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サムライギタリスト、Miyavi (ミヤヴィ) インタビュー

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Portraits/

デビュー15周年を迎えたミュージシャン Miyavi (ミヤヴィ) にインタビュー。ベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』を含むキャリアの軌跡、そしてアメリカを拠点に世界で活躍する孤高の天才の肖像を捉えた。

サムライギタリスト、Miyavi (ミヤヴィ) インタビュー

Miyavi (ミヤヴィ) という人物に会って、久々に身震いするような衝撃を受けた。4月5日にリリースされたベストアルバム、『ALL TIME BEST “DAY 2”』のイメージに合わせてブルーに染めたヘアスタイルも個性的だが、彼の話す時の仕草、言葉のセンスは、なお一層強烈だ。取材後、撮影スタジオに移動する。DIOR HOMME (ディオール オム) の細身のスーツが悔しいほど似合う。厚かましくもギターを持って欲しいと頼んでみる。するとなんと即興で演奏を披露してくれた。髪を振り乱し、無心でギターをかき鳴らす間、その存在感に圧倒され、カメラを止める指示すら忘れていた。「サムライギタリスト」の異名は伊達では無い。このタイミングで Miyavi にインタビュー出来て、本当に良かった。

Photographer UTSUMI、Stylist Masaki Kataoka at Avgvst/(着用衣装) シャツ ¥ 168,000、タンクトップ ¥ 36,000、トラウザーズ ¥ 111,000、ネックレス ¥ 27,000 以上全て Haider Ackermann/三喜商事 03-3238-1398

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— まずはじめに、15周年おめでとうございます。これまでの軌跡を振り返ってみて、ノスタルジーはありましたか?

ノスタルジーは無かったですね。ベストアルバムって懐古的に聞こえるじゃん。でも俺の場合、もっとフラットに、どちらかというとこれまでの作品を整理したって感じ。

— その年月もさることながら、Miyavi さんのこれまでのキャリアを見ると、デビュー当時から音楽性、ビジュアル面含め、大きく変化を遂げてきた印象があります。

メニューの無い寿司屋みたいだなって自分では思ってます。でも中にはデビューの頃から今まで、変わらずサポートしてくれているファンもいる。だから今回のベストアルバムについて言えば、ノスタルジーというよりも、彼らに対しての感謝の気持ちが大きかったかな。ありがとう、次に行こうって。だからアルバムのタイトルは『Day 2』した。

— 懐古ではなく、あくまでフラットな視点で選曲したと。

懐古という意識は無い。むしろ、昔の曲を新しく演奏し直してるし。ベストアルバムって商業的な側面があるから、いかに新しい要素を組み込めるかということに専念した。

— 先ほどメニューの無い寿司屋という比喩を使われていましたが、過去のインタビューでも自信を「カリフォルニアロール」だと表現されていました。お寿司好きなんでしょうか?

うーん、でも俺米食べないんですよ。

— ストイックですね。糖質制限ですか?

そうっすね。プロテインばっかり。卵とかチキンとか。毎朝の習慣は豆乳ときな粉、マカ。あとヘンププロテイン。

— 食生活のほかに、ライブ前には精神統一のため独特のルーティーンを持ってらっしゃると聞きました。

ライブ前だけじゃなくて、毎朝お供えとお祈りしてます。無信教なんだけどね。先祖に感謝するっていう行為が自分の精神面に関係してると思うから。目に見えないものに感謝するって、音楽もそうじゃないですか。音楽見たことあります?

— 無いです。

目に見えないものに意味を見出すって、そもそもがスピリチュアルな行為だと思うんです。だから音楽に従事するものとして、感謝の気持ちを生活習慣に取り入れようと思って。

Photographer UTSUMI、Stylist Masaki Kataoka/(着用衣装) ジャケット ¥ 290,000、シャツ ¥ 77,000、トラウザーズ ¥ 145,000、シューズ ¥ 195,000、ネックレス ¥ 59,000 以上全て DIOR HOMME/クリスチャン ディオール 0120-02-1947

