【History】一枚の裏地がアイコンになるまで。バーバリーチェックバッグの物語
1968〜1971年頃のバーバリー・トレンチコートとチェックバッグ (c) courtesy of Burberry
History
【History】一枚の裏地がアイコンになるまで。バーバリーチェックバッグの物語
Burberry
Check bag
text: saki shibata
英国、トレンチコート、チェック。その3つの言葉から真っ先に思い浮かぶのは、Burberry (バーバリー) だろう。雨の多い英国で生まれたブランドは、天候から人々を守るための衣服を作り続けてきた。創業者 Thomas Burberry (トーマス・バーバリー) が開発した通気性と耐候性を兼ね備えた綿素材「ギャバジン」は、探検家たちとともにまだ見ぬ世界と向かった。その傍らでトレンチコートの裏地にひっそりとあしらわれた一枚のチェックが、のちに世界中の人々を魅了するアイコンになるとはまだ誰も知らなかった。
バーバリーチェックがブランドの象徴として存在感を高めていくのは、トレンチコートの裏地として採用された1920年代から約40年後、高度経済成長に沸く1960年代だ。それは洋服だけでなく、“バッグ”などに施されたことにより、世界的なアイコンへの道を歩み始める。今やブランドを象徴するチェックバッグは、どのような軌跡を辿ってきたのだろうか。その物語を紐解いていく。
トレンチコートの先駆けとなった「タイロッケン」は、前面にボタンがなく、腰にはストラップとダブルバックルの留め具が付いたシンプルなデザイン (c) courtesy of Burberry
まずは、チェックバッグが誕生するまでの話から始めよう。バーバリーチェックがブランドの象徴として存在感を高めるのは1960年代だ。それ以前、チェックはトレンチコートの裏地にひっそりとあしらわれた存在であり、外からはほとんど目に触れることがなかった。ではなぜ、その一枚のチェックは世界中で愛されるアイコンへと成長したのだろうか。
1856年、Thomas Burberryは「衣服は英国の気候から人々を守るべきである」という理念のもとブランドを創業。1879年に「ギャバジン」を開発し、未開拓の地を探求する探検家や冒険家たちにも支持された。1912年にはトレンチコートの原型となる「タイロッケン」を発表。そして1920年代、その裏地として採用されたのが、後にもう一つのブランドを象徴する存在となるバーバリーチェックだった。
裏地からバッグへ
それから約40年もの間、バーバリーチェックはトレンチコートの内側で静かにその役割を果たしていた。しかし1960年代、その運命を大きく変える出来事が起こる。1967年、パリ店のバイヤーが英国大使向けのファッションプレゼンテーションを準備していた際、ひとつのひらめきが生まれた。トレンチコートの裏地に使われていたチェックを取り外し、傘のカバーや荷物を包むために用いたのだ。その即興的なアイデアは大きな反響を呼び、バーバリーチェックを用いたアクセサリーの誕生へとつながっていく。人目に触れることのなかったチェックは、旅行用のボストンバッグやスーツケースをはじめ、デイリーバッグなどさまざまなアイテムへと姿を変えながら表舞台へと現れていった。
さらにセレブリティたちの支持も熱い。1990年代には、Oasis (オアシス) のLiam Gallagher (リアム・ギャラガー) がツアー中にバーバリーチェックのボストンバッグやスーツケースを愛用。またKate Moss (ケイト・モス) や、日本では安室奈美恵がチェック柄のアイテムを着用したことで、バーバリーチェックは音楽やストリートカルチャーを横断する存在へと成長していく。
チェックバッグの進化
こうして誕生したチェックバッグは、その後も時代のライフスタイルやファッションの変化とともに進化を続けてきた。チェック柄の見せ方もまた変化を遂げ、全面にあしらったデザインから、レザーと組み合わせたモダンなデザインまで、その表現は多彩だ。「Pocket Bag (ポケットバッグ)」や「Freya Tote (フレヤ トート)」など、時代を代表するバッグが登場するたびにバーバリーチェックは、新たな解釈を加えながら、そのアイコンとしての価値を更新し続けている。伝統的なハウスチェックでありながら、決して過去のものにはならない。その柔軟さこそが、世代を超えて愛され続ける理由なのかもしれない。
「ミディアム フレヤトート」(c) courtesy of Burberry
新たなアイコンの誕生
Thomas Burberry から始まった物語は、現在チーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるDaniel Lee (ダニエル・リー) へと受け継がれている。その最新形として登場したのが、2026年秋キャンペーン「A Good Sport」で披露された新作バッグ「Primrose(プリムローズ)」だ。1980年代をルーツに持つ、アーカイブベージュのバーバリーチェックを配したコーティングコットンキャンバス地に、スムースカーフレザーのトリムを組み合わせた本モデル。半円形のしなやかなシルエットは、ブランドが培ってきたクラシックな魅力を継承しながらも、どこか軽やかで現代的な印象を与えている。また「Pocket Bag(ポケットバッグ)」を現代風にアレンジした新作や「Zipped Tote(ジップトート)」など、バーバリーチェックを配したバッグがこの秋は多く登場している。クラシックとモダンが共存するこの逸品は、その長い物語の続きを担っていくだろう。











