写真家・柏田テツヲによる写真展『STRANGER』が AL にて開催
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写真家・柏田テツヲによる写真展『STRANGER』が AL にて開催
Tetsuo Kashiwada
To Hold Photo Exhibition At AL
by Daisuke Yokota
写真家・柏田テツヲによる写真集『STRANGER』の刊行を記念して、同タイトルの写真展が代官山の AL tokyo にて5月31日(金)より開催される。
本シリーズでは、柏田がアメリカを旅しながら撮影し続けた、市井の人々と情景が収められている。旅の目的は、アメリカに根付く文化や人々の姿を写真で捉えること。しかし旅が進むにつれ、文化や人種の差を実感し、自身と彼らの間にそびえる壁について悟っていく。さらに立ち寄る街のコミュニティに足を踏み入れることで、異文化に触れ、人種の違いを感じ、その土地にゆかりのない人間には見えないものや理解できないことの存在を感じとった時、自身がただ旅をしている「よそ者」であることが色濃く浮かび上がる。“異質なもの (STRANGER)” は被写体でなく、自分自身のほうである、ということだったのだ 。撮影当時を振り返り、作家は以下のコメントを残している。
アメリカというとニューヨークやロサンゼルスなど、東西の一部の沿岸の大都市を中心に語られている。ここ何年もアメリカを訪れて感じることはそういった沿岸部の大都市だけではアメリカという国を語れないこと、理解できないという思いだった。きっとアメリカの内陸には、沿岸部の大都市には見えない、未知なる世界が内陸には存在していると思う。
アメリカを知りたいと思う興味と探究心に導かれて2ヶ月の間、東西を横断し、南北を縦断する旅に出た。車を走らせ窓からの風景のように、立ち寄る土地や町や州ごとによって住む人種も違えば文化も一瞬で変わる、法律だって全く違う。
ある小さな町の片隅で写真を撮っていると、向かいの家の玄関から女性が出てきて急に、「あなた撃たれたいの?」と言った。ハイウェイの出口から降りた別の町では、入った瞬間に後ろから車をつけられたと思えば急に前に回り込み男が出てきて「この町はよそ者を受け付けないから今すぐ出ていきなさい」と忠告された。そういった経験をすることによって人種の違いを大いに実感し、それは自分が日本人という単一民族で生まれたことを突きつけられ、ただアメリカにお邪魔しているよそ者ということだ。
その土地にゆかりのない人間には見えないものや、理解できないことが確実に存在している。その異質なものを知るためにカメラを用いたのだがカメラを覗いた瞬間に悟ったのは、異質なものは被写体でなく、紛れもなく自分自身の方だったということだ。写真を見返すとそれはよりはっきりと現れていた。
被写体の目線や距離感などによってありふれた日常が、どこかミステリアスに感じられる写真の数々。アメリカという異国の文化や土地、人々に肉薄しようとしたものの、本質的には理解することができずに溝を感じた、“よそ者” の寂しさや孤独感も本作のひとつのテーマと言えるだろう。会期2日目の6月1日(土)14時から、柏田テツヲと本書デザイナー飛嶋由馬によるトークショーも予定されている。壮大なロードムービーさながらの哀愁漂う作品世界を覗きに、ぜひ足を運んでみて。
<プロフィール>
柏田 テツヲ (かしわだ てつを)
1988年、大阪府生まれ。ロードトリップの写真で評価を得ており、2017年にはアメリカのモー テルと周辺の人々を撮影した個展「MOTEL」を開催、同名の作品集を刊行。過去の作品集から 一貫して、どこかに寂しさを湛えながら、まるで一本の映画のような世界観をまとった作風を 持つ。現在は東京を拠点にポートレート、ランドスケープを中心としたコマーシャルワークで 活躍する傍ら、自身の作品制作や発表にも力を入れている。
書籍情報 | |
書籍名 | STRANGER |
版元 | ampersands inc. |
装丁 | 総革装、上製本 |
体裁 | 234 × 273 mm |
ページ数 | 96ページ |
発行部数 | 500部 |
価格 | ¥3,800 |
展覧会情報 | |
展覧会名 | STRANGER |
会期 | 2019年5月31日(金)〜6月13日(木) |
場所 | AL |
住所 | 東京都渋谷区恵比寿南 3-7-17 |
開廊時間 | 12:00~19:00 (最終日のみ18:00まで) |
休廊日 | 会期中無休 |
問い合わせ先 | 03-5722-9799 |
HP | www.al-tokyo.jp |