マルチアーティスト・SoKo (ソコ) インタビュー
SoKo
Stéphanie Di Giusto (ステファニー・ディ・ジュースト) 監督作品『ザ・ダンサー (原題: La danseuse)』のスクリーンデビューに先立って来日した Soko。分刻みでインタビューが控える過密なスケジュールにも関わらず、取材場所に姿を現した彼女は、会うなり両手を広げてハグで出迎えてくれた。その天真爛漫なパーソナリティ、そして周囲を圧倒するエネルギーに敬意を払って、この記事では彼女のことを SoKo ちゃんと呼びたい。
マルチアーティスト・SoKo (ソコ) インタビュー
Portraits
何年か前に、スラッシー (もしくはスラッシャー) という言葉がもてはやされた。いくつもの肩書きをスラッシュで持つ人たちのことだ。モデル・スラッシュ・アーティスト。ブロガー・スラッシュ・プロデューサー。ハイパー・メディア・クリエイター。最後のは蛇足だ。
一つの分野に特化した職人よりもオールラウンダーが重宝される昨今において、フランス人女優の SoKo (ソコ) が注目されるのは何ら不思議なことではない。ミュージシャンとしてキャリアをスタートさせ、今なお精力的に音楽活動を続ける傍で、有名ブランドとのコラボやミュージックビデオの監修、そして女優まで幅広く活躍。今年で31歳という遅咲きでありながら、ニューフェイスのようなフレッシュさを持ち合わせた彼女は、まさに今のファッションシーンが求めるロールモデルであると言える。
今回、Stéphanie Di Giusto (ステファニー・ディ・ジュースト) 監督作品『ザ・ダンサー (原題: La danseuse)』のスクリーンデビューに先立って来日した Soko。分刻みでインタビューが控える過密なスケジュールにも関わらず、取材場所に姿を現した彼女は、会うなり両手を広げてハグで出迎えてくれた。その天真爛漫なパーソナリティ、そして周囲を圧倒するエネルギーに敬意を払って、この記事では彼女のことを SoKo ちゃんと呼びたい。
—今日着ているジャケット、すごく素敵ですね。
ありがとう!これ渋谷の古着屋で買ったのよ。
—数日前に渋谷にある知人の古着屋に行っている姿を SNS で見ていました。そこで買ったのかな、とか勘ぐってみたりして。
え、どこだろう…Chicago (シカゴ) かな?
—Nude Trump (ヌード・トランプ) っていうお店です。渋谷にある、雑居ビルの3階、すっごいゴチャゴチャしたところです。
ああ、覚えてるかも!日本に着いてから、時間がある限りありとあらゆる古着屋を巡ってたから。
—古着お好きなんですね。
大好き。基本的に古着ばっかり着てる。
—確か初めて SoKo ちゃんのお名前を拝見したのは、数年前に Chanel (シャネル) のショーでゲストとして来場していた時だったと思います。その後 Gucci (グッチ) のクルーズショー でもコラボしていたり。だからてっきり、いつもハイエンドな洋服を着ているのかと思っていました。
もちろん、ラグジュアリーブランドの洋服は大好きよ!物心ついたころから、常にファッションと一緒に育ってきたから。憧れのブランドのショーに呼んでもらったり、アーティストやインフルエンサーとしてコラボ出来るのは光栄に思う。でも正直なところ、あんな素敵な洋服を毎日着るのは私にはハードルが高すぎるの。値段が、ね。Gucci の仕事をした後、私がどうしても欲しいって懇願したプラットフォームシューズは、家のクローゼットで大切に保管してるわ。
—あ、あのレインボーのソールのやつですね!Snapchat (スナップチャット) でも欲しいと言っていたのを覚えています… 余談が過ぎました。『The Dancer (ザ・ダンサー)』観ました。稚拙な表現しか出来ないのが歯がゆいですが、すごかったです。全編を通しての映像美、細やかな演出も印象的でしたが、とにかくパフォーマンスのシーンが圧巻でした。最初に披露した「サーペンタイン・ダンス」の2分に、息を止めて目を見張りました。
嬉しい!私自身、あのシーンはほぼ息をしてなかったからね。緊張した、という意味で。今回の作品では、一切の代役を使ってないの。ダンスのシーンも、全て私が実際にパフォーマンスしたわ。そうでもないと、彼女がどんな思いで表現に立ち向かったのか実感出来ないと思ったから。トレーニング期間は2ヶ月。毎日休みなく7時間とにかく練習をした。そのうち2時間は筋力トレーニング。あの木の棒、思ったより重いのよ。最初はとにかく辛かったけど、最後には重いものを手に持ってないと違和感を感じるくらい慣れちゃった。
—ストイックなんですね…ときに、Loïe Fuller (ロイ・フラー) という人物像について、SoKo ちゃんから見た印象を教えてもらえますか?
