avirex
with yutaka matsushige
The Fashion Post
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時を経ても色褪せないもの。松重豊が着こなすアヴィレックス

フライトジャケットをアイコンに世界有数のミリタリーウェアブランドとして知られる AVIREX (アヴィレックス)。空を飛ぶことが危険だった時代に果敢に大空に挑んだアヴィエーターたちの精神を現代に受け継ぎたいという思いから、元々法律家だった Jeff Clyman (ジェフ・クライマン) によって、1975年にアメリカ空軍のコントラクターとしてニューヨークで発足したのが始まりだ。以来、フライトジャケットの開発に情熱を注ぎ、1987年に復刻版の A-2 フライトジャケットをアメリカ空軍に納入。世界的に脚光を浴びることとなる。その後、映画『インディー・ジョーンズ』『トップガン』『メンフィスベル』などの衣装として採用されたことでさらに注目を浴び、今日まで世界中の人々に愛され続けているブランドとなった。
2025年、創業50周年を迎えた AVIREX。ミリタリーを起源にした機能的なデザインは、飛行家たちの思いとともに生き続けている。着こなしを披露するのは、さまざまなジャンルで活躍するアーティストや表現者たち。ファッションに関することからプライベートのことまで聞いた、ミニインタビューとともにお届けする。

avirex
with yutaka matsushige

model: yutaka matsushige
photography: takanori okuwaki
videography: takeru yatsushiro
video editing: yuzuru nakatani
styling: yoshie masui
hair & make-up: ikumi takahashi
text: miku oyama
edit: chen fumie & miku oyama

AVIREX の印象を教えてください。
いくつになっても着たいと思えるブランドですね。僕が20代の頃は、お金もないし自分のサイズに合う服を見つけるのが本当に難しくて。たまに海外に行ってふらっと入った古着屋か、米軍の払い下げで買うことが多かったんです。それで、自然とサイズ展開が広いミリタリー系を着るようになって、その中で AVIREX に出会いました。中でも最初に手にしたのが N-3B。当時、XL がギリギリ入るぐらいだったんですが、日本で買える服がほとんどなかったのでよく着ていました。あとは、やっぱり AVIREX といえば MA-1。僕らにとって永遠のアイコンですね。大人になってから、限定品のロイヤルブルーの MA-1を買ったのはいい思い出です。

—今回着用したスタイリングはいかがでしたか?
AVIREX を着るだけで、ちょっと背筋が伸びるんですよ。20代の頃は、いつ街で喧嘩に巻き込まれてもおかしくないような荒々しい時代を生きていたので(笑)。だからこそ、AVIREX のようないつでも戦闘体制を取れるようなスタイリングは、当時の僕の心情を映し出しているように感じるんです。あの20代の「いつ戦ってもいいんだぞ」という覚悟を呼び起こさせてくれましたね。今日着させていただいたジャケットも、当時だったら高くて買えなかったと思うんですが、やっぱりどこかで憧れが残っているんでしょうね。これぐらいの歳になってから着るのもありだなと思って選んでみました。

撮影には、私物の眼鏡もたくさん持ってきていただきましたね
実は、眼鏡は100個以上持っているんです。役者をしているといろいろな衣装を着るので、それに合わせてたくさんの眼鏡を用意しています。AVIREX を着るような役はなかなかないと思うんですが、だからこそ普段はかけないような色つきの眼鏡に挑戦してみました。一度にたくさんの眼鏡を持っていくと、大きな収納ケースになるので、皆さんによく驚かれます。昔、大杉漣さんとご一緒したときに、大杉さんが眼鏡を大きなケースに20個くらい持ってきていらして、それがすごくかっこいいなと思って。それを真似しています。大杉さんへ抱いていた憧れを、そのまま自分で実践しているだけなんですけどね(笑)。

—洋服を選ぶときのこだわりはありますか?
僕は決まったブランドやお店の服ばっかり着ていますね。お店の人とこれいいよね、あれいいよねと言い合いながら服を選んでいると、自分は本当に服が好きなんだなと思います。やっぱり常に自分が好きな服を身につけていたいと思っています。僕は普段、白シャツにジーンズのシンプルなスタイルを作るんですが、それこそジーンズは一期一会だと思っていて。今日履いた AVIREX のジーンズは久しぶりに、ちゃんと肌に合う質感のものに出会えたなと思いました。先ほども言いましたが、若い頃にそういう服に出会えていなかったので、今はとにかく自分が好きだと思える服を探していきたいと思っています。

レザージャケット ¥184,800、シャツ ¥22,000、インナー ¥8,690、パンツ ¥55,000/全て AVIREX (アヴィレックス)、その他スタイリスト私物

今のファッション感に影響を与えたエピソードがあれば教えてください。
駆け出しの頃、師匠の蜷川幸雄さんに、芝居でイギリスに連れていってもらって。ロンドンのカムデン・タウンっていう街が、当時は古着がたくさん売っていたんですね。そこで蜷川さんに、「服持ってないんだろ?ギャラ全部使って服買ってこい」って言われて(笑)。それで、すごく安い皮のロングコートを買いました。そうしたら、蜷川さんはそのコートをすぐに舞台で着る衣装として使ってくれたんです。やっぱり自分で見つけてきて自分の肌に合わせて買ったものって、それを着て芝居をするとリアルになるんですよね。着せられている感じがなくなるというか。若い頃はお金を全部服に使っていいんだから、そういうものをちゃんと見つけてこいと言われていました。今考えると、あの頃の経験があったからこそ、自分に似合う服、好きだと思える服がわかるようになったんだなと感じています。