Takkyu Ishino
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日本のテクノシーンを牽引し続ける男、石野卓球インタビュー

Takkyu Ishino

photographer: hiroki watanabe
writer: wataru suetsugu

Portraits/

石野卓球という類まれな才能の元にひれ伏すサブカル男女は80年代後半から現在に至るまで後を絶たないが、クリエイションの隙間から見え隠れする情報量と膨大なアーカイブに裏打ちされたアウトプットこそが彼の魅力であることに異論を唱える者はいないだろう。

6年ぶりに発表したソロ作『LUNATIQUE (ルナティーク)』は、石野の個人的な観点から導き出された官能や性といった人間の根底にある普遍的なテーマがコンセプトとして掲げられており、DOMMUNE/現在美術家の宇川直宏がハードコアレタッチを施し、38年もの時を経て現代に蘇った横山明のイラストに額装されたのは、様々なテクスチャーがエロティックに添えられたとびきりピュアなダンスミュージックであった。フリーキーに高揚した身体を携えて赤裸々かつ気まぐれに語った本インタビューで、霧がかった石野の頭の中を覗き見て欲しい。

日本のテクノシーンを牽引し続ける男、石野卓球インタビュー

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

 

直接的には今回出た新譜とは関係ないんですが、最近のインタビュー読んでて話に出ていたので持ってきました。

お、『HEAVEN』(HEAVEN EXPRESS/伝説的自販機本) だ。81年なんだね。

卓球さんは当時買って読まれてたんですよね?

うん。毎号じゃないけどね。でも、この頃って『HEAVEN』以外にも色々出てたでしょ。ちょっと後だけど、『Billy』 (白夜書房/スーパー変態マガジン) は毎号買ってた。ビリー・ボーイになった後も(笑)。

HEAVEN20160819

『HEAVEN』昭和56年2月1日発行

なぜ『Billy』を毎号?

強烈だから。スカトロビデオを観るのと一緒。最近気づいたんだけど、俺はスカトロマニアじゃなくて、スカトロファンなんだよね (笑)。というか、マニアとファンの違いに気づいた。自分では実践できないから、アスリートである彼らの頑張りを外から観るというか。

オリンピックを観るのと本質的には変わらないですね。

そうそう。自分でやろうとは思わないじゃん。ウンコ食べれないし、そもそも食べたくないじゃん。臭いもそうだけど、ウンコって思ってる以上に存在感あるからね。だから自分のことをスカトロマニアと言うにはおこがましいなって。スカトロという行為をする人のファンであるっていうか。

いちファンというか。

うん。スカトロビデオとリンチビデオは嘘つかないっていうっていうのが定説としてあったんだけど、最近は偽物が入ってきちゃってるから。憂国ですよ(笑)。

そもそも最初にお話しすべきことだったんですけど、この『 The Fashion Post 』というウェブマガジンは普段読んでる方って女性が多いので、ひょっとすると卓球さんの事を知らない人もいるかもしれなくて。

大丈夫。そっちのことこっちも知らないから (笑)。多分ずっと知らないし。でも、読者はこれで少なからず俺の事知るわけでしょ。だったら俺の勝ちじゃん (笑)。まぁ勝ち負けの話じゃないんだけど。でも、スカトロとかリンチビデオの話をしてる人間に対して興味を持つわけないもん。スカトロ的なファッションなんてないでしょ。スカトロモチーフみたいな。

ないですね (笑)。まぁそういうわけで、一度ご本人の言葉で自己紹介的なものをお願いできないかなと。

お前の知らない俺だ!二度と会うこともないと思いますけど、はじめまして。ハロー・グッバイですよ。てか、そんな人がさ、俺の新譜買って聴くわけないよね。元も子もないんだけど。

(笑)。プレスリリースによると、今回の新譜「LUNATIQUE」は性をテーマに石野さんの持つ官能をイメージしながら制作されたとのことですが、小学校から続く性の英才教育というのが大きく影響しているのかと思ったんですが。

あー、それはジャケットに使った『漫画エロトピア』に関してね。性癖に関しては別にそこだけじゃないですよ。後天的なものもがいっぱいあるじゃん。どんな人と出会うか、どんな共有をするか、どんな人と経験するか、それを次にどうやって繋げていくのか。そしてその実践、そこから得る経験、反省、それによってより高みにいくっていうね。もちろん相手と共に。

相手あってこそですもんね?

