Dressing People, Dressing Place:
RAINMAKER on the Ties Between Body and Kyoto

「着せる」ということ。RAINMAKERが京都で見つめた、服と土地の関係。

(左から)渡部宏一、Kanako B. Koga、鈴木親

Dressing People, Dressing Place: RAINMAKER on the Ties Between Body and Kyoto
Dressing People, Dressing Place: RAINMAKER on the Ties Between Body and Kyoto
Journal/

「着せる」ということ。RAINMAKERが京都で見つめた、服と土地の関係。

Dressing People, Dressing Place:
RAINMAKER on the Ties Between Body and Kyoto

photography: yuta kataoka
text: tomoko ogawa

RAINMAKERデザイナー渡部宏一、パリを拠点に活動するスタイリストKanako B. Koga、そしてフォトグラファー鈴木親。鈴木がKogaのキャリアに迫った第一回に続き、第二回では、京都で、京都人をモデルにした2027 SSのヴィジュアル撮影を終えたばかりの三人が、ファッションにおける「人を着せること」、京都という土地が持つ固有性、日本の服づくりが世界に向けて持ちうる強度について語り合う。すべての始まりは、渡部がコラボレーションしたアーティストTiffany Bouelle(ティファニー・ブエル)が、 Kogaの娘だったという偶然にあった。

鈴木親(以下、鈴木):今回の撮影は、これまでずっとRAINMAKERを支えてきたチームとは別の座組で、見え方を変えようという話でしたよね。たまたまコレクションでティファニー・ブエルさんの絵柄を使っていて、しかもその母親であるKanakoさんにスタイリングを頼むということになった。中々ない組み合わせなんだけど、そもそもティファニーさんの絵を使うことになったきっかけは何だったんですか?

渡部宏一(以下、渡部):2024年の秋頃、ティファニーが京都で展覧会をしていて、国内エージェントの方を通じて知り合ったんです。そこで「一緒に何かできたらいいね」という話になって、そこから2027年初夏シーズンに向けて動き出しました。彼女からは「母が日本人のスタイリストだ」とは聞いていたんですが、それがKanakoさんだとは知らなくて。

鈴木:ティファニー・ブエルという名前から、Kanakoさんには結びつかないですもんね。

渡部:今年の1月にパリで原画を受け取りに行ったとき、改めてお母さんの名前を聞いて。インスタで調べたら、 僕、すでにKanakoさんのことをフォローしていたんです。ティファニー自身もすごくおしゃれだし、彼女が描いてくれた絵を使った洋服で、母親であるKanakoさんにスタイリングをお願いするって、純粋に素敵なストーリーでいいなというところからスタートしていて。それで日本に帰って、鈴木さんとお茶をしながら打ち合わせをしたときに、次のシーズンはティファニー・ブエルというアーティストとコラボすること、その母親がスタイリストらしくて声をかけようと思っていることを話したら——。

鈴木:「よく知ってますよ」と。Kanakoさんがどんな仕事をしてきた人か、僕はその前から知っていたので、「これはもう無理矢理でも頼むしかない!」という話をして(笑)。いきなり連絡すると怖がらせるかもしれないから、「まず僕が一回聞きます」と言って、Kanakoさんに相談したら「えっ!」という反応で。

Kanako B. Koga(以下、Koga):だってそんなことあまりないじゃないですか。自分の娘の絵があって、それを使った服を、母親がスタイリングするなんて。

鈴木:僕はストーリーとして素敵だなと思いました。ティファニーさんの話は、Kanakoさんが高校生くらいの娘さんの話として昔から聞いていて。「娘がヴィンテージの毛皮に凝ってる」とか、「絵を描いていて、京都にも来ている」とか。だから別のところで話を聞いて、あ、それがKanakoさんの娘さんだとつながって。

Koga:向こうでも、私たちが親子だということを知らない人は結構いますね。

鈴木:僕の周りの若いモデルの子たちもティファニーさんをフォローしていたりするんだけど、お母さんが誰かはみんな知らない。だから、Kanakoさんの経歴を見せると、全員「マジっすか?」となる(笑)。

