Louis Vuitton
Spring Summer 2021 Men’s collection report

デジタル発、上海を経て東京に上陸。ルイ・ヴィトンの2021春夏メンズショーレポート

間もなく開港する新しい海の玄関口、東京国際クルーズターミナルが会場

Louis Vuitton Spring Summer 2021 Men’s collection report
Louis Vuitton Spring Summer 2021 Men’s collection report
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デジタル発、上海を経て東京に上陸。ルイ・ヴィトンの2021春夏メンズショーレポート

Louis Vuitton
Spring Summer 2021 Men’s collection report

text: miwa goroku

コロナ禍の影響でオンライン開催となった2021年春夏パリ・メンズコレクション (5日間で67ブランドが参加)。新作ルックを詰め込んだ (と思われる) 輸送用コンテナを出港するまでを描いたアニメーションフィルムを7月9日に公開し、その行方とともに注目を集めていた Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン) の今季の全貌が9月2日、およそ2ヵ月の時を経て、ここ東京で明らかになった。

東京で活躍中のモデルをオーディションしてアサイン。UTA (写真)、斎藤工、清水尋也をはじめ、さまざまなシーンで活躍する人々がそれぞれのスタイルで歩いた

メンズ アーティスティック・ディレクター Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) が手がける Louis Vuittonは今シーズン、本拠地のパリでは新作発表を行わず、上海と東京の2都市でリアルショーを敢行。デジタルフィルムで命を吹き込んだユニークなキャラクターたちを媒介に、オンラインとリアルを行き来する新しい試みを、さまざまな文化や歴史のアーカイブをミックス&アップサイクルしながら具現化させている。航海の物語とともに国境を越え、枠組みをグローバルへと拡張する。と同時に「Message in a Bottle (瓶詰の手紙)」 のテーマからは、ゆっくりとした時間の流れや人の手の温もりも感じる新感覚のシーズンだ。

コレクションは今回いくつかのチャプターに分割され、上海 (チャプター1)、東京 (チャプター2) と、それぞれのローカルに適応しながら段階的に発表していくスタイルへと発展している。最新作の119ルックのうち、東京では約半数が上海で未発表の新作に入れ替わり、さらにNIGO® とのコラボレーション 「ルイ・ヴィトン LV スクエアード コレクション」 の6ルックも加えられた。2021年春夏シーズンとしてはこのチャプター2が区切りとなるが、Virgil は今後、シーズンに関係なく発表していくことを表明しており、チャプター3 (?) の寄港がいつ、どこになるのか。再び意表をつく展開が待っているかもしれない。

コンテナに投影された映画は、カレブ・フェミと三池崇史が監督、ダニエル・パシッテによる演出。サウンドトラックは、ロンドンのチャーチ・スタジオで録音されたオールスター・アンサンブルによる特別仕立てのライブミュージック・サウンドスケープがフィーチャーされていた

インスピレーションはVirgil の少年時代

近年、Virgilは自身のルーツであるアフリカへと目を向け直し、その文化的遺産を Louis Vuitton のクリエイションの軸に組み込むアプローチを続けている。今回のコレクションの中核となっている細身のスーツも然りで、着想源はヨーロッパのエレガンスではなく、彼が幼少期に見ていた1970年代のガーナ人男性のファッションだという。その多くがブルー、レッド、ピンク、イエローなどのヴィヴィッドカラーで彩られ、たとえばショー中盤に出てくるレッド×イエロー×グリーンのニットなどは、ラスタやレゲエを想起させると同時に、Virgil にとっては故郷であるガーナの国旗の色なのだ。一方、“ダミエ” と呼ばれる市松模様は今シーズン、ジャマイカ文化をルーツに英国パンクと融合した2トーンスカと合流。コレクションではジャマイカ文化の中にある、アフリカの要素を対比させたエレメントとして採用されている。

アニメキャラとぬいぐるみ。アップサイクルのハッピーな関係

ファーストルック。抱えているのは、2005春夏メンズコレクションで Marc Jacobs がデザインしたテディベア

そして今シーズンを象徴する仕上げといえば、アニメーションフィルムから生まれたキャラクターの “Zoooom” とその仲間たち。クマやゾウ、カエル、パンダ、ロブスターなどさまざまな生き物たちも加わって、特大のぬいぐるみが肩に乗っていたり、ジャケットやコートの全面にひっついていたり。シュールでありながらも、思わず顔をほころばせずにはいられないハッピーなルックが盛りだくさんである。

ファーストルックの白いスーツを着た男性が抱えていたテディベアは、 2005春夏シーズンに Marc Jacobs (マーク・ジェイコブス) がデザインしたアーカイブからのアップサイクルだ。「過去のシーズンは個別の独立した存在ではなく、1 つの規準に統一される。いかなるシーズンも、古いシーズンにはならない」と Virgil は新たなイデオロギーを表明している。ちなみにこのテディベアは、三池崇史監督が手がけた全世界配信ライブ映像の冒頭にも登場。『殺し屋1』 (2001) をリメイクした作中で、浅野忠信とアニメキャラ Zoooom との共演を果たした。

 

 

前シーズンの繰り返しによるアップサイクルと、余剰在庫の素材をリサイクルすることによるアップサイクルはそれぞれ 25ルックずつを制作。さらにコロナ禍中のスタッフによる「ホームワーク」プロジェクトとしてアップサイクルされたアイテムもあり、これらの再生されたアイテムには「アップサイクリング シグナル ロゴ」がつく。これをシリアスな提起ではなく、ファンタジーあふれるストーリーを通して表現した Virgil は、これからのファッションが進むべき方向性をひとつ示したと思う。

 

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