そうそう。そこを履き違えちゃうと、性に対する飽くなき探究心を持った、1人で暴走する性欲の化物になっちゃうから。それは犯罪者になり得る可能性が高いからね。それとは違って俺が言ってるのはあくまできつめのハグっていうか。そのハグを受ける相手が痛がっちゃったらダメだし、そういうところで相手有りきっていうか、自分の押し付けだけだと危険ですね。昔から “性癖に貴賎なし” ってモットーが俺にはあるんだけど、それだと相手を甘やかせてしまう事があると思って、最近はちょっと言い換えて “性癖に貴賎なし”、ただし “相手の同意があってこそ” をモットーとしてる (笑)。相手とのバランスで性癖は成り立つものだからさ。性癖というものに対する新たな捉え方、考え方、枠組み、といったものを今後は声を大にして言っていこうと (笑)。

なるほど。今この場で実際に声を大にして言ってくれたわけですね。

こういう場でしか中々言えないからさ (笑)。知ってる人の前で言ってたら、あいつ頭おかしくなったって思われちゃうし。こういうことは自分を知らない人達とか、初登場の媒体のところで言っておくっていうね。

逆に知り合いレベルじゃなくて、近い人との間でこういう話はされないんですか?

近い人とはそういう話しかしない (笑)。そういう話しかしないっていうのは大げさだけど、そういう話のできる人だから親しくできるんじゃないかな。

ある種の共感覚というか。

うん。今回ジャケットをやってくれた宇川 (直宏) 君とはそういう話はしないけど、アーカイブしてきたサブカルチャーで共通するものがあったりとか。必ずしもそういう話ができる人達が音楽も同じ趣味だとは限らないから、自分の中にも色んなチャンネルがあるというか。

少なからず共通言語がないと近い距離感の間柄にはなれないですよね。

うん。そうだね。ただ、サブカルチャーの情報って間違いがあるけど、性的な部分、性癖もそうだけど、そういったものには間違いがないんですよ。さっき言った “性癖に貴賎なし” ってことから外れるものに関しては別だけど。

ただ、行き着くところは射精だと思うんですが。

いや、射精にたどり着いちゃうとダメなんですよ。だってそれは男性的な考えでしょう。そこに射精っていう考えが入ってきてしまったら、ダンスミュージックで例えるなら非常に EDM 的な考えですよ。各曲に射精のポイントがあるような繋ぎをされたら、もう射精管理ですよ。カラッカラですよ(笑)。だからそこにいかない感じ。Ricardo Villalobos (リカルド・ヴィラロボス) の DJ や YMO でいうところの「LOOM」がそう (笑)。元々好みではないっていうのがあるんだけど、派手なブレイクは必要ない。それは今回のアルバムもそうなんだけど、派手なブレイクが無いから繰り返し聴くことができる。セックスじゃなくて、スキンシップを続けてる感じ。キャプテン・オブ・ザ・スキンシップ!今のは言いたかっただけです (笑)。

アルバムの制作中は本当にそんなことばっかり考えてたんですか?

いや (笑)、いやらしいことはもちろん考えてるんだけど、迷った時にどっちにいったらいやらしいだろうかとか、そのいやらしさは自分にとって心地良いいやらしさなのかとか、そういう判断基準で作ってたんだよね。だからいやらしいことを考えてたって言っても、常におちんちんが勃ってたわけじゃないです (笑)。実際半勃ちぐらいの感じで、ちょっと硬くなってきたっていうくらいのほうがいんだよね。ギンギンに勃ってたらイきたくなっちゃうからすぐ終わっちゃうでしょ (笑)。

それを維持しながら作ったと。

そう。さっきも言ったけど、判断基準なんだよね。どっちがより自分にとって官能的かっていう。俺の場合は女性ですけど、相手が自分をイかせるためにとっている行動ではないことがこっちに響いて、尚且つそれがずっと続くっていうのが、僕の考えた天国 (笑)。

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

それは相手の意図しない部分というか、自分が勝手に官能的に受け取っているような事でしょうか?