渡部:僕もその反応でしたからね。

鈴木:Kanakoさんがご自身のことを語らない方だから、見ていた側からするとすごい実績があって、仕事も憧れるようなものばかりで。逆に言うと、Kanakoさんの仕事を見たら、日本の予算感では頼みづらいと思っていたんです。

Koga:ずっとパリにいたので。

鈴木:だからこそ、ティファニーさんとのコラボなら頼みやすいんじゃないかと。

Koga:純粋に嬉しかったですね。しかも京都で撮影できるなんて。

鈴木:最初、RAINMAKERのことはご存じなかったんですよね?

Koga:そうですね。

鈴木:声をかけてから知ったのか、それともティファニーさんから聞いていたのか。

Koga:意外と、娘とは仕事の話をしないんですよ、お互いに。会ってもご飯の話とか、家族の話とか、旅行の話とか、ほぼそれなので。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

鈴木:聞くのはタダだし失礼に当たらないから、僕の中では必要なことだと思っていて。RAINMAKERとの付き合いのきっかけも、実はコロナ禍の頃に京都によく来ていて、たまたま暑い日に「涼しい長ズボンないかな」と思って、「あ、RAINMAKERってこの辺にあるんだ」とお店に入って買ったんです。そうしたら1階にいたカスタマースタイリストの濱ノ上鉄平さんからいきなりDMが来て。東京だったら「ちょっと怖いな」と思うんですけど、京都だからまあいいかと(笑)。それで濱ノ上さんと仲良くなって。その後、東京で自宅の近くのスタジオ周辺を歩いていたらデザイナーの渡部さんがいて。ちょうど、Viviane Sassen(ヴィヴィアン・サッセン)との撮影の話をして、「あれ良かったですね」と。そこから渡部さんとも近くなった。

渡部:びっくりしました。

鈴木:僕はそのスタジオをほぼ使わないんですけど、「なんでいるの?」と思って。

渡部:本当に、いろんな縁が重なって。今回、Kanakoさんがこのタイミングで日本に来られたのもそうだし、ヴィヴィアン・サッセンのときもそうだったんです。パリの写真美術館で彼女の作品を見て、改めていいなと思って。ダメ元で連絡してみたら「いいよ」という話になって、「いつやる?」とやりとりしているうちに「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭で京都に行く」という話を聞いて、そのタイミングで撮影したんです。

鈴木:今日は2日間に渡って、京都に住んでいる人たちをモデルに、本人のイメージを崩さずに、どう見せるかという撮影だったので。最初に祇園の「富美代」さんの女将さんの太田直美さんが出てくれたのが大きくて。あれで一気に京都での撮影というものに集中できましたね。

渡部:テンション上がりました。

鈴木:プロのモデルじゃないし、いつも着物をお召しになっている方だから、どんな服を着せるのかなと思っていたんです。でも黒のマットな壁の背景に、黒いジャケットを合わせて、アクセサリーが入ったのを見て、一気に今回の撮影のヴィジョンが見えた。RAINMAKERの服だからこそ、直美さんもスッと入れたのかもしれない。合わせに、和のテイストがあるじゃないですか。

「富美代」9代目女将 太田直美さん

「富美代」9代目女将 太田直美さん

Koga:直美さんに、「こういう撮影はあまりやったことがなくて」と言われたんです。メンズっぽいジャケットで、本人の着ているものとは全然違うから。説明するときに、「この合わせが着物風で、私はここが好きなんです」と伝えたら、「あー」とおっしゃって。なぜ私がこれを着せたいのか、そこでわかっていただけたのかなと。