Photographer UTSUMI、Stylist Masaki Kataoka at Avgvst/(着用衣装) ジャケット ¥ 290,000、シャツ ¥ 77,000、トラウザーズ ¥ 145,000、シューズ ¥ 195,000、ネックレス ¥ 59,000 以上全て DIOR HOMME/クリスチャン ディオール 0120-02-1947

— Miyavi さんのクリエイションを見ていると、日本的な影響が多く見受けられます。名前もそうですし、楽曲であったり、自身の出で立ちであったり、ミュージックビデオであったり。そもそもビジュアル系も日本特有の文化ですよね。

日本で生まれて、日本で育っているので、自然なことかなと。あと海外に拠点を移してから、自分のアイデンティティについて考える機会が増えたと思う。ロックだって、ヒップホップだって、ファンクだって、というかそもそもギターってそもそも西洋の文化だから、自分がその文化にどうやって立ち向えるかと考えた時、アプローチに日本的な要素が無意識のうちに加わってくるのかなと思う。

さっき言ってたカリフォルニアロールのくだりだけど、そのインタビュー受けた時に自分の中のわさびを「スラップ技法」だって言った気がする。日本人だから酢飯の要素もある、具材もある、でもカリフォルニアロールってアボガドがないと格好が付かないでしょ?ロサンゼルスであれだけ多くの日本食のレストランがあって、誰もが寿司を食べてるんだけど、日本人の知ってる寿司とは違うわけ。アボガドっていうアメリカ的な要素が魚の生臭さを中和してくれてるから、あれだけ多くの人たちに親しまれてるのかなと。

— 「スラップ技法」は三味線の演奏方にインスパイアされているとのこと。前衛的な作風で知られる Miyavi さんにとって、伝統文化はどんな意味を持っているのでしょうか?

特に伝統そのものに対して意識は持ってない。でも、ワクワクするんだよね、伝統的なものって。三味線かっこいいじゃん。今年の元旦に上妻宏光さんの三味線と、林英哲さんの和太鼓とコラボでパフォーマンスをしたんだけど、伝統的な文化を極めた人って必然的に革新に行き着くんだよね。俺自身は革新だけを求めてるんだけど、同じベクトルを向いているからどこかでシンクロするところはあると思う。日本のロックも聴いてきたけど、別にその伝統を継承したいと思って音楽活動をやっているわけじゃない。むしろ観客を驚かせたい、新しいものを見せたいと思った時に、伝統的な文化との邂逅が生まれるのかなって。

— そもそも伝統文化だって、邪道でしたからね。ジャズだって不良の音楽だったし。

そうそう、伝統的なものってアヴァンギャルドなんだよ。でもルールが出来た途端に伝統になる。そしてその瞬間に自分たちがオーセンティックだって言い張るようになって、頭が固くなる。でもルーツは異端児なんだよ。

— 分かります。元々歌舞伎だってポップカルチャーだったはずなのに、いつしかスタンダードになって、ルールが生まれて堅苦しい伝統になる。でも Miyavi さんがやってることって、新しいアプローチを見つけて、スタンダードになる前にまた新たなアプローチに挑む、言わば革新が伝統に変わる直前までのプロセスを繰り返しているような印象があります。

そう、その通り。捨てる勇気ってクリエイティブに携わる人にとって一番必要なんだよ。過去に固執しない勇気。諸行無常って言うじゃん。成功した後、同じ場所にいたら絶対衰退するんだよ。栄華は絶対続かない。だって地球って回ってるんだよ?足止めてたら後ろ下がっちゃうじゃん。現状維持するためには歩き続けなきゃいけないんだよ。で、もっと先行きたいなら、もっと早く足を動かさなきゃいけない。

— Miyavi さんが足を止める瞬間ってあるんでしょうか?「No place like home (家がやっぱり一番)」ってみんな言うじゃ無いですか。

ホームといえば、家族といる時間かな。娘と遊んでる時。文字通り自分にとってのホームだし、家族の支えがあるから動き続けられる。本当に恵まれてると思う。

— それを聞けてほっとしました。では反対に、今 Miyavi さんはどこに向かって歩いているのでしょうか?

