Dior
HAUTE COUTURE AUTUMN-WINTER 2019-2020 COLLECTION

フェミニニティと建築の見事な融合、Dior (ディオール) 2019-2020 秋冬 オートクチュール コレクション

Photo : Camillle Vivier pour Dior

Dior HAUTE COUTURE AUTUMN-WINTER 2019-2020 COLLECTION
Dior HAUTE COUTURE AUTUMN-WINTER 2019-2020 COLLECTION
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フェミニニティと建築の見事な融合、Dior (ディオール) 2019-2020 秋冬 オートクチュール コレクション

Dior
HAUTE COUTURE AUTUMN-WINTER 2019-2020 COLLECTION

by Manaha Hosoda

「現代の女性は画家のキャンバスを必要としない:彼女自身の肉体もまたその役割を果たすのだから」
1944年 MoMA にて開催された『Are Clothes Modern?』展のキュレーションを手がけたモダニティの思想家 Bernard Rudofsky (バーナード・ルドフスキー) の考察からインスピレーションを受けた Maria Grazia Chiuri の実験的クリエイション。

Dior (ディオール) が2019-2020 秋冬 オートクチュール コレクションをパリにて発表した。

ショーの舞台となったのは、メゾン創業の地であるアヴェニュー モンテーニュ 30番地。これまで歴代アーティスティック ディレクターたちが数々の伝説を生み出してきたメゾンにとって非常に重要な意味を持つアドレスだ。Maria Grazia Chiuri (マリア・グラツィア・キウリ) は今回、フェミニストのアーティスト Penny Slinger (ペニー・スリンガー) にコレクションのアイディアと呼応する幻想的なショーの舞台装飾を依頼。3週間をかけて作られた会場は4つのエレメントと自然の神秘に着想を得ているという。


女性の身体と衣服の関係を想いを巡らせてきた Maria Grazia Chiuri に本コレクションでインスピレーションを与えたのは、古代の寺院建築や複数のパリの建築物でみられるカリティアード(女性像)。ショーのティーザー映像でフィーチャーしていた故 Agnès Varda (アニエス・ヴァルダ) 監督によるドキュメンタリー作品『女像柱たち (原題:Les dites cariatides)』に登場するカリティアードからもインスピレーションを受けたという。

コレクションの基調となったのは、ブラック。かつて Christian Dior (クリスチャン・ディオール) が自著『ファッション小辞典』で「私はブラックに関して丸一冊の本を書ける」と明言したほど、ブラックはメゾンにとっても重要な色。Maria Grazia Chiuri はわずかなアクセントカラーのみを用い、素材使いやシルエット、テーラリングでクチュールの真髄を伝えた。

そこで際立つのが、ファーストルックのホワイトドレスだろう。古代ギリシャで女性が着用していたペプロスと呼ばれるチュニックを着たカリアティードのイメージから出発した本コレクションを象徴するような美しいドレープが作り出された本ルックの胸元には「Are Clothes Modern? (衣服はモダンか?)」というテキストが。これは建築家 Bernard Rudofsky (バーナード・ルドフスキー) がキュレーションしたエキシビションのタイトルであり、身体、衣服、居住形態といった概念に問いかけ、衣服と空間・時間に対する関わり方を再考する Maria Grazia Chiuri の実験的なクリエイションを端的に表現している。ラストには建物のファサードをそのままモデルに着せたアヴァンギャルドなルックも登場し、観客を驚かせた。