渡部:直美さん、「あのジャケットスーツが欲しいんだけど」と言ってくださって。

Koga:よかった、嬉しいですね。綺麗なジャケットですもんね。

渡部:すごく嬉しかったです。似合っていたし。

鈴木:こだわりのある方だろうから、本人が着ている感じは残しつつ、新しいチャレンジがハマると嬉しいですよね。

Koga:本当に。

鈴木:今回、Kanakoさんから「京都の地元の人で撮りたい」と提案してくださって。これはもう、いい人を出すしかないと思って、二人でキャスティングを考えて。

Koga:本当に嬉しかったですね。いろんなモデルさん以外の人を撮れるというのが一番好きなタイプの仕事だから。

「両足院」伊藤東凌さん

「両足院」伊藤東凌さん

鈴木:ロケーションも、祇園の北側や、ちょっとガヤッとした西陣とか。外国の人が来て撮るような京都じゃない京都を、日本人だからこそ撮りたいと思って。

Koga:あまり行ったことのないような場所でした。

鈴木:いわゆる人がイメージする派手な京都じゃないし、特定はできないけど、見たら京都だとわかる場所。RAINMAKERが京都の服だから、京都で派手にやりすぎると着物のように見えてしまう。でも街で普通に着る服とすれば、また見えてくるものがあるから。

Koga:コンテンポラリーでいいと思いました。

鈴木:ヘアのTSUBASAくんも、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)のキャンペーンやSupreme(シュプリーム)のルックなどいろんな面白い仕事をしている人で、僕や北村道子さんのような無茶を言う現場にも来てくれる(笑)。彼からすると北村さんはおばあちゃんくらいの年齢だし、僕はお父さんくらいの年。でもこういう仕事だから、世代を超えてみんながフラットにいられる。

(左から)Kanako B. Koga、太田直美、渡部宏一、Tsubasa

(左から)Kanako B. Koga、太田直美、渡部宏一、Tsubasa

Koga:やりすぎない人ですよね。意外とみんな自分を出したくて、つい力が入ってやりすぎる人が多いけど。

鈴木:彼は本人を活かすのが上手で。

Koga:交通整理もしてくれますしね。

鈴木:今回、渡部さんはKanakoさんと仕事をして、すごいと思ったところがたくさんあると思うんですけど。

渡部:まず最初に驚いたのは、Kanakoさんが入られた朝、サンプルも直前に上がってきた状態だったんです。事前にお渡ししたのはイラストでのラインナップと、今シーズンのテーマが書かれたプレスリリースだけ。それなのにパッと見て、ほぼ全体を把握して、理解もしてくださっていた。僕がベースで考えていたアイデアもすぐにブラッシュアップしてくださって、コーディネートの時間は2時間ほどでほぼ全部終わってしまった。細かく説明したわけでもないのに、最初の資料と一見でほぼ把握なさっていたことに一番驚きました。

鈴木:僕が見ていて思ったのは、どの人に何を着せるか、というのがKanakoさんの中で一番大きいんだなと。人が着るものだからこそ、マネキンとして見ていない。多くの場合、モデルさんはマネキンになっていってしまう。でも今回はモデル以外の人も交ぜて、その人以上の何かをスタイリングで引き出してくれる。黒人の子もアジア人の子もいて、直美さんもいる。本人が着そうな雰囲気もありつつ、少しだけファンタジーの要素もある。完全に非現実までいくとコスプレになってしまう。現実と非現実の間というのが、ファッションで一番いいところで、自分を少しだけ違うところに連れていってくれるから。

Koga:そうですよね。それが面白いですよね。

鈴木:内面はいきなり変えられないけれど、服を少し変えることで、自分らしさは残したまま、ちょっと違う見え方になる。学生にもよく言うんです。
カメラマンとデザイナーだけだと、服がよく見えるほうを選んでしまうんだけど、Kanakoさんは、着ている人がよく見えるほうを微調整しながら選んでくれる。だから、そこに接点ができる。そこが僕が一番感動したところです。その人が「変わったな」と思える瞬間が、撮っていていいなと感じるところなので。

Koga:Hermès(エルメス)で、300人くらいの中から40人を選ぶキャスティングをやったんです。みんなモデルではなく普通の人で、体も髪の色も肌の色も全部違う。その中から、その人に合わせて服を選んでいく。それをものすごい数こなしてきたから、人を見て「この人がこれを着たらこう見える」というのが、訓練されているのかもしれない。