今一番関心があるのは、教育。アジアツアーでタイに行った時、国連 UNHCR 協会の活動として難民キャンプに行ったのね。元々アジア諸国の難民の状況に関心があって、アンジー (アンジェリーナ・ジョリー) の紹介で繋がったんだけど、タイとミャンマーの国境付近で出会った僧侶にすごい感銘を受けたのを覚えてる。彼らって異性との触れ合いを禁じられてるのね。彼らの使命は、現地の子供達に教育すること。算数とかだけじゃなくて、もっと哲学とか、共存するっていう考え方とか、もっと人間本来の姿を教えてる。共存すること。自給自足すること。日本人の考える贅沢な暮らしとは違うけど、人間のあり方、他との関わり方という意味では、彼らのライフスタイルってすごく高尚なんだなって感じた。

— 先日ファッションウィークで NY にいたのですが、ちょうど新大統領が就任した直後で、周りが熱心に政治の話をしているのが印象的でした。日本でここまで政治の話をする機会って無いなと思って。

日本人はハッピーだからね。ある種のゴールだと思う。日本って平和だし、政治の話しなくても毎日何の不自由も無く過ごせる。もし世界中がこうだったら、そんな平和な世界無いよね。でも残念ながら現実は違う。海の向こう側では政治によって不自由を強いられている人たちがいて、また別のところでは飢餓に苦しんでる人がいる。紛争だって無くならない。自分たちがどれだけ平和で、何の苦労も無く生きているかということを意識せずに生きているのはただの無知だね。ぬるま湯に浸かっていたくないから俺は日本を出た。ぬるま湯は心地いいけど、それがぬるま湯だと気づいていないことが問題。これもまた教育と関係してくるんだけど。お兄さん英語は?

— 英語は問題無く話せます。

それで正解。言語を理由にコミュニケーションを避けていることほど恥ずかしいことは無い。あと言語だけじゃなくて、対話力が弱い。寡黙であることに美徳を感じるのは分かるけど、その感性を共感出来る人ばかりだと思うのは間違い。アメリカのリトル・トーキョー行ってみたら分かると思うけど、ほぼ中国人か韓国人が経営してるんだよね。英語を話せないことは美徳じゃない。オリコン1位を取った時も別に興味なかった。それってビルボードで何位なの?って思ってた。

— LA に拠点を移されてから3年、今まさに激動の時代を迎えていますが、音楽制作、ないしクリエイティブという面でこの1年の間何か変化はありましたか?

政治情勢を受けてってことだよね?多分細かい出来事はいっぱいあるんじゃない。Rage Against The Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン) とか反トランプ運動の一環でライブしたり。

でも思うに、ファッションも音楽も、アートやクリエイティブって平和であることが前提なんだよね。生きるか死ぬかの状況で、ギター持ってられないじゃん。今日もかっこいい衣装用意してくれたけど、レバノンの紛争地帯でこれ着てられないじゃん。だから娯楽なんだよ。でも、少なくとも俺は音楽を通して自分のメッセージは伝えられる。ファッションだって、メディアだって同じ。だからさっき言った、共存すること、望みを失わないこと、他を思いやること、こういうメッセージを音楽で表現するのが、今自分に課せられた使命なのかなって。

<プロフィール>
Miyavi (雅、ミヤヴィ)
アーティスト。ユニバーサル・ミュージック所属。1981年、大阪府出身。小学校でサッカーを始め、プロを志すも、15歳の時に足を負傷したことをきっかけにサッカーを断念。高校時代にギターを始め、上京してからビジュアル系バンドの Dué le quartz (デュール クォーツ) に参加。その後2002年にソロデビュー。三味線の演奏技法に着想を得た高度な「スラップ技法」で知られ、「サムライギタリスト」の異名を持つ。2009年には元歌手の Melody. (メロディ) と入籍。2014年にはハリウッド映画『不屈の男 アンブロークン』で Angelina Jolie (アンジェリーナ・ジョリー) と共演、鮮烈なスクリーンデビューを飾った。デビュー15周年にあたる2017年、4月5日にベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』をリリース。アジアツアーで成功を収めているほか、5月には国内で凱旋ツアーも予定している。

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