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【東京の女の子】GIRL no.4 彩由

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Model: AYU
Photographer: Takashi Homma
Hair&Makeup: MAI FUJITA(mitsouko)
Editor&Writer: Tomoko Ogawa

幅広い分野で写真表現の可能性を様々な方法で追求し、国内外で注目される写真家ホンマタカシ。彼が「東京のいま」を生きる女の子の素顔をポートレートし、彼女たちの生の表情と声を届ける「ABOUT A GIRL」第5回目は、現役大学生4年生の彩由さん。卒業後の進路も決まっているという、現在22歳の彼女の等身大の人生観とは?

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【東京の女の子】GIRL no.4 彩由

—東京で好きな街ってどこですか?

彩由:4年間、渋谷の大学に通い続けているので、道玄坂のほうじゃなくて宮益坂は大好きです。落ち着く。あの辺が一番いいかもしれないです。特に何があるわけでもなくて。

ホンマ(以下、ホ):宮益坂?

彩由:汚いっちゃ汚いんですけど、ちょっと古びた煉瓦の建物とかがあるんです。ああいうのが好きで。表通りじゃなくて、六本木通りと246の間の路地裏を通っていくのが楽しい。ヒカリエから降りてずっと上がっていくと、コーヒー屋さんとかお弁当屋さんとかあって、昼時だとオフィスの昼休憩の人がわんさかいて、すごい落ち着きますね。もはや、愛着なのかもしれないですけど。

ホ:ちなみに、尾崎 豊って知ってる?

彩由:知ってます。めちゃくちゃ好きですよ。記念碑があるクロスタワー、毎日通ってますし。カラオケでも歌います。

ホ:何歌うの? 「卒業」?(笑)

彩由:「卒業」も歌いますし、「I love you」も歌いますし、「Forget-me-not」とか好きです。私の周りにめっちゃ尾崎 豊好きな子がいて、その子の影響もあるかもしれない。

ホ:カラオケだとほかに何歌うの?

彩由:(山口)百恵ちゃん。「プレイバック Part2」と「さよならの向こう側」が大好き。「酒と泪と男と女」とかも好き

です。いい曲。あの辺の日本の歌謡曲が好きで、めっちゃ歌う。iPhoneにプレイリストもあります。

—歌謡曲を好きになったきっかけってあるんですか?

あの時代の曲ってビートの裏の音が厚くて、大好きなダンサーさんがそれで踊っているのを見て。あとはあれだ、横須賀のカラオケが付いている個人の居酒屋さんでバイトしてたときに、お客さんがけっこう年配の方で、歌う曲もその年代の曲が多くて耳に残っているのもあったのかもしれない。

ホ:4月からはどういう仕事をするのかな?

彩由:金融関係です。めっちゃお堅いですよね。こんな頭の色してて。これから黒く染めるつもりなので、今最後の悪あがきをしています。だって、もうできなくないですか? 営業なんて、もってのほかじゃないですか。

ホ:営業なんだ?

彩由:そうなんです。私、英米文学科なんですけど、特にCAさんになりたいわけでもなく、どの企業に行きたいとかもなくて、漠然と金融だったら何となく世界の中心じゃないですけど、世界がどう動くかがわかるかなと思って。一番最初に内定をいただいたのがその会社だったので、自分の第一希望の会社としてはベストで、そこに決めました。

—ちなみに、芸能界は考えなかったんですか?

彩由:羨ましいなって、華やかだなって思いますけど、そこまで覚悟は決めれなくて。私は漠然とやりたいと思いながらも、並行して保険をかけているというか。大学を中退してまでその仕事をするかと言われたらたぶんできないし、内定をもらった企業を蹴ってまでそこにいくかと言われたらできないかなって。歳を重ねたらそんな世界にいれなくなるから、今の、サロンさんに声をかけてもらってモデルをやるっていうくらいがちょうどいいかな。チヤホヤ度的には(笑)。

ホ:(笑)いいね! すごいクールだね。金融とか保険とかそういう言葉が出てくるとこが面白いよね。

彩由:性格的な問題なんでしょうかね。手堅いんですよね、勉強にしろ部活にしろ。

—部活は何をされているんですか?

