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【実録】 2020年秋冬メンズトレンド対談 vol.1

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【実録】 2020年秋冬メンズトレンド対談 vol.1

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artwork: yukio sugaya
edit: miwa goroku

TFP編集長がゲストとともに、今シーズン気になるコレクションをサーフィンする企画。初となるメンズ対談は、スタイリストの服部昌孝を迎えてお届け。ファッションのフィールドを越えて国内外で幅広く活躍する服部氏が、今年の秋冬シーズンに向けてチェックしているスタイル、アイテムを聞く。

長く着れる定番がますます強い

合六美和 (TFP編集長、以下 G): 2020年秋冬のパリメンズは 1月開催だったので、もうだいぶ昔のことのようですが、店頭での立ちあがりは通常 6〜7月。これからですね。ブランド側にヒアリングしたところ、約半数のブランドは例年通りのデリバリーを計画しているようです。一方、コロナ禍の影響で 8〜9月まで後倒しするブランドも少なくない。スケジュールそのものを見直そうという動きもあります。

服部昌孝 (スタイリスト、以下 H): それまでに店頭で買える状況に回復しているといいですね。これだけ長いこと自粛生活が続いていると、求めるアイテムも変わってきそうだなぁ。

G: 今回の自粛生活を通して、いろんな気づきが得られたと思うんです。サステナブルであることに関しても、買う側がこれまで以上に自分ごととして受け止めて、選択する意識が高まっているのを感じます。そのひとつが、長く着れる服への支持として現れるのでは。Jil Sander (ジル サンダー) あたり、ここ数年ずっとシーズンレスなアイテムを増やしてきているブランドはやっぱり強いですよね。

左から:Jil Sander | Marni 2020 Fall Winter

H: Jil Sander は確かに今季もいいですね。定番的なところでいうと、あとは DRIES VAN NOTEN (ドリス ヴァン ノッテン)、Marni (マルニ) あたり。

G: 共通するのは、ベーシックの崩しやアレンジがうまい。

H: DRIES VAN NOTEN は、テーラリングが圧倒的にうまいですよね。あと素材の使い方もいい。今回でいうと、ベルベットとファー、レーヨンをオールミックスしている感じ。テロテロのシャツにベルベットのパンツを合わせても、ギトギトにならない。合六さんは、どこが良かったです?

DRIES VAN NOTEN 2020 Fall Winter

G: 印象に残っているのは、Fendi (フェンディ) とLoewe (ロエベ) かな。どちらもウィットが効いてキャッチーでありながら、アイテムひとつひとつが洗練されているのがいい。

H: 今季の Fendi は特によかったですね。<Look 1>のレザーの合わせ、<Look 8>のショートジャケット。シンプルな<Look 17>、ファー使いの<Look 20>……どれも好き。

 

ファー、フリル、レザー、小物使いに注目

G: Jonathan Anderson (ジョナサン・アンダーソン) が提案するメンズのスカートは彼の定番ですけど、今季の Loewe はスカートを超えてドレスの域。でもこれ、首元を見たらエプロンなんですよね、面白い。ニットにはビジューがついている。

Loewe 2020 Fall Winter

H: Loewe はベルト使いが好きですね。JW Anderson (JW アンダーソン) のゴールドの使い方もいいな。小物使いは、今季のポイントのひとつだと思う。あと、ファーとフリル。そしてレザー。動物愛護はどこに行ったんだってくらい多いですね。

左から:Loewe | JW Anderson 2020 Fall Winter

G: 服部さん、個人的にフリルいかがですか?

H: 僕はね、好きなんですよ (笑)。僕自身はシンプルですが、思考はけっこうジェンダーレスなので。今季のフリルはLouis Vuitton (ルイ・ヴィトン) と PRADA (プラダ) がよかったですね。

Louis Vuitton 2020 Fall Winter

 

Prada 2020 Fall Winter

 

G: Louis Vuitton も PRADA もスーツが細い! そこにフリルがくっつく。かなりドレス志向になってますよね。ところで服部さんのスタイリングって強いじゃないですか。その根底には、こういうミックスアップ方向の、ドレスアップの考え方があったりします?