鈴木:その人のパーソナルを活かしながら、ちゃんと力を加えていますよね。

Koga:コロンビアの田舎に行って、おじさんがいて「この人を撮りたい」と言ったら、みんな「なんで?」となったんです。でもスタイリングしたら、「おー!」とみんなから似合うと言われて、本人もスッとして嬉しそうで。それはやっていてすごく面白いなと。

鈴木:洋服の力ってそこだったりしますよね。

Koga:すごいと思います。ボロボロの服を着てモソッとしていた人だけど、着替えたらみんなが「ほとんどモデルみたい」と言っていて。そういうのが、すごく好きなんです。

渡部:ポートレートで撮らせていただく方のコーディネートを、すごく楽しんでやられていますよね。その方の背景やいろんなことを考えながら組んでくださるので、聞いていて楽しい。

鈴木:RAINMAKERだと、京都の感じが残っているから、京都の人が着る良さがより出ますよね。地域性というものを取り入れる傾向が強くなってきている今、京都にいる人はそれを他より多く持っているのに、使わないんですよね。当たり前すぎるのかもしれないけれど、外から見るとすごく魅力的で。それをRAINMAKERが今回の撮影でやることで、京都の人が良さに気づいてくれたらより嬉しいですよね。

Koga:渡部さんは、例えばヴィヴィアン・サッセンと一緒に仕事をされていたり、意外と思い切りのいいブランドだなと思って。興味のある人にはどんどんアプローチして一緒に仕事をされているのは、いいですよね。

渡部:構造や表層的にも、着物の文脈は割と意識しています。コーディネートを組むときも、ジャケットとシャツとスカーフというアイテムだけれど、Vゾーンの見立ては着物と襦袢と半襟、というふうに、和の要素や自分たちのルーツに変換することは意識していますね。コスプレにならない範囲で、自分たちのルーツを表現したいなと。今回、Kanakoさんに聞いてみたかったのは、今くらいの変換や表現が、海外の人から見て「日本らしいな」と伝わる言語になり得ているのかどうか。自分ではわからなくて。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

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Koga:あまりになりすぎると、仮装まではいかなくても「着物」になってしまう。だから今くらいがいいと思います。和は感じますし。

鈴木:日本人が作っているという感覚はすごく感じる。RAINMAKERは洋服だなと思うけれど、どこかに着物の印象が残っている。だから京都でも合うし、前回パリで撮ったときも浮いていなかった。あれが着物だったらまた違って見えてしまうから、そこが渡部さんの正解だと思います。

渡部:この塩梅で理解してもらえているのかな、という不安はずっとあって。

Koga:渡部さんは「RAINMAKERらしい」という考えがしっかりあって、こちらが「ああしようか」「こうしようか」といろいろ言っても、「こっちかな」とパッと返ってくる。今のスタイルでいいけれど、なるべく自分の「これ」というイメージをキープしてほしい。周りからいろいろ言われると、ブレるじゃないですか。そこはブレなくていいところだから。

鈴木:アドバイスを聞きすぎてもダメだし、聞かなすぎてもダメですよね。たまに思うのは、やることは決めていなくても、ここはやらないというラインを決めている人が、いい仕事をしているなと。やることを決めてしまうと限界があるけれど、やらないラインを決めている人は、いいことがあったらどんどん取り入れていける。渡部さんも、僕が無茶ぶりしたら止めるだろうなという気がする。

Koga:渡部さんには本当にモロッコに行っていただきたくて。アフリカの人のかっこよさを見てほしい。本人たちは全然かっこいいと思っていないと思うけれど、みんな身長が高くてスラッとしていて、ふわっと歩いていて、すごく気品がある。普通のその辺のおじさんなんですけど。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

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鈴木:無自覚のかっこよさが一番かっこいいですよね。直美さんも無自覚な美しさがあるから、一枚のジャケットを着たときの強さにハッとする。モデルさんの良さは、逆に言うとコンスタントな綺麗さだったりするんだけど。

Koga:渡部さんは、バランス的に服を綺麗に見せてくれるから。今後、ヨーロッパや東南アジアでの展開とかも考えているんですか?

