【History】 カルティエのパンテール
History
【History】 カルティエのパンテール
Panthère de
Cartier
text: makiko awata
1914年の誕生以来、Cartier (カルティエ) のクリエイションのシンボルであり続けている「Panthère de Cartier (パンテール ドゥ カルティエ)」。獰猛な表情に、官能を宿すしなやかな肢体。気高くも野生美あふれるパンテールの魅力を、大胆かつ個性豊かに表現したジュエリーは、時代を超えて今もなお進化し続け、見る者を瞬時に魅了する。そんな圧倒的なオーラを放つ、伝説のジュエリーのルーツに迫るストーリー。
「Panthère de Cartier」の歴史は1914年、オニキスとダイヤモンドで表現されたパンテールパターンの女性用ウォッチから始まった。最初の変化は1948年。“La Panthere (ラ パンテール)” の異名を持つ、独創的でクリエイティブな女性 Jeanne Toussaint (ジャンヌ・トゥーサン) によってもたらされた。ゆったりしたチャイニーズパンツにタタールブーツを合わせるなど、常識を覆す独創的な感性とスタイルで、パリの社交界で注目を集めていた Toussaint。何よりも自由を愛し、先見の明があって、エキセントリック。時代を先行く彼女の才能をいち早く見抜いた Louis Cartier (ルイ・カルティエ) は1933年、Toussaint を Cartierのクリエイティブ ディレクターに任命する。当時の女性にとって、その高い地位は異例なことだった。
Toussaint が1948年に手がけた「Panthère de Cartier」のジュエリーは、The Duchess of Windsor (ウィンザー公爵夫人) のために制作されたブローチだった。全身を表現したパンテールが、凛とした表情でエメラルドの上に佇むデザイン。そのブローチを気に入ったウィンザー公爵夫人は、翌年にも152.35ctのサファイアカボションにダイヤモンドとサファイアがきらめくパンテールを飾ったブローチをオーダー。それをベルトに飾って愛用したという。
滑らかな毛並みの質感までも表現した、今にも動き出しそうな生き生きと立体的なパンテールのジュエリーは、その革新的な美しさで、瞬く間に当時の先駆的な女性たちを魅了した。ウィンザー公爵夫人を筆頭に、1920〜40年代にパリのスタイルアイコンとして注目を集めた Daisy Fellowes (デイジー・フェロウ)、1940年代から世界的人気を誇ったメキシコ人女優 María Félix (マリア・フェリックス) など……「Panthère de Cartier」を愛したのは、いつも突き抜けた個性で時代を先行く女性たちだった。
そんな歴代の “パンテール ウーマン” に今春、4人の新たなアンバサダーが加わった。太陽のような圧倒的なエネルギーを放つイギリス人女優 Ella Balinska (エラ・バリンスカ)、社会貢献活動にも積極的に取り組む女優 Annabelle Wallis (アナベル・ウォーリス)、アジアを代表する俳優として確固たる地位を築く張震 (チャン・チェン)、そしてしなやかな魅力を放つスーパーモデルの Mariacarla Boscono (マリアカルラ・ボスコーノ)。それぞれの個性を引き立てるように、「Panthère de Cartier」のジュエリーをまとった4人にフィーチャーしたムービーも必見だ。
ときにリアルに、ときにグラフィカルに、ときに愛らしく…… メゾンが誇る創造性と職人技を融合し、野生味あふれる多彩な表情を大胆かつセンシュアルに描いたジュエリーは、時代の空気を反映し、永遠に輝き続ける。