相手は意図してるけど、意図してないようにするっていう、そのよそよそしさっていうね。明らかに意図してる感じだったらお店行ってやりゃいいだけの話じゃないですか。こういうのが好みで、こういう性癖なんですって伝えればいいだけ。それが出来ないという根の深い病衣。そういうのを表現にしてお金にしてくしかないぞ、と。

アウトプットするしかないぞと。

でも同時にインプットでもあるんですけどね。

性にかぎらず、音楽的な部分において、インプットってどうされているんですか?毎週のようにしてる DJ はアウトプットかと思うんですが。

DJ という行為自体にアウトプットって意識があんまりないかな。恵まれたことに普段してること全てがインプットに繋が ってるというか、逆に言うとそれ以外のことを極力やらずに済むような生活環境とライフスタイルが整ってるからアウトプットばっかりだと感じる事もないかな。普通に音楽聴くのも調べるのも買うのも好きだし、常に何かしらに興味があるから。それと普段は、嫌いな人の嫌いな理由を考えたりしてる。

本当に嫌いだったら無視すると思うんですけど、嫌いな人の事を考えれるのって、逆にその人に対してある意味興味があるのかなって。

うん。俺けっこうオカマ的な考え方で、この人ダメだと思ったらシャットアウトしちゃうんだけど、なんかムカつくとか、なんか嫌いって思った場合はクリンチで入るようにしてるの。むこうも俺のことを嫌ってたとしても、それってある意味惹かれ合ってるってことだからさ。後に好きになるってことがなかったとしても、最初から拒絶しちゃったらそれで終わりだからね。それでもダメだったら仕方ないっていうか。むしろその人の本質が見えるし。それがきっかけで、第一印象悪かったんだけど、友達になれて、後に仲良くなったっていうのもあるからね。

実際にあるんですね。

あるあるある。こっちが誤解してたとか。あと、これはよく経験するんだけど、相手が俺に対して感じる異物感からくる拒絶。これまでに自分の経験したことがないものだから、それを恐怖に感じてていきなり拒絶されるっていうのには俺けっこう慣れてるし、ビビって拒絶してるなって人に対しては自分から寄ってく。そうするとムキになって拒絶されたりとかっていうのもあるから、冷静になるのを待ったりもするし。もしくは、嫌がってんのわかっててもわざとグイグイ寄ってくっていう (笑)。

今言われた異物感というのは卓球さんが影響を受けられた、ニューウェイブだったり、そういったものに根源があるのかと思ったんですが。

そうだね。でも当時は異物感だとは思ってなかったからね。今でこそ色々アーカイブできた中で、音楽に限って言えばニューウェイブって異物感だったって言えるけど、それは今だからじゃない?その頃ど真ん中にいたから、異物感っていう概念なんてないし、単純に新しいのが出てきたっていうふうにしか思わなかったんだよね。Palais Schaumburg (パレ・シャンブルグ) とか正にそうだったけど、初めて聴いた時に思ったのは、カタチの変わった荷物が坂道を転がってくっていう、そんなリズムの感じ。それって今口に出して言うなら異物感以外の何でもないんだけど、心地いい異物感だったんだよね。それって今回のアルバムのテーマでもあって、心地いい異物感とか、矛盾による整合性、煩悩以外をストイックに排除、つまりはストイックにやらしいことだけを考えるっていう。

なかなか出来ないことですよね。理性が働いちゃって。逆に煩悩を排除しようとすることが美学とされてるじゃないですか。

そうそう。だから、今言ったのは言い方が違うだけで全部同じことだと思うんだよね。心地よい異物感とかさ。矛盾だよね。異物感というのは気持ちいいものだとはみんな思ってないじゃない?だって異物なんだから。