渡部:国外で取り扱っていただいているお店はそんなに多くないので、海外でもっとチャレンジしていきたい思いがあって、パリでの展示会も続けています。日本人のチームで日本で撮る撮影だけじゃなくて、向こうの人の感覚で見たときのコーディネートや写し方にチューニングしたものも必要だろうと。

Koga:でも私から見ると、日本にはすごくいいものがたくさんあって、いいカメラマンもチームもいる。例えば、パリのスタイリストRoberto Piu(ロベルト・ピウ)との仕事も素敵だと思うんですけど、正直かなりロベルトらしいテイストが強くなる。ヴィヴィアン・サッセンとの仕事もいいけれど、ヨーロッパのテイストに近くなると、向こうで見たら「まあ普通」と思われてしまう可能性もある。だったら逆に、日本っぽくしてもいいのかなと。

鈴木:まさに今回みたいなことですよね。

Koga:完全に日本をやらなくてもいいし、日の丸がついていなくても、向こうの人が見たときに、どこかに日本の良さがあるとわかるように自然に日本っぽさが浮かんで、コンテンポラリーに見せればいい。そのほうが差が出ると思います。あまりこだわりすぎても良くない。本当に見たいのは、世界観が面白く見えているところだけなんです。

鈴木:渋谷の横断歩道で撮ったら、外国人が撮っている日本になってしまうけれど、今日みたいであれば。

Koga:何気ないところで撮れたほうが絶対かっこいい。

鈴木:僕らから見ると普通すぎると思うことが、外国の人からすると特別だったりする。日本のエディトリアルで撮るとき、スタッフから「それ普通ですよ」と指摘されると、「仮にこのセットを外国で作ろうとしたら何百万とかかる。でもこれが普通にあるんだから、これで行ったほうがプラスだ」言うと、みんなある程度納得してくれる。

Koga:向こうから見ると、いまだに日本ブランドの見せ方が「外国風」であることが、ずっと残念だなと思っていて。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

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鈴木:写真の世界でも同じことが起きてますよね。例えばRyan McGinley(ライアン・マッギンレー)が流行ったら、日本ではラフにライアン風が増える。でもそのまま海外に持っていくと「真似だ」と指摘される。本物がいるから。だからこそ、自分たちらしさを出すことが大事で。ほかと似ていない良さがありますもんね。

Koga:日本の服を見ていて、パターンの作りが違うなと思うことはあります。

鈴木:骨格を見ると、黒人や白人と日本人では体型が違うので、パターンが変わるのはその違いがあるからですよね。

Koga:時々思うのは、首周りや肩のカットが特殊な服って、フィッティングモデルが着るといいけれど、それ以外の5、6人に着せてみたら、全員に合わない、ということは多いんです。だから時々、フィッティングモデルではない人にも何人か着てみてもらうと、売るときに「こういう体にしか合わない」というのがわかる。みんな肉付きや後ろのそり加減が全然違うので。

鈴木:渡部さんはテーラリングをやるから、そこは得意ですよ。真骨頂になると思います。

Koga:多くのブランドはフィッティングモデルのサイズでしか調整しないけれど、いろんな人に着てもらって見たほうがいいと思います。

渡部:既製服だから、できるだけ最大公約数を目指してはいますしね。

鈴木:撮影でルックブックやランウェイのサンプルそのままを見ると、「これは実際に誰に似合うのかな」と思うことがある。このモデルには完璧でかっこいいけれど、撮影に持ってきたとき難しいな、というのは僕らも感じますね。

Koga:でも日本の生地は、ヨーロッパから言わせると普通でもかなりいい生地なので、向こうの人はすごく使いたがっている。ただ高いから使えない。なのに、日本のブランドがイタリアの生地を使っていたりするのは、残念だなと思います。日本にこんなにいい生地があるのに。

鈴木:Loro Piana(ロロ・ピアーナ)が京都の西陣織のHOSOOさんと協業したり、GUCCI(グッチ)がわざわざHOSOOさんの生地を使いたいと言っているのに、日本人はそこまでそこに注目してなかったりする。

