the recommend books for May

5月の TFP 的おすすめ本

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5月の TFP 的おすすめ本

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「本は時代を映す鏡」とも言われている。さまざまなメディアから情報を得やすくなった昨今、紙をめくりながら文化に触れる味わいを体感してほしい。そんな思いから、代官山 蔦屋書店、Hi Bridge Books、flotsam books、BOUTIQUE ROMANTIQUE が “今” 読んでほしい本を独自の視点でピックアップ。今月は、大人のための文化拠点として、本を中心に幅広い分野の知識を提供する代官山 蔦屋書店から4冊ご紹介。

LOW FI CATS by Mark Steinmetz

アメリカの写真家 Mark Steinmetz (マーク・スタインメッツ) による写真集『LOW FI CATS』。本書は、2026年に東京・恵比寿のギャラリー「PGI」で開催された展覧会にあわせて刊行された一冊。Mark Steinmetz は、アメリカ南部を中心に、人々の日常や風景を静かなモノクローム写真で撮影してきた写真家として知られる。本作ではその視線が“猫”へと向けられており、庭先、車のそばなど、さまざまな場所で出会った猫たちの姿を収録。タイトルの「LOW FI」という言葉通り、本書に収められた写真には過度な演出や鮮やかな加工はなく、むしろ粒子感や光の揺らぎ、偶然性を含んだ素朴な空気が漂っている。写されている猫たちは、ただ座っている、歩いている、こちらを見ている——そんな何気ない瞬間ばかりだ。しかし、その距離感こそが Mark Steinmetz らしい魅力でもある。猫を「被写体」として強く切り取るのではなく、同じ風景の中に自然に存在するものとして捉えているため、写真全体に穏やかな呼吸のようなリズムが生まれている。また、本書には彼がこれまで撮影してきたアメリカ南部の作品とも共通する静けさがある。派手さはないが、ページをめくるごとに、時間帯や空気、路上の温度まで感じられるような感覚があり、長く余韻の残る写真集。

HELGA PARIS:WOMEN AT WORK by Helga Paris

ドイツを代表する写真家 Helga Paris (ヘルガ・パリ) による写真集『HELGA PARIS: WOMEN AT WORK』。本書には、1984年にベルリンの衣料品工場「VEB Treffmodelle」で働く女性たちの日常撮影されたシリーズ〈Women at the Clothing Factory VEB Treffmodelle Berlin〉から選りすぐりの50点が収録されている。Helga Paris は東ドイツに暮らす人々を記録してきた写真家であり、その作品は当時の日常を伝える重要なドキュメントとして高く評価されている。本作でも、工場で働く女性たちの作業風景や休憩中の姿、何気ない表情がモノクロ写真で静かに写し出される。演出されたポートレートとは異なり、そこにあるのは実際に働き、生きている人々の存在感だ。特に印象的なのは、写真に写る女性たちの服装や佇まい。実用性を前提とした衣服、無造作なヘアスタイル、煙草を持つ仕草や視線には、現在のファッションイメージにも通じる強さとリアリティがある。MIU MIU の2026年春夏のコレクションにおいて、スタイリングリファレンスとして Helga Paris の作品が言及されたことでも注目を集めており、現代ファッションとのつながりという視点から見ても興味深い一冊。本書は単なる写真集としてだけでなく、1980年代東ベルリンの空気や、当時の女性たちの労働環境、そして日常の美学を考えさせられる資料のようでもある。写されているのは特別な瞬間ではない。しかしその何気ない表情や距離感には、時代を超えて人を惹きつける力がある。

COSE JOURNAL ISSUE III / SINK

ミラノを拠点に活動するアートディレクター/クリエイティブディレクター Giulia Nardi (ジュリア・ナルディ) によって創刊されたインディペンデント雑誌『COSE JOURNAL』の第3号です。本誌は毎号ひとつの“モノ”に焦点を当て、その背景にあるデザイン、文化、生活、美意識を多角的に掘り下げていく出版物として知られる。今号のテーマは「SINK (シンク)」。洗面台や水回りという、ごく日常的でありながら普段は意識されにくい存在を題材に、写真、エッセイ、デザイン資料などを通して構成。誌面にはシンクに関連するアイテムの写真が多く収録されており、シンクそのものの形状や素材感だけでなく、蛇口、水跡、石鹸、光の反射など周囲の空気感まで丁寧に切り取られている。“モノを観察する視点”の繊細さが印象的で、単なるプロダクト紹介ではなく、生活の中に置かれた道具としての存在感や、空間との関係性まで写し出される。余白を活かしたレイアウトや抑制されたタイポグラフィも美しく、一冊全体がひとつのビジュアルブックのような仕上がりになっている。そのため、本書は建築やインテリア、プロダクトデザインに興味のある方はもちろん、雑誌制作やアートディレクション、グラフィックデザインに関わる人にも特におすすめしたい一冊。写真の配置、紙面のテンポ、オブジェクトの見せ方など、誌面づくりのヒントになる要素が随所に詰まっている。アイデアソースとしてページを眺めるだけでも刺激があり、“どう見せるか” “どう編集するか”を考える人には強く響く内容だと感じる。一見すると静かでミニマルな雑誌であるが、読み進めるほどに、日常の中にある造形や質感への感覚が少しずつ研ぎ澄まされていくような感覚がある。普段見過ごしてしまうものを、新しい視点で見つめ直したくなるインディペンデントマガジン。

Space Creatures

『Space Creatures』は、クリエイティブ・プラットフォーム konomad (コノマド) によるアートブック/ビジュアル作品集で、生物形態に着想を得た独創的なイメージが収録されている。ページごとに異なるクリーチャーのイメージがウィッグにより提示され、見る側が自由に解釈を広げていく構成。収録されているビジュアルは、一見すると生き物のようにも、オブジェのようにも見え、髪という身近な素材から、未知の存在を立ち上げ表現しているのが面白く、本作の注目すべき点だ。作品の中では、ヘアピースやウィッグ特有の毛の流れ、光沢、質感が巧みに使われており、それらが単なる髪としてではなく、一つの生命体の表皮や触手のように見えてくる。かわいさと不気味さが同時に感じられる独特のバランスも印象的で、未知なる生物と遭遇していく感覚がある。また、単なるコンセプトブックではなく、色彩や装丁、編集など見せ方そのものが非常に洗練されており、写真集としても完成度の高い1冊。作品の中にある細かなディテールからインスピレーションを得られる場面が多く、デザイナーやイラストレーター、ビジュアル表現に関わる人にとっては、発想のトリガーとして手元に置きたくなるタイプの一冊であり、クリエイションのヒントになる要素が多く詰まっている。