癖になる人は癖になるっていうか。

そう。だからそれはスカトロでウンコ食べる人だよ (笑)。マイナスにしかなんないんだよ。でもそれも異物感ではあるけど、その異物感というものが心地いいものにもなり得るっていうところをこうもっと声を大にして言っていきたいっていうかさ。だからってなんでもかんでもオッケーにしようっていう意味で言ってるんじゃないんだけど、みんな異物感っていうものに対して怯えすぎなんじゃないかなって。

最近キ○ガイが減ったように感じるんですが、それと関係してくるのかなって思ったんですけど。

あー、それは、二面性だけでしょ。キ○ガイの反対は真面目な人って考えでしょ。違うんだって。真面目もいき過ぎるとキ○ガイになるし、キ○ガイもいき過ぎたら真面目になるから。それで言うと、俺結構真面目なキ○ガイだと思うもん。性癖とかもそうなんだけど、メビウスの輪だと思ってて、結局全部つながってるっていうね。突き詰めたと思ったら、まったく別のところにいっていたっていう。キ○ガイに関していうと、減ってはないと思う。むしろ増えてると思うんだけど、昔みたいにわかりやすいキ○ガイじゃなくなったから、余計怖いと思う。

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

なるほど。

この前宇川くんと、今日狂えてなかったって反省することあるよねって話してたんだよね。今日もっと狂えたのに、全然ダメだったって。そんな事言える仕事につけたことがすごい幸せっていうか。他の仕事じゃなかなかないでしょ、狂ってなかったって反省することって。

実際多いんですか?

狂ってなくて反省することでしょ?そんなのしょっちゅうでしょ。

逆に昔はどうでしたか?

狂うとかそういう概念ではなくて、当時感じてたのはノリきれなかったとかじゃないかな。もうちょっとあそこで狂えたとか、気を遣ってたなとか、あれ以上狂ってもお客さんが受け入れきれないだろうなとかってしょっちゅう考えるし。そんなことを日々考えてますよ。

自分に対してその行き過ぎる部分や常軌を逸した部分が求められているっていうのをわかった上でやられてるわけですよね。

もちろん。じゃなきゃ、替えがきいちゃうだろうし。ただ、よりエスカレートしたキ○ガイっていうのを期待されてるって勘違いしちゃうとまた別の方向にいっちゃうけど、別にそうではないからね。そういう期待をする人もいるけど、そんな人の意見聞いてもロクな目にあわない。だってそいつのほうが狂ってるんだもん (笑)。バカじゃないのって。あとね、浅いんだよ、そういうやつは。浅いっていうか、俺のことを想像してこうだろって言ってるようなヤツの想像力なんて大したことないじゃない。だって、こっちは想像力で食ってるんだからさ (笑)。

お前より俺の方が石野卓球のことをわかってるわって (笑)。

そうそうそう。お前の想像を押し付けるんじゃねーよって (笑)。卓球は狂ってるからウンコ食ってるだろって言われたとしても、ウンコなんて食わないし、むしろ食わないほうがいいんだよって (笑)。ていうか違うから、食うんじゃなくて、塗るんだって (笑)!

電気グルーヴで「塗糞祭」ていうツアーやってましたよね (笑)。それってよくある話なんじゃないですか。長いこと活動してたら、卓球さんってこうだろっていう見方はされちゃうわけじゃないですか。

だからもう「卓球は血も涙もねぇ」とか言われたら逆にすごく優しくしたり、混乱させてやるっていうね。でも混乱させるっていうのも自分のキャパシティの中で出来ないものだったらやれないけど、出来る範囲だったらオマエの知らない俺を見せてやる、混乱してみろ!って (笑)。

— 『ツイッター』とかで、全く知らない人から放たれたストレスが卓球さんにダイレクトに入ってくることも多いと思うんですけど、それに対するはけ口みたいなものはあるんですか?

それはね、『2ちゃんねる』とか匿名のやつは全部納得しちゃうんだよね。基本的に悪口が存在しなくなっちゃったっていうか。ブサイクって書かれてたとしても、確かにブサイクだよね、それで (笑)?って思っちゃうし。なんか問題あったかな?って。別に初めて言われることでもないし、ショックでもなければ驚きでもないっていうね。『ツイッター』とかで、何か言ってくるやつは一人づつ捕まえて…

野ざらしに?