H: どうだろな。基本的に僕が好きなのは、クラシックとエッジが効いているもののミックス。そうすると、どうしても強くなっていく。そういえば、ロンドンの Martine Rose (マーティンローズ) もフリル出していましたね。

G: Martine といえば、ロゴT のイメージ。おしゃれなメンズがよく着てますね。ちなみに私、最近まで知らなかったのですが、Martine って女性なんですね。

H: 海外ブランドの女性デザイナーが作るメンズって、いいんですよ。カルチャーとつながりながら、独特の崩しを加えてくる。だからシンプルの中にも強さがある。

G: ミックスといえば、GUCCI (グッチ) も面白かったです。ボーイフッドに着目したというコレクションで、幼稚園時代を思い起こすウエアと小物のハイパーミックス。

H: GUCCI の小物使いはすごく気になります。あと、このブラックモデルでリーゼント、ってやばくないですか。昔は結構あったけど、今これを出すのか。Alessandro Michele (アレッサンドロ・ミケーレ) はやっぱすごい。

GUCCI 2020 Fall Winter

 

COMME des GARÇONS HOMME PLUS 2020 Fall Winter

G: COMME des GARÇONS HOMME PLUS (コム デ ギャルソン・オム プリュス) は今回、色のミックスできましたね。Tシャツ、デニム、または黒とか、何も考えなくてもそれっぽく着れるアイテムや色へのアンチテーゼってことらしいです。色も素材も、めちゃくちゃに組み合わせたときに生まれる強さ。そういえば服部さんが今回スクショなさっているルックを並べてみると黒人モデル多いですよね。ってどういうことなんでしょう (笑)

H: 黒が映える色が、好きってことかな。

G: 小物でいうと、DIOR (ディオール) のジュエリーの使い方がすごくよかった。首元のパール、シルバーアクセ、コサージュとかが、スーツにポンとついている。2月発売になった MIKIMOTO COMME des GARÇONS (ミキモト コム デ ギャルソン) しかり、メンズのパールは確実にきてますよね、流行るのは局所的かもしれないですけど。Marc Jacobs (マーク・ジェイコブス) が Instagram で最近よくパールのネックレスを、セーターとかシャツに合わせてるじゃないですか、メイク研究にも余念がないし、あんなにのびのびしながらトレンドセッターでもあり続けるって、改めてすごいなと思うこの頃。

H: DIOR は、Judy Blame (ジュディ・ブレイム) へのオマージュだったんですよね。

G: 安全ピンとかのパンクモチーフは、まさに Judy Blameでしたよね。Judy といえば、John Galliano (ジョン・ガリアーノ) 時代のニュースペーパープリントを思い出します。伝説ですね。

 

H: あ、大事なブランドを忘れてましたが、今季はあと Hermès (エルメス) がめちゃくちゃ良いです。全ルックいい勢いです!

G: いいですね。私も最近、Hermès はすごく気になってます。おじさんが着ても、若い子が着てもいける感じ。って、なかなか出せないですよね。真新しくなさ。

H: いやまさに。洋服って、そうであってほしい。<Look 5>のパンツの裾を絞っているストライプのセットアップ、<Look 10>のヘリンボーンのシンプルなニット。<Look 25, 27> あたり、一見ダサいようでいて、実はめちゃくちゃかっこいい。

G: このさりげない強さみたいなものは、なかなか真似できないですね。

H: Hermès は、ものづくりにおいて、モンスターですね。DRIES VAN NOTEN もそうで、残っていくものが多い。ものすごく気に入っている、袖と裾がレースになっているニットがあって、日本で買い付けがなかったからニューヨークで買ったんですけど、ずっと着てますからね。それって、どういうことなのか。今の時代だからこそ、なおさら考えたいです。

 

(vol.2 へ続く)