Loewe foundation craft prize
announces its 2019 winner

「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019」大賞は日本人クラフトアーティストの石塚源太

「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019」審査員団 | © Loewe

Loewe foundation craft prize announces its 2019 winner
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「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019」大賞は日本人クラフトアーティストの石塚源太

Loewe foundation craft prize
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by Manaha Hosoda

プレゼンターには女優、鈴木京香が登場。特別賞にも日本人アーティスト、高樋一人が選出。

ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019 | © Loewe

ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019 | © Loewe

2019年度の「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」の結果発表が6月25日に東京・赤坂の草月会館にて行われた。

今回で第3回目の開催となる「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」は、ロエベ ファンデーションが卓越した技術を持つモダンかつ新鮮なクラフトマンシップを賞賛、支援することを目的に2016年より立ち上げ、これまでに数々の優れたアルチザンを輩出してきた。今回は、100カ国以上の国のアーティストから応募された2500を超える作品の中からアーティストやアルチザン、エッセイスト、キュレーター、そしてデザイナーから構成される審査委員によって厳選されたアーティスト29名がファイナリストに選出された。日本人アーティストは過去最多となる10名が選出されたことでも大きな話題を集めた。

会場には、Jonathan Anderson (ジョンサン・アンダーソン) をはじめ、審査委員長である Anatxu Zabalbeascoa (アナツ・サバルベスコア)、前回の大賞受賞者である Jennifer Lee (ジェニファー・リー)、日本が誇るデザイナーのひとりである深澤直人、建築家兼工業デザイナーの Patricia Urquiola (パトリシア・ウルキオラ) といったデザイン、建築、ジャーナリズム、評論、及び博物館キュレーターシップの各分野を代表する著名人で構成される審査員団が集結。大賞のプレゼンターとして、クラフト、アートに造詣の深い女優の鈴木京香も登場した。

栄えある大賞に選ばれたのは、日本人クラフトアーティストの石塚源太。1982年に京都で生まれ、京都市立芸術大学院で美術修士を取得した後、精力的に作品を発表し、国内外から高い評価を獲得。近年では、イギリスにあるHall & Coe や京都にあるアートスペース虹で個展を開催しており、作品はミネアポリス美術館ならびにロンドンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館にて常設展示されている。ロンドンで石塚の作品を観た同プライズ第一回目のウィナー Sara Flynn (サラ・フリン) によるすすめもあり、応募を決意したという彼は、スーパーで見たネットに入ったオレンジというシンプルなモチーフをスタート地点に作品を制作。漆という伝統的な素材をモダンな姿に蘇らせた今回の出展作品「Surface Tactility #11」には、Jonathan Anderson も大きな賞賛を送っていた。大賞受賞者には銀のトロフィーと賞金5万ユーロ(日本円で約600万円)が授けられた。

特別賞には、スコットランドのエディンバラを拠点に活動する Harry Morgan (ハリー・モーガン) と日本・名古屋生まれで現在はイギリスを拠点とする高樋一人の二人が選出。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館やドイツの欧州現代ガラス美術館などで作品が常設展示されている Harry Morgan は、普通では考えられない素材を組み合わせたり、古くからある技法を実験的に用いたりすることで知られているアーティスト。今回は、同じケイ酸を主成分とするガラスとコンクリートを組み合わせ、相反するようで実は同じ成分であるふたつ素材の個性を際立たせた作品「’Untitled’ from Dichotomy Series」を出展。また、園芸とアートとガーデンデザインを学んだ後、有機物のみを使った作品を発表している高樋一人は、使用する素材の多くを自ら育てているという。素材の導きに身を任せ、「自然を無理やり作者の思い通りにすることはできない」というコンセプトを掲げる高樋は、サンザシの小枝を用いた非対称な楕円形の立体「KADO (Angle)」を発表した。

「今年は審査が非常に大変になるだろうと予想していました。応募数が何より多かったですし、日本からの応募が実は一番多かったんです。大賞を受賞した彼は、歴史ある漆の知識を使いながらも次世代の作品を作り出したという点が決め手でした。審査員も彼の作品は今この時代に何が起きているかを伝える作品だという風に評価しました。」
授賞式の後に Jonathan Andeson は、これから同プライズを志すアーティストに以下のようなメッセージを伝えた。
「ロエベ ファンデーション クラフト プライズだけでなくどんな賞にも言えることですが、前に応募したことがあったとしても、もう一度挑戦してみてください。今回も3年連続で応募してくれた人がいましたし、大賞を受賞した彼も初めての応募というわけではありません。クラフトに携わり、スキルを持っている人であれば誰でもチャンスがあるんです。」

「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ2019」ファイナリスト全29名の作品は、東京・赤坂の草月会館にあるイサム・ノグチ作の石庭『天国』にて7月22日まで展示される予定だ。