そんな公開処刑みたいな感じでもないけど (笑)。昔はほっといても良かったんだけど、ほっとけないヤツとかいるんだよ。スキルもないくせに入ってくるんじゃないよって。

流石に『ツイッター』でクリンチで詰め寄っても仲良くなる人はいないですよね?

俺のことわかってる人はいるけど、そこから次のステップにいくっていうことはないよね。そんなことあったら気持ち悪いし。そもそもそんなツールだと思ってツイッターと接してない。

SNS って卓球さんにとってどういうツールなんですか?

宣伝と、わかってる人たちにこっちの戯言をお届けするためのツールというか。「おちんちん萎え場プリンス」とかさ、くだらないでしょ。でもくだらないのがいいのにね。

でも、冗談通じない人って増えてるじゃないですか。

ね。あとね、自分が面白いと思っている人。あとツッコミで入ってくるバカ。ツッコミとか俺要らないから。寒いなーって (笑)。こっちはずーっとボケてたいのにさ。人間最終的にはボケるんだからさ。

それ極論じゃないですか (笑)。

ボケの前借り (笑)。

先に精算しとくぞ、と (笑)。絶対そこまで考えてないですよね?

考えてない (笑)。子供の頃に見たバカボンのパパの頭の中を、この前ふと思い出したんだけど、バカボンのパパの頭の中は、霧がかかってて、遠くから汽笛が聞こえ、うっすらと船の影がみえるって (笑)。うわー、この頭のなか気持ちよさそうだなって。

『ele-king books (エレキングブックス)』 から出た『赤塚不二夫 実験マンガ集』の巻末で卓球さんはインタビューされてますよね。

「赤塚作品とは、アシッド・ハウスなのだ!」ってやつでしょ。赤塚漫画ってアシッド・ハウスっぽいもんね。エレクトロニカではないでしょ。

赤塚不二夫 実験マンガ集

赤塚不二夫 実験マンガ集

谷岡ヤスジなんかもアシッド・ハウス感ありますね。

谷岡ヤスジは、もっとガバっぽいっていうか、もっと激しい。Atari Teenage Riot (アタリ・ティーンエージ・ライオット)とか、そこらへんの感じかな。

最近もマンガは読まれますか?

もう全然読まなくなっちゃったね。読む体力が無くなっちゃった。ついていけないっていうか。活字も一緒で、全然読まなくなっちゃった。老眼だからさ。ローガン・ガルニエ。

ローラン・ガルニエですね。言いたいだけじゃないですか。

そう、言いたいだけだよ (笑)。そういうのばっかり考えてるから。おしっこしてる時によく浮かぶんだよね。

頭の中では、大体いつも船の汽笛が流れてます。

普段の生活で音楽とふざけた事を考える割合ってどのくらいですか?

一緒、一緒。ずっと歌ってるし。そういう中からダジャレが生まれるっていう。

自転車に乗りながら大声で歌ってらっしゃるっていうのを小耳に挟んだんですが。

ああ、それは昔ね。最近は自転車乗らなくなっちゃったし。基本的に音楽は常に流れてるからね。

頭の中でですか?

そうそう、ってそれだったらキ○ガイじゃねーかよ (笑)。頭の中では、大体いつも船の汽笛が流れてます。

それバカボンのパパじゃないですか。

そう (笑)。霧がかっててね。昔よくマンガ読んでたんだけど、もう本当に読む体力が無くなっちゃったんだよね。ずっと続けて読むっていうのが無理で。マンガを読む筋力っていうのもあるみたいで、飛ばし飛ばしになっちゃったりとかするんだよね。この前 青山ブックセンターに行って、まとめてマンガ買ってみたんだけど、便所に積みっぱなしになってる。もう最近は絵本とかそんなんばっかり読んでる。

画集みたいなものですか?

