lemaire
with Sharar Lazima

ルメールを着る人。 vol.4 Sharar Lazima

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with Sharar Lazima

photography: masahiro sambe
hair & make up: yuko aika
styling, text & edit: manaha hosoda

袖を通せば、すっと肌になじむ。そうしていつの間にか、生活の一部に溶け込んでいく LEMAIRE (ルメール) の服。着る人のことを一番に考えた服づくりだからこそ、それぞれの個性が服の表情を変化させる。

今回お届するのは、性別も年齢も異なる日本のクリエイター4名がまとう LEMAIRE。彼らが日常を過ごしている場所で、気に入ったルックを選んでもらった。

最終回を飾るのは、褐色の肌に金髪・碧眼というトレードマークを自ら作り上げ「人種のボーダーレス」をコンセプトにモデル兼文筆家として活動する Sharar Lazima (シャラ・ラジマ)。彼女の行きつけというカフェで、いつもオーダーするシナモンアイスコーヒーを片手に。

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with Sharar Lazima

ルメールを着る人。 vol.4 Sharar Lazima

ドレス ¥149,000、ピアス ¥37,000/どちらも LEMAIRE (ルメール)

「ファッションは肌に溶け込んでいくもの。そして、そのブランドのあり方と自分のあり方が融合することで成立するものだと思ってます」モデル業で様々なブランドの服に触れ合う中、形成され発展していく彼女のファッション観。自身が掲げるコンセプトを軸に、独自の活動をみせる彼女を惹きつけたのは、日本の墨流しの技法からインスパイアされた LEMAIRE の新しいマーブルプリント。完全にコントロールすることが出来ないからこそ、想像を超えた美しいパターンが生まれるマーブリングに魅了された LEMAIRE は、パリの Atelier La Folie (アトリエ・ラ・フォーリー) とともに、オリジナルのパターンを考案してきた。平安時代から続く日本の伝統的なマーブリング手法である墨流しをコットンポプリンの上で表現したコレクションは、一層の奥行きと力強さを兼ね備えている。

「墨流し」プリントを重ねて。手元には、身体のラインに自然とフィットするショルダーバッグ「クロワッサン」を。コート ¥219,000、ブーツ ¥210,000、バッグ ¥133,000/すべて LEMAIRE (ルメール)

──Sharar さんは半年ぶりの登場です。その間にも、またさらに活躍の場が広げられてますね。

まだ文章自体をたくさん書けているわけではありませんが、『現代ビジネス』で初めて自分の書いた文章をちゃんと表に出すことが出来てから、今は別の媒体で連載も始まりました。もともと掲げていたコンセプトが文章にすることで伝わっていって、それを読んでくれた方々から仕事をいただけるようになり、自分自身にフォーカスしてもらえる機会も増えました。ありがたいことに、私のもとに来る仕事はイヤだって思うものが一つもなくて、全部自分に合っているお話ばかり。今回の撮影もそうですし、むしろこのような仕事自体がわたしを作り上げてくれているなと感じるほどです。最初はモデルも自分を表現する手段の一つでしかなかったんですけど、最近はモデルという活動が単なる人形ではなく、一個の非言語的な身体表現として成立するのではないかと思えてきました。モデルを始めて3年ほどになりますが、自分の伝えたいことが世の中の美の変容にもはまっていることに気づいて、仕事を通して改めて美やファッションについて考えるきっかけにもなっています。

──コンセプトはそのままに、表現はより柔軟になった印象があります。

変わっていってますね。実はコンセプトを最初に作った時も、頭で考えるよりも先に行動しているところがあって。気が付いたら金髪にしていて、カラコンをつけていた。コンセプト自体は今後も変わらないかもしれませんが、もっと表現方法については変化していってもいいと思えるようになりました。ニュートラルでいられる人間でありたいですね。このニュートラルというのは曖昧でいるということではなくて、どっちでもあり、どっちでもないという状態。誰のことも嫌いたくないけど、嫌う時があってもそれが人間だと思いますし、そういう人間らしい移り変わりや営みを大事にしていきたい。わたし自身も弾けるような明るさと想像がつかないほどの暗さ、どちらも自分の中に同居していて、それほどの振り幅の広さをもってる自分に驚かされます。いまは利便性に偏りがちだけれど、そういうものだけで世の中は語れないし、成立していない。わかりにくいかもしれないけど、なぜか惹かれるものだったり、言葉ではとても説明できない感覚を体現したい。そして、わたし自身も自分のことを決めつけずに、動き続ける人間でありたい。

──どういうものに影響を受けますか。

わたしは大切な友人や尊敬している人といった、他者からの影響を受けることが多くて、周りにいる人との話す内容、今まで見てきたカルチャーによって自分が構築されていると強く感じるんです。それこそ、そのような他者とは話し方や思考まで似てくるほどに、できる限り深い繋がりを持とうとしています。様々なカルチャー、人や場所から大きく影響を受けつつ、わたし自身の存在や居場所もその人や場所に点在させ、循環しているような感覚です。そうやって吸収したものを自分の身体表現にもうまく落とし込んでいきたいし、改めて書くことが大切であることも日々考えます。他者からの影響が大きいからこそ、放っておくと自分の世界を保つことができなくなってしまう。書くこと自体は、一人の戦い。だけど、自分がどういう人間かっていうのは一人では絶対にわからなくて、他者との関わりによってのみ知ることができる。だから、どちらもあることが大事ですし、どっちかに偏ってしまうとすごく危ない。一人である状態と他者から影響、どちらも繋がっていて、相互作用しているんです。

──Sharar さんの日常についても教えてください。

わたしは家の外に出ないと、物事がうまく回らないタイプなんです。なので、時間帯によって行くところが色々あるんですけど、新しいところというよりかは、決まった場所を順々に回ってます。お気に入りのお店で好物のメニューを食べて、本を読んだり、考え事をする時間がないとダメなんです。好奇心が人一倍強いので、ものすごい勢いで動く時期があるんですけど、たくさんの情報や学び、人との出会いを一旦整理しないと、ごちゃ混ぜになってしまう。こうしてゆっくり整理できると、そうしたものがいつの間にか血肉になっている。だから、こういう時間は欠かすことができません。