日本ではあまりその名前は知られてないかもしれないけど、フランスでは国民的なアーティストよ。パリ万国博覧会でその名を知らしめた、と言うとキャッチーに聞こえるかもしれないけど、彼女の偉業はその後のフランスのダンス、ビジュアルアート、パフォーマンスなど幅広い芸術分野に影響を及ぼしている。今回の作品制作にあたって、監督の Stephanie が私に最初に話したことが Loïe Fuller という人物像を端的に表しているわ。Loïe Fuller はダンサーではない、ボクサーだって。体力的に過酷という意味でもあるけど、それ以上に彼女のクリエイションの源の一つが反骨精神であったことがその理由だと私は解釈したわ。見た目に美しいことはもちろんだけど、それ以上に彼女の生い立ちや、社会の逆境に対する強い意志を、パフォーマンスの中に込めているのが何よりも強いエネルギーになっている。それと同時に、彼女は次の時代を切り開くビジョナリーであったことに疑う余地は無いわね。振り付け、衣装、舞台装置、音楽、照明、その全てを取り入れた、真のマルチメディア・アーティストよ。
—Loïe Fuller はアメリカ人でありながらパリに憧れて成功を掴みました。フランス人の目線から見て、今回の作品の時代背景など印象に残っていることはありますか?
そうね…正直なところ、あまり国籍には関心が無いの。どこの国の出身で、どこを拠点に活動しているか、これまでのキャリアで全く気にしたことなかった。直観主義だから。実際撮影やレコーディング、制作活動で世界中飛び回ってるし。彼女が活躍した19世紀後半から20世紀初頭は、すでにアメリカが世界経済の中心にいたから、多くのヨーロッパの人たちはアメリカを成功の象徴として捉えていた。でも彼女はその逆だった。新しい表現方法を発案してもすぐに真似されて消費されるアメリカではなく、長い歴史の中で独自の芸術や文化を形成してきたヨーロッパこそ、彼女が理想とする表現の場だったの。
—先ほどマルチメディア・アーティストという言葉が出ましたが、女優だけでなく音楽活動や映像監督など様々な創作活動に携わるあなた自身、Loïe のキャリアとオーバーラップさせることがあったのではないでしょうか。
そうね、今回の作品を通じて、Loïe の思想に強く共感する場面は多くあったわ。私も自分が突き詰めたいと思ったことに没頭する性格だから。関心のあることには全力で飛び込まないと気が済まないの。今はアメリカのアパレル会社とコラボで靴下をデザインしてる。ある日突然閃いたから。「靴下を作りたい!」って。あと3枚目のアルバム制作も直後に控えてる。
—確かミュージシャンとしてのレーベルはまだ日本でなかったと思うんですが、次のアルバムは日本でリリースされるんでしょうか?発売日はいつを予定してるんでしょう?
分かんない!完成したらリリースする!いつもこんな感じ。思い立ったらすぐ行動して、一つ完成したらすぐ次の行動に移したくなるの。言ったでしょ、直観主義なの!
<プロフィール>
SoKo (ソコ)
フランス・ボルドー出身。31歳。2007年にファーストアルバムを発表以来、多くのミュージックフェスティバルに出演、本年には新アルバムもリリース予定。最近は女優としての活躍もめざましく、2016年カンヌ国際映画祭出品作『ザ・ダンサー (原題: La danseuse)』では、主演を務め、カンヌ国際映画祭にも出席。Lily-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ) との共演も話題となった。独特なスタイルを貫く彼女は、ファッション業界からも注目を集めている。
Instagram @sokothecat
作品情報 | |
タイトル | ザ・ダンサー |
原題 | La Danseuse |
監督 | Stéphanie di Giusto (ステファニー・ディ・ジュースト) |
脚本 | Stéphanie di Giusto、Sarah Thibau (サラ・ティボー)、Thomas Bidegain (トーマス・ビドガン) |
製作 | Alain Attal (アラン・アタル) |
出演 | Soko (ソーコ)、Gaspard Ulliel (ギャスパー・ウリエル)、Lily-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ) |
配給 | コムストック・グループ |
製作国 | フランス、ベルギー |
製作年 | 2016年 |
上映時間 | 108分 |
HP | www.thedancer.jp |
© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM | |
6月3日 (土) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国公開 |