画集じゃないんだけど、なんだろうな、ディスクガイドみたいにカラーで絵がデカイやつ。だから絵本でもないんだけど。とりあえずカラーで絵がデカイやつ。基本的にトイレでしか読まないからね。

休みの日って何をしてるんですか?

毎日お休みに近いからね。休み、んー、おちんちんいじってるかな (笑)。

昔のインタビューでもそう言われてましたね (笑)。

そう。あと、やっぱり絵描いてる事が多いかな。最近は寺門ジモンを描いてて、この人すっげー描き甲斐あるなって (笑)。まずなにも見ずに描きはじめて、気づいたら5ページとか描いちゃってさ。寺門ジモンに対して別になんとも思ってなかったんだけどね。

新譜でエロトピアの表紙をジャケットに使ったというのもそうですけど、一般人にとっては大きな価値の無いものでも自分にはとっては宝っていう、そんなスカベンジャー的な思考は常にあるんですか?

結構ある。DJ にしてもかなり強くあって、毎年自分の誕生日に「地獄温泉」っていうイベントをリキッドルームでやってて、そこでは普段 DJ でかけない曲をかけるんだけど、それで踊ってるお客さんの姿を観るのがすごく好きなんだよね。それは別に嫌味とかそういうのじゃなくて。結局ゴミであったりとかゴミ同然のものが、ゴミすぎて輝きを増すっていうか。中途半端なゴミが一番のゴミだからさ。だからといって、ゴミの中ばかりを探してるわけじゃなくて、たまにゴミ箱も見てみるっていう。ある程度ちゃんとした身なりはしてるけど、昔ながらのゴミ箱あさりがやめられない、みたいな(笑)。

 

ついついゴミ箱に手がいっちゃうっていう。

そうそう (笑)。やっぱり、ゴミ箱あさり辞められない (笑)。レコード屋さんで50円のエサ箱の中に人にとっては1円の価値もないけど、自分にとってはものすごい価値があるものが隠れているのと一緒だよね。普通に店頭に並んでるやつは大体知ってたり、持ってたりとかするし。ただそのかわり、そこにあるのはほぼゴミだけどね (笑)。スカベンジャーも目利きじゃないと、ただのゴミ拾いになっちゃうからさ。手真っ黒になっちゃって (笑)。

スカベンジャーも楽じゃないですね。マンガや活字を読まなくなったと言われてましたけど、逆に最近よく触れているものって何がありますか?

最近までよくラジオ聞いてたんだけど、やっぱり似顔絵かな。

昔から絵は得意だったんですか?

すごい上手とかそういうわけじゃないけど、子供の頃によくマンガ読んでて、マンガ家になりたいなって思ってた時期もあったくらいだから、よく描いてはいたんですけど、プロの人に比べたらね。まずストーリーが描けないんで。なにより人の顔が好きですね。ツイッターに好きな M 男優の似顔絵描きましたってあげたら、メーカーからも反応があって「うちの子じゃないですか」って (笑)。やっぱインターネットの世界はすごいなと。M 男は嘘つかないっていう (笑)。

M 男代表として声を大にして。

そんな、俺は M 男代表ではないですよ。そんな、おこがましい、おこがましい。僕なんてファッション M 男ですよ (笑)。にわかM男 (笑)。

今回出た新譜と一緒にこんなのも聴いたらいいかもよ、っていう音楽はありますか?ファッションの媒体なので、音楽のことに疎い人もいるかと思いまして。

んー、別にないかな (笑)。人によって違うしね。その質問に無理やり答えを出すとすれば、昭和のエロテープかな。合うかどうかはあなた次第だけど。俺、昭和のエロカセットを集めてるんだよね。それと女王様雑誌。多分集めてた人が死んじゃって流れたんだと思うんだけど、最近まとめて買ったんだよね。コレは俺が買わなきゃダメだなって。ただの使命感で。あとは DVD に移行する前の SM ビデオも集めてて、いわゆる晩年の VHS のもの。まだマーケットが荒らされてないから高くても2000円くらいで買えちゃうんだよね。この頃っていいんだよ、ちゃんと設定もあってさ、2時間くらいの尺でストーリーも作ってあって、面白いんだよね。

集め始めたらキリが無いじゃないですか?

キリ無いし、ほんとゴミじゃん。VHS だから再生できないし。みんな捨てちゃうんだよね、こういうの。お店も扱ってないところばっかりだし。でも、逆に定価で売ってるようなお店もあってさ。昔の SM ビデオって高くて、120分で28000円とかだから (笑)。誰が買うんだよって話なんだけど、コレはヤバイっていうのがあると、やっぱ買っちゃうんだよね。VHS を2016年に定価で買ってるんだって (笑)。まだ空けてないシールドされてるやつをピ~って引っ張って開けるんだよ(笑)。

いやー、ゴミですね。

そう。ほんとにゴミ (笑)。もうエロとかそういう視点で観てないんだよね。すげー訛ってるなこの女王様とかさ、ほんとブスだなって (笑)。

研究対象に近いんですかね。

良く言えば研究だけど 、ただ単にショック受けたいだけ (笑)。ロットン・ドット・コム とかアチャヤーガムって感じ(笑)。

常に興味の対象を探してるっていうか、刺激を探してるって感じなんでしょうか。

そうだね。なんでそういうエロ、まぁエロでもヒドいものなんだけど、なんでコレが自分にとってアリかっていうと、合意の元という大義名分があるから (笑)。されてる側も好きでやられてるって思うと、ほっこりするっていうか。もうハートウォーミングなビデオとして観てる (笑)。ていうかさ、このインタビューって俺になんのメリットもないよね (笑)。

— (一同笑) じゃあ、新譜について…。

え、今更 (笑)。もう今言った感じ (笑)。今回はそんなに取材をばかばか受けてなくて、いつもだったらインタビュー何本か受けてたら売り文句みたいなものが出てくるんだけど、そういう感じもないし、今まで作った中で一番作為的じゃないアルバムだから、色んなところに馴染むと思うので、気が向いたら聴いてください、って感じですよ。聴かない人は何言ったって聴かないんだから (笑)。ジャケットでピンときたりとか、なんかこのインタビューを読んで (笑)、仮にピンときたとしたら、聴いてみてくださいなって。

このインタビュー読んでピンとくるって人は、潜在的になにかしら抱えてる人ですよね。

うん。そうだね。でもそれを認めたくない人もいるだろうけど、それはもうしょうがないね。やっぱりそういう人は聴かないよね (笑)。

<プロフィール>
石野卓球(いしの たっきゅう)。1989年にピエール瀧らと「電気グルーヴ」を結成。1995年には初のソロアルバム『DOVE LOVES DUB』をリリース、この頃から本格的に DJ としての活動もスタートする。1997年からはヨーロッパを中心とした海外での活動も積極的に行い始め、1998年にはベルリンで行われる世界最大のテクノ・フェスティバル「Love Parade」のFinal Gathering で150万人の前でプレイした。1999年から2013年までは1万人以上を集める日本最大の大型屋内レイヴ「WIRE」を主宰し、精力的に海外のDJ/アーティストを日本に紹介している。2012年7月には1999年より2011年までにWIRE COMPILATION に提供した楽曲を集めた Disc1 と未発表音源などをコンパイルした Disc2 との2枚組『WIRE TRAX 1999-2012』をリリース。2015年12月には、New Order のニュー・アルバム『Music Complete』からのシングルカット曲『Tutti Frutti』のリミックスを日本人で唯一担当した。そして2016年8月、前作から6年振りとなるオリジナルソロ作品『LUNATIQUE』をリリース。 現在、DJ/プロデューサー、リミキサーとして多彩な活動をおこなっている。

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photo by Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

タイトル LUNATIQUE
収録曲 1. Rapt In Fantasy
2. Fetish
3. Lunar Kick
4. Fana-Tekk
5. Crescent Moon
6. Die Boten Vom Mond
7. Amazones
8. Lunatique
9. Selene
10. Dawn
価格 ¥2,500
レーベル Ki/oon Music
HP www.takkyuishino.com/