Koga:でもRAINMAKERは使っていましたよね。

渡部:はい、毎シーズンではないけれど、割とちょこちょこ使っています。

鈴木:その積み重ねが京都らしさになったりもする。日本の生地をうまく使っている日本ブランドが残っている気がします。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

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Koga:周りのデザイナーを見ていると、みんなシステムの速さのために欲求不満みたいになっていて。「やりたかったけどやらないまま絵型が進んで作られてしまった、本当はこうしたかった」というのが多すぎて、みんな本当にストレスが溜まっているなと。楽しいはずの仕事が、苦痛のほうが多くて。そういう「疲れている服」って意外とわかるんです、見ていて。

鈴木:葛藤を感じるみたいな。

Koga:服として見たときに「作りが甘いな」「パターンに問題があるな」とわかる。スピードが早すぎてきちんと作られていないんですよね。

鈴木:せっかくこの仕事を選んだんだったら、自分で選びとっていきたいですよね。

Koga:ラッキーなことじゃないですか、この仕事をやれているのって。だからなるべく楽しんでやりたいし、みんな仲良く、幸せに一緒にやれるのが一番いいじゃないですか。

鈴木:美術大学の学生にたまに言うんです。「お金を稼ぎたいなら金融を勉強したほうがいい」と。「こういう仕事は、自分がやりたいことだからこそ楽しむのが優先で、そこにお金がついてきたら嬉しい」という考え方にしないと。「誰々がこれだけ儲けていて自分はそうじゃない」と考え始めたら、何をやっても幸せにならないので。

Koga:特に最初はね。でも好きでずっと続けていけば、周りも、お金も少しずつ一緒についてくると思う。

鈴木:だから、RAINMAKERが東京でなく京都をベースにやっているのは、僕からするとすごくいい選択だと思います。自分のルーツがどれだけ出るかが大事なので。

RAINMAKER SPRING & SUMMER 2027

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鈴木:最後に、Kanakoさんが日本でやってみたい仕事はありますか。

Koga:いろいろ全部やってみたいです(笑)。

鈴木:RAINMAKERを基盤にすると、京都の面白いところが関わってこれる。本来スタイリストがデザイナーと仕事をするときは、作るところから入るともっといろんな広がりをするから、Kanakoさんが入ってくれたら、僕らが考えている以上の何かになる。着せるだけじゃなくて、Kanakoさんがショーで関わってきたみたいに、作るところから関わってもらえたら、もっといいものになりますよね。

Koga:ショーのときは特に、スタイリングを考えながら作るから全然違ってきます。アクセサリーを前もって作ったり、生地も「この柄ならこのコートに合わせやすいからこっちの生地に」と指示したりはしています。

鈴木:そうすると完成度が高いですよね。

Koga:そう思います。

鈴木:これだけ京都に人が来ているということは、京都が共通認識になる。昔は京都を知らない人もいたから「京都らしさ」と言ってもピンとこなかったかもしれないけれど、今はありとあらゆる人達が来ているので、そこに「京都」と添えるだけで興味を持ってくれる。それをうまく使うのはプラスになるなと。

Koga:かっこよく使ってほしいですね。

鈴木:ヨーロッパや欧米と共通言語を使う方法論があって、でも作るものは日本的な面白さがある。それが発表には一番いい。市場原理に合わせて作るものを変えてしまうとフラストレーションが溜まる。でも自分のルーツや作りたいものを作ったうえで、いいスタイリストが市場に合うようにアジャストしてくれると、フラストレーションが溜まらない。スタイリストがデザイナーに関わることの重要性は本当に大事だなと。主役は最終的にデザイナーになるけれど、作るときは年齢も関係なくみんなが同格で集まる。パッと見、ファッションデザイナーはランウェイのフィナーレは一人で出ているけれど、アトリエだけでなくMD、営業とたくさんの人が一緒に作っている。いろんな人が関われるブランドは大きくなるから、日本のブランドもそうやっていくことが大事だなと、勝手にまとめました(笑)。

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