彩由:高校のときはダンス部で、今はダンスサークルなんですけど、それなりに役職がほしいタイプなんですよ。だから、芸能界に入ったとしても、一気にバーンと出られるなんて難しいじゃないですか。それが嫌なのもありますね、きっと。コツコツやれないというか、すぐ見返りがほしいというか。

ホ:やったらやった分だけね。

彩由:そうです。ストレートに返ってこないと不安になるんですよ。間違ってるんじゃないか、みたいな。でも、逆に好きなようにやっていますけどね。その場その場でこれをやりたいと思ったらやる。でも水面下では、大学に行っているっていう保険はあるので。

ホ:最近はダンス率が高いね、やっぱり。

彩由:高いですか? 最近、多いですよね。私の周りでも、ちょっとやってたとか今やってるという人がほとんどですね。バイト先にしてもそうだし。

ホ:そもそもなんでダンス なんだろ?

彩由:前に出れるから(笑)。中学のときはバレーボール部だったんですよ。でも高校に入ってまで、みんなが見に来れない試合に出るよりも、ちょっとずつ前に出てスポットライトを浴びたいみたいな気持ちが、ちょいちょいあって。定期公演もやっていて、ダンス部という一種のブランドがある高校だったんで。でも、ダンスは良かったです。それこそ芸能界への欲が分散された気がする。これくらいで私はいいみたいな。ダンスって、単純に動けば伝わるものだから、考えて動くことが全部つながっていくじゃないですか。それはすごく楽しかったですし、自分に合っていると思いました。

ホ:客観的だね。同じようなことをやっている人はいるけど、自分で気がついてない人がたくさんいるから。自分のことをちゃんと説明できるからすごい。

彩由:理屈っぽいんです。どこからから突かれたときに、必ずスッと出せるように用意しているんですよ。わかります? 「どうしてこんなことしてるの?」って聞かれたときに、「はい、これですよ」という理由をいつも用意しているというのはあるかもしれない。

ホ:じゃあ、面接はすごい得意じゃないですか。

彩由:得意というか楽しかったです。あんまり緊張しなかったです。会社によっては圧迫もあるんですよ。それも全然大丈夫。「結婚したい」って言いましたもん、面接で。

—もちろん、「結婚退職します」とは言ってないんですよね?

彩由:言ってないです。逆に、「結婚しても働ける会社なので……」みたいなふうには持っていきましたけど。だって、何したいのかって言われても入社前にはわからないじゃないですか。どういうことをするのかもわからないのに。だから、私は結婚しますと。

ホ:金融なんかいったら、モテモテじゃないですか。

彩由:そんなことないです。周りはみんなかわいい子ばっかりで。営業職なのでみんな綺麗で頭がいい。もっと上の大学の出身や地方からも来ているし、頑張っていけるかなという不安はありますけど。

ホ:30歳くらいになったらどうなってるんだろね。

彩由:変わんない気がしますけど。

ホ:その頃にどう客観視してるか楽しみ。

彩由:もう、達観してるかもしれないです(笑)。

ホ:一通りやったからってね。

彩由:それこそ、ひっそり暮らしてる気がします。子ども産んで結婚して。本当は、20歳までに結婚したかったんです。で、卒業するくらいに子どもを産んでいれば就職しないでいいかなーって。でも、出会えなかったです。無理でした。もう終わったと思った。私の人生計画は狂ってるんです、既に(笑)。

 

彩由
1996年神奈川出身。都内の大学4年生。サロンモデルなどとして活動していたが、4月からは金融業界に就職する。
Instagram:@ayuayu105dnc