【実録】 2020年春夏トレンド対談 vol.2
Trend Talk
【実録】 2020年春夏トレンド対談 vol.2
trend talk
2020 spring summer
artwork: aiko koike
text: kaori watanabe
TFP編集長が今シーズン気になるコレクションを深堀する対談企画。ファッションの現場における15年来の同志であり、現在も第一線でパリコレの取材を続ける編集者・渡部かおりをゲストに迎えて、2020年春夏コレクションのハイライトを実録でお届け。vol.1に続く今回は、具体的なアイテムや素材、色の話。
風向きはロマンティック
合六美和 (TFP編集長、以下 G): 具体的なアイテムを見ていきましょうか。かおりちゃんの個人的なチェックリストは今回どんな感じ?
渡部かおり (編集者、以下 W): さっきも話に出たけど、アイテムとしては大人が着るロマンチックなドレスが気になるな。布を贅沢に使った、マキシ丈の流れるようなドレスや、透けるドレス。
G: 夏に着たいね。今年の春夏は、野花柄のドレスもたくさん出てきそうだ。
W: GIVENCHY (ジバンシー) の真っ赤なドレスが好きだったな。歩くたびにドレスが風になびいてさ、凛とした強い女性が装うドレスという感じ。VALENTINO (ヴァレンティノ) は花柄の配置と配色がモダン。SAINT LAURENT (サンローラン) は美しいだけで終わらずに、パワフルでブランドらしさがしっかり主張されていたのがよかった。
G: カットアウトされた服も多かったよね。洋服に対してどれだけ装飾して盛れるかというよりは、洋服のフォルムに目がいく。でもヘルシー推しじゃなくて、あくまでデザインとして昇華されたカットアウト。
W: 東京で広がりそうだなと思うのは、スーツ。ここ1、2年でやっとジャケットが市場で売れるようになっているし、この春夏は満を持して “スーツ女子” が増えるのでは。ショートパンツを合わせたスーチングはおさえておきたい。多様性のあるスーツが広がると楽しいなーと思うんだよね。THE ROW (ザ・ロウ) はミニマルな色と制限されたアイテムの中で美しいスーツがたくさんあった。
サステナブルとサファリ
G: カジュアルダウンからドレスアップへ。サステナブル起点のユニフォーム、といった流れから、サファリも気になるテーマだな。
W: そこ、乗っからせて! 私は Maison Margiela (メゾンマルジェラ) がジャケットの上からつけていたミリタリーなセーラーカラーに一目惚れしました。私的マストバイ。襟モノ、気になる〜。
G: ロマンチックなフリルとかレースを実際にこの春夏に取り入れるとしたら、お手本は CELINE (セリーヌ)。エディ・スリマンの襟一点だけフリル、これでしょ。
W: 私もこのルック大好き。今すぐブラウス買いたいと思った。他のアイテムは大体、持ってるから (笑)
G: レースやフリルは全身で! というメゾンも。透けるホワイトレースのルックは多かったよね。ピュアで美しい、白。
W: 色の傾向としては、前回話したサスティナブルを想起させるグリーンに加えて、ピュアな白、それからパステルカラーかな。こちらも差し色じゃなくて、白同様に全身をパステルで固める着こなしが今っぽい。
G: パステルは東京ストリートでは先行して流行ってる感じ、あるよね。私もHYKE (ハイク) でライラック色のパンツをオーダーしたところ。
W: 柄は、ドット柄に注目だね。クラシックでエレガントなポルカドット。モノトーンでシックに着こなすのがいい。フォルムでパワフルさを加えるのもいい。
G: トレンドが長続きしているチェック柄は、ドット柄とは違って、今シーズンはカラフルなものがたくさん。英国チェックではなくて、ギンガムチェックやマドラスチェックが多かった。
総括: ドレスアップは楽しい
W: 東京ではどんなトレンドが広がるかな、引き続き見ていこう。簡単で着心地のいい洋服も大切だけど、ドレスアップすることの楽しさを再認識したシーズンだったな。合理的だったり、見通しがつくことだけじゃなくて、改めて、一見すれば無駄な事柄や時間、それこそウィットに富んだ遊び心も追求していきたい。新しい価値観はそこにしか生まれないと思うから。
G: ジェンダーレスを超えて、個人単位の自由が広がるムードが気持ちいい。GUCCI は店頭でも、メンズ、ウィメンズの分け隔てなく洋服が並べてあるんだよね。2020-21年秋冬メンズを見ていても、メンズとレディスの提案がどんどん入り混じってきている。
W: 逆もしかりだよ。CELINE は Hedi Slimane 本人の意向でメンズは参加しておらず、ウィメンズのシーズンに合同で発表することになっている。
G: そんななか、昨年末にインタビューした Aries (アリーズ) の Sofia Prantera (ソフィア・プランテラ) の話は、今の時代に改めて刺さるパンチラインの連続だったなと。「本来ジェンダーは二元的なコンセプトではない。それをグラデーションのあるグレースケールとして捉えることができれば、人はもっと幸せになれる。両方の性の要素を持っているのは自然なこと」とか。というわけで個人的には、花柄のロマンティックなドレスを着ることに初めて興味が湧きつつ、他方でメンズ服に手を出す後ろめたさがなくなって、結果ワードローブの幅がポジティブに広がりそうなシーズンです。