新鮮だったのも選んだ決め手ですね。
− 金魚柄のシャツにドット柄のシューズ、そしてメンズのアウターという、異なる要素が綺麗に調和していますね。実際に身に纏ってみていかがですか?
普段はあまり柄に柄を合わせることはないのですが、実際に着てみるとすごく気分が上がって、明るい気持ちになれました。あと、普段からメンズアイテムをオーバーサイズで着るのが好きなので、レディースとミックスした今回のスタイリングは、いつもの自分より少しだけアップデートされたような感覚があって、すごくお気に入りですね。
− Paul Smith の哲学には、クラシックに少しの遊び心を加える「Classic with a Twist (ひねりのあるクラシック)」という言葉があります。haru. さん自身は、仕事や生き方において、”ひねり” や “遊び心” を取り入れることはありますか?
あまり考え方を凝り固めたくないな、と思っていて。仕事への向き合い方もそうですけど、「もしかしたら、こうじゃなくてもいいのかもしれない」ということは常に考えています。世間で「これが正しい」とされているものがあっても、その横にある、ちょっとしたオルタナティブな視点は失わずにいたいなと感じていて。たとえ一般的なルートから道を踏み外したとしても、それを悲観するのではなくて、その道自体を自分にとっての正解にしていく。そうやって、想定外のプロセスさえも楽しんでいくことは、いつも意識している気がします。
− ご自身のメディアである『HIGH(er)magazine』の活動や様々なクリエイティブを発信していく中で、「自信の持ち方」はどのように保ってきましたか?
手探りで雑誌を作り始め、継続して出し続けたり、ポッドキャストを始めたり、色々なブランドのクリエイティブに関わらせていただく中で、メンバーのライフステージももちろん変化してきました。それぞれの目標に向かうために一度バラバラになった初期メンバーが、お互いに違う経験を積んでまた戻ってきてくれたり、新しい仲間が増えたりしていくプロセスを経験したんですよね。
そうやって一人で戦っているんじゃないんだ、自分の活動は周りのみんながいて初めて成り立っているんだと体感していくうちに、自分を大きく見せる必要がなくなっていきました。完璧な自分を見せようとするハリボテの自信ではなく、仲間と一緒に物事を作っていくプロセスそのものを信頼する自然体な自信へと、自分の中での自信のあり方が、少しずつ軽やかなものに変わっていったなと感じます。
− SNS をはじめ、情報が溢れる現代では「自分らしさ」という正解を探して、かえって迷路に入ってしまう若い世代も多いように感じます。個性を失わずに社会と向き合うコツはあるのでしょうか。
私は「これが私らしさ」という明確な定義はあまりないんですよ。ビジュアル的にも奇抜なこととかも何もしていないですし。それでもオリジナリティがないっていうことと、シンプルでいることってまた全然違うのかなと思うんです。ファッションでもそうですけど、真似したいと思ったら真似して自分に取り入れてみればいい。でも、もし実際に着てみて「なんか違うな」と感じたら、それは自然と削がれていくと思うんですよね。
− 「自分らしさ」は最初から用意されているものではなく、試行錯誤のプロセスの中で削り出されていくもの、と。
本当にその通りで、色々試していくうちに、自分の中に残っていくものがいくつかある。その積み重ねが自分らしさみたいなものに自然となっていくのかなと思います。
− haru. さんはそうやってジェンダーやジャンルの境界線をも軽やかに飛び越えているイメージがあります。
私が人を魅力的だなと思う時って、女性らしさや男性らしさといった規範的なものを越えてしまった瞬間、それを垣間見た時にその人のオリジナリティが見えるなと感じていて。「こうあるべき」っていう姿を、自分自身で裏切っていく。そうやって新しい自分を発見していくプロセスを楽しんでいきたいんですよね。
− 何が正しくて何が間違っているのか、他人の意見に振り回されてしまいそうなとき、何を信じて自分の道を選べば良いと思いますか?
そもそも「これが正しい」と言いきれる人なんて本当にいるのかな、というのはすごく思っていますね。だからこそ迷いながらも居心地いいなと感じる直感的なものは、みんなそれぞれ持っていると思っていて。
日々の中で「なんか違うな」と感じる瞬間ってありますよね。例えば、流行っているから取り入れてみたけれど、なんだかしっくりこないとか、楽しい場所だと言われて行ってみたけれど、心からは楽しめないとか。そういう違和感をスルーせずに大事にしていると、だんだん自分の進む道が見えてくるんじゃないかな、と思っています。
− これまでの正解や常識が、一瞬で通用しなくなるような不確実な時代を私たちは生きています。だからこそ、自分の直感や感覚を信じることが大切になるのでしょうか。
コロナ禍を経験したことで、それまで正しいと言われていたことが急に変わってしまうんだということは、本当に誰もが実感したと思うんですよね。日本は自然災害も多いし、世界の情勢も常に変化している。だからこそ、どういう風に自分で道を開拓して、大事な人と楽しく過ごせるか。私はこれからの生き方として、そういうことを考えていきたいです。
− haru. さんのように、「心地よさ」や「オルタナティブな選択」を体現していくその姿勢は、周りの人々やチームにどのような変化をもたらすと思いますか?
人は誰しも、それぞれ発言力や発信力など、何かしら周りに影響を与えるパワーを持っていると思うんです。例えば、チームの中でも、私1人が不貞腐れてたら、チームが明るく楽しく仕事をするなんて無理ですよね。それと同じで、自分の持つ影響力をきちんと自覚することは、すごく大切だなと思っています。ポッドキャストで何を話すかもそうだし、自分が選んだオルタナティブな道を楽しく生きようとする姿勢って、きっと自然と滲み出るものだと思うんです。それが周りの人たちにうまく伝わっていたらいいな、と思います。











