hio miyazawa

宮沢氷魚が見つめる闇。『パラサイト』vol.1

hio miyazawa

model: hio miyazawa
photography: tomoaki shimoyama
styling: masashi sho
hair & make up: taro yoshida
edit: manaha hosoda
text: miku oyama

カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞、米アカデミー賞4冠を達成するなど、アジア映画として初の快挙を成し遂げ、世界を席巻した映画『パラサイト 半地下の家族』。この度、鄭義信を演出に迎え、日本にて舞台化が決定した。

キャストには、若手からベテランまで、実力を兼ね備えた俳優が名を連ね、より一層注目が高まっている。物語の中心を担い、高台に住む裕福な一家に寄生していく半地下の家族、金田家の長男の純平を演じるのは、知的な眼差しに爽やかな笑顔が魅力的な俳優、宮沢氷魚。物腰柔らかな雰囲気を漂わせながらも、難しい役どころを難なくこなし、ますます存在感が増している。一家の大黒柱である父の文平を演じるのは、強烈な個性と存在感を放ち、コミカルな役からシリアスな役まで幅広く演じる個性派俳優、古田新太。

春の訪れを感じる都内某所に姿を現した宮沢が袖を通したのは、ANN DEMEULEMEESTER (アン ドゥムメステール) のトレンチコート。ホワイトのトーンオントーンでまとめたコーディネートは、ベーシックでありながら抜群の存在感を発揮する。大きな社会問題をテーマとしたこの作品で、彼らは何を感じ、今何を思うのか。

hio miyazawa

宮沢氷魚が見つめる闇。『パラサイト』vol.1

コート ¥433,400、トップス ¥74,800、パンツ ¥249,700/以上 ANN DEMEULEMEESTER (アン ドゥムルメステール)、 ブーツ ¥70,400 *参考価格/Séfr (セファ)

映画『パラサイト 半地下の家族』の舞台化についてのお話が来た時、最初にどのような感想を持ちましたか。

驚きました。舞台化するんだという驚きと、韓国ではなく日本で公演するんだという驚き、演出を鄭さんにしていただけることへの驚きもあったりと、いろいろな驚きが重なりました。自分がこの作品に出演するというイメージが湧きませんでしたが、キャストを見た時に、そうそうたるメンバーで、その中にいられるということが本当に楽しみだなと思いました。ですから、驚きの先には楽しみという感情がありました。

この作品で中心人物となる半地下の家族の長男を演じるにあたって、何か思ったことなどありますか。

自分の家族とはまるっきり違っていて、家族の中で僕が父に指示を出すみたいなことは僕にはないので。ただ、『パラサイト』では、僕が演じる純平が家族の中のブレーンであって、いろんな戦略を立てて、それに家族がついてきてくれるというパターンになっています。僕も比較的頭を使って物事を考えるほうなので、そこは純平と近いものがあるのではないかなと思っています。

この作品は、人間の怖さや面白さが合体した物語だと思うのですが、宮沢さんが考える、作品自体の魅力を教えていただきたいです。

『パラサイト 半地下の家族』が公開された時、すごく盛り上がっていたじゃないですか。でもその当時見てないんですよね。あえて盛り上がっているものに乗っからなかった時期でして…。しばらく経ってから家で観たんですけど、すごく衝撃でした。面白いなと、しかもとても共感できたんです。同じ環境下では育っていないのに、なんで共感できるんだろうと考えた時に、僕が生まれたサンフランシスコの隣町、オークランドを思い出したんです。オークランドは治安が良くなく、毎晩銃声が聞こえていましたし、テレビを付ければ殺人事件のニュースばかり放送していたりと、危ないところでした。でも橋を一本渡ると、きらびやかな街並みのサンフランシスコがあって、それをなんとなく思い出しました。だから、日本や韓国だけでなく、世界的なヒットを成し遂げたんだろうなと。どこの国でも貧富の差だったり、社会的な問題があるからこそ、みんなどこかでこの作品にリンクするものを感じていたんじゃないかなと思います。

舞台は90年代の関西のとある下町。堤防の下にある、暗いトタン屋根の家に住む金田一家が、高台の豪邸に住む永井一家に寄生していく。まったく異なる家族が交わった先に待ち受ける衝撃の光景、先の見えないもう一つの「半地下の家族」の物語が、ここに誕生する。2019年に公開され、大きな注目を集めた、ポン・ジュノ監督による映画『パラサイト 半地下の家族』が遂に日本で舞台化。台本・演出を手がけるのは、映画『愛を乞う人』、『焼肉ドラゴン』、舞台『泣くロミオと怒るジュリエット』などで知られる鄭義信。宮沢、古田をはじめとし、伊藤沙莉、江口のりこ、真木よう子など、個性豊かな顔ぶれが登場する。2023年6月5日(月)より、THEATER MILANO-Za にて東京公演、7月7日(金)より、大阪・新歌舞伎座にて大阪公演がスタート。