小津安二郎に魅せられた若手イギリス人アーティスト Nicholas Hatfull (ニコラス・ハットフル) の個展が開催

Nicholas Hatfull, Marina (Vacanze Romane), 2019, 170×130 cm, photo by Benjamin Westoby

現在、ロンドンを拠点として活動している Nicholas Hatfull は、iPadで描いたスケッチをキャンバスに油彩で描き、スプレーペイントを駆使して、力強さと透明感が共存する作品で知られている。ロンドンのサーチギャラリーや、 ローマのジョルジュ・エ・イザ・デ・キリコ財団、ローマ現代アート美術館など多数の美術館で展示され、ヨーロッパを中心に期待される若手アーティストの1人だ。

東京で生まれた Nicholas Hatfull は自身が大きく影響を受けたものの一つとして、飾り気のない日常を繊細に映し出す、小津安二郎の映画を挙げている。アジア初の個展となる本展では、そんな小津作品を象徴する儚くも鮮やかな心象風景を、彼ならでは独特な色使いで幻想的に描き出した作品や Giorgio de Chirico (ジョルジュ・デ・キリコ) に影響を受けた作品など、新作14点を展示。Nicholas Hatfull が生み出す、夏の蜃気楼を見ているかのようなシュールで儚くもカラフルな世界をぜひ楽しんでみてほしい。

＜プロフィール＞
Nicholas Hatfull (ニコラス・ハットフル)
1984年、東京生まれ。2011年にイギリスのロイヤル・アカデミー・スクールを卒業し、現在はロンドンを拠点に活動。セインズベリー・スカラーシップを獲得し、2011年から2012年にローマのブリティッシュスクールで絵画と彫刻を研究。また、2018年にはローマの名門ブリティッシュスクールで行われたフェリシティ・パウエルの講義のための「The True Italian Pop Art」を発表し、古代および近年の遺物についての考察を、彼がイタリアで過ごした時間を綴った小説的な短編作品と結びつけた。最近では、執筆した記事が Frieze や Mousse に掲載されるなどアーティスト活動だけでなく記事の寄稿や批評など、その多才な活動に注目が集まっている。

Nicholas Hatfull, Beer, Whiskey, Sake (Yasujiro Giorgio), 2019, 160×120 cm, photo by